地代

地代の相場を算出する路線価について徹底解説

地代相場・算出・路線価

その土地の価値を示す基準の一つとして、路線価というものがあります。
毎年発表されるたびに、ニュースや新聞で取り上げられることも多いので、何となく覚えがある人も多いでしょう。
今回は、路線価とは何かということと、路線価を使った地代の相場の算出方法について解説します。

路線価とは?

まず、路線価というのがどういうものかを解説していきます。
これは、簡単に言うと国が定めた道路に面する宅地の評価額のことなのですが、それだけだと分かりにくいでしょう。
もう少し詳しく解説していきます。

路線価というのは、実は2種類あります。
1つは相続税などを計算する際に使われるもので、相続税路線価といいます。
ただ路線価という場合は、多くの場合相続税路線価のことを指しています。

もう一つは、固定資産税や登録免許税、不動産取得税を計算する際に用いられるもので、固定資産税路線価といいます。
この2つの違いは、どのような点でしょうか?

まず、この2つの担当はそれぞれ異なります。
相続税路線価を定めるのは国税庁の担当で、毎年1月1日に公表されます。
その際の価格は、実際に土地を売買する際の実勢価格の0.8倍前後となっています。

それに対して、固定資産税路線価を定めるのは、市長など各市町村の長です。
ただし、東京都の23区だけは東京都の長である東京都知事が定めています。
その価格はだいたい実勢価格の0.7倍前後と、相続税路線価よりも低くなっています。

固定資産税路線価は、毎年ではなく3年ごとに見直されます。
基準となるのは1月1日時点での価格で、毎年3月末までに決定される固定資産税評価額の決定後に公表されています。

実際に、2つの路線価図を見比べてみましょう。
まずこちらが、相続税路線価図です。

参考:https://www.rosenka.nta.go.jp/

そしてこちらが、固定資産税路線価図です。

参考:https://www.chikamap.jp/chikamap-sp/MapPage

2つは同じ地区の路線価図ですが、比較してみるとその価格に差異があることが分かると思います。
2つの違いは、見比べてみれば一目瞭然となるでしょう。

しかし、中には路線価が空白となっている地域もあります。
その地域については、どのように評価するのでしょうか?

令和5年分の路線価について

国税庁は、今年の7月3日に、令和5年分(2023年分)の路線価を発表しました。
こちらの全国平均は、昨年を1.5%上回り、2年連続の上昇となっています。

詳しくいうと、都道府県庁がある都市の最高路線価は、29都市で上昇しました。
中でも、上昇率5%と高い上昇率を記録したのは、札幌市、さいたま市、福井市、奈良市、岡山市の5都市です。

一方、盛岡市、鳥取市、徳島市、熊本市の4都市は、下落率5%未満ながら、前年と比べて路線価を低下させています。

また、青森市や山形市、水戸市や前橋市といった都市は、前年度と変わらず横ばい状態となっています。

ちなみに、千葉市については、2022年分の最高路線価所在地が市街地再開発事業の施行区域で、路線価を定めていなかったため、こちらのデータには記載がありませんでした。

このように、全国各地で路線価の上昇、下落はあるものの、全体的に見てわかるのは、新型コロナウイルス感染拡大による経済の影響が緩和したことにより、地価も回復傾向が続いているということです。

評価倍率表

路線価が定められていない地域の土地を評価する際は、評価倍率表というものを参考にします。
これは、その地域の土地を評価する際に、固定資産税評価額を基準にしてその何倍として評価するかを示したものです。

例として、千葉県千葉市稲毛区の評価倍率表をご覧ください。

参考:https://www.rosenka.nta.go.jp/

この評価倍率表は一般の土地用のもので、このほかに大規模工場用地用と、ゴルフ場用地等用のものがあります。
それぞれどのような地域課によって、当てはまる倍率が異なります。

この基準となるのは、固定資産税評価額です。
固定資産税評価額が不明な場合は、都税事務所もしくは市・区役所および町村役場で確認することができます。

宅地として利用する場合は、この評価倍率表の「宅地」の欄を見てみます。
すると、「路線」と書かれている地域と、「1.1」と書かれている地域があります。
「路線」と書かれている地域については、路線価が決まっているのでそちらに従います。

「1.1」と書かれている地域では、一部または全域に路線価がない、という事を示しています。
その路線価がない地域の評価額を決める際は、固定資産税評価額に記載されている倍率をかけたものが、評価額として扱われます。

例えば、固定資産税評価額が坪当たり10万円の土地で、路線価が示されておらず、倍率表で1.1倍となっている土地の場合は、10万円×1.1=11万円がその土地の坪当たりの評価額ということになります。

田や畑、山林など宅地以外の用途で使われている土地の場合は、固定資産税評価額もかなり低くなっています。
そういった土地の評価額については、20倍や50倍など大きな倍率が付けられている事が多いため、戸惑わないよう気を付けましょう。

この評価倍率表は、地域によって大きく異なります。
例えば、東京都の場合はそもそも一般の土地用の評価倍率表がなく、都区内全域に路線価があります。

こうした路線価や評価額というのは、その土地を貸し出す際の賃料となる地代を決定する際には、大いに参考とされるものです。
路線価から地代を出すには、どのようにするのでしょうか?

路線価の補正について

路線価はあくまで、標準的な土地を想定した指標です。
本当の評価額を計算するためには、土地の使い勝手によって補正が必要です。

補正をかけることのできる特例には、主に以下のような種類があります。

・奥行価格補正
・不整形地補正
・間口狭小補正
・奥行長大補正
・特別警戒区域補正

奥行価格補正は、標準的な土地と比べたときに、奥行きが長かったり、短かったりする場合にかかる補正で、不整形地補正は、土地の形状が歪な場合に、歪な部分の割合によって、土地の評価額が低下するというものです。

また、間口狭小補正は、道路と接している間口が狭い場合にかかる補正で、奥行長大補正は、間口の広さに対し、奥行きが極端に長い場合の補正です。
奥行長大補正は、奥行価格補正と少し似ていますが、こちらは間口と奥行きの比率を指しているというところがポイントです。

ちなみに、その土地が土砂災害特別警戒区域に該当する場合は、特別警戒区域補正がかかります。

土砂災害特別警戒区域とは、土砂災害防止法によって定められている、土砂災害の危険があるエリアのことで、イエローゾーンとも呼ばれます。
こちらは、土地全体の面積のうち、何割がこちらの区域にあるのかによって、補正が変わります。

地代を決める際は?

それでは、路線価から地代を決めるためにはどうするのか、その方法を解説します。
まず、路線価から地代を決める際は、ある程度の相場があります。
地代というのは、言ってしまえば自分で自由に決められるものなので、今回解説するのはその相場について、ということになります。

路線価を基準とした地代の相場としては、その路線価からまず更地価格を計算します。
この更地価格は、路線価の0.8倍が目安とされています。
地代の相場は、更地価格の1.5%から3%となっています。

例えば、路線価が5万円の土地であれば、その更地価格は4万円÷0.8=5万円となります。
そうすると地代は、5万円×1.5%~3%=750円~1500円となります。

路線価が1平方メートル当たりの価格なので、この値はその分の地代です。
借地の広さが100平方メートルの場合は、地代もこの借地料に100をかけたものとなるので、7.5万円から15万円ということになります。

地代の相場に幅があるのは、地域によってその割合に違いがあるからです。
その土地の相場がどのくらいとなるかを調べるには、その土地の近隣にある借地を見つけ、その土地の地代が路線価から見た更地価格の何%となっているのかを調べてみましょう。
例えば2%となっている場合、更地価格に2%をかけたものがその地域の地代の相場だという事になります。

ただし、参考にするのが1か所だけだとその土地だけ極端に高い、もしくは安いという可能性もあるので、必ず複数の借地の地価を調べてみるようにしましょう。

路線価以外の地代の決め方

路線価以外で地代の相場を算出する方法としては、固定資産税や都市計画税、もしくは公示価格、基準地価を使う方法があります。

土地の所有者である地主さんには、毎年固定資産税や都市計画税が課税されます。
そのため、借地契約を結ぶ際には、少なくとも固定資産税や都市計画税よりも高額な地代を設定しなければ、地主さんにはメリットがありません。

固定資産税や都市計画税を基準に地代を算出する場合は、通常住宅地の場合にはこれらの税額の3~5倍程度、商業地の場合には5~8倍程度の金額として算出します。

また、公示価格は、全国の標準地に定められている土地価格で、国土交通省が土地の調査を行って決定しています。
一方、基準地価は、都道府県内の基準値に定められている価額で、各都道府県が毎年土地の鑑定評価をして決定しています。

ただし、全国のどの土地にも公示価格、基準地価があるわけではなく、基準や標準とされる地点にしか設定されていません。
そのため、公示価格や基準地価をもとに地代を算出する場合は、近隣に標準地があることが必須条件となります。

以下の計算式を用いて地代の相場を割り出します。

・公示価格もしくは基準地価×土地面積×1/5~3%

例えば、1㎡あたり50万円の公示価格が設定されている標準地付近の50㎡の土地を賃貸する場合は、50万円×50㎡×2%(平均値)で、年間50万円が相場の地代となります。

路線価が難しいと感じやすい理由

路線価を用いて、地代を決定することは可能ですが、そもそも路線価自体に苦手意識を持っているという方は多いかと思います。
その理由としては、まず前述したように、算出方法や関連用語が専門的であり、とっつきにくいということが挙げられます。

路線価を用いた土地の評価は、不動産鑑定士が用いる算出方法や、国税庁が公示している財産評価基本通達といった規定に基づいて行わなければいけません。

財産評価基本通達では、土地や建物の評価方法や、土地の形状、周辺環境などによって異なる評価額の算出方法が定められていて、聞き慣れない専門用語も多用されるため、把握するのは容易ではありません。

また、路線価は土地の区分も細かく、自身の所有している土地が度の区分に当てはまるのか、補正や確認をするのが難しいです。

例えば、宅地の評価額を路線価によって求める場合、まず自身の宅地がどの土地区分なのかを判定する必要があります。
一口に宅地と言っても、自用地や借地、広大地、地積規模の大きな宅地など、さまざまな種類に分けられます。

さらに、ここから細かい分類まで特定していかなければ、路線価を活用することはできません。

つまり、十分な知識を持ち、じっくりと時間をかけなければ、路線価を取り扱うのは難しく、そこから地代を決定するのも困難になるということです。

まとめ

路線価と一口に言っても、実際には相続税路線価と、固定資産税路線価の2つがあります。
この2つを比較した場合、路線価には違いがあるのでその差額に気を付けましょう。
また、時折路線価がない地域もあります。
そのような地域は、固定資産税評価額を基準にして評価倍率表に示された倍率をかけて、その評価額を計算しましょう。
地代を決定する際は、路線価をそのまま使うのではなくそれを基準とした更地価格から計算するので、間違えないようにしましょう。


その他、地代の相場や算出方法に関する主な記事はこちら…

『東京の地代相場を知るためには“固定資産評価額”を知ろう!』

『地代の相場を算出する2つの方法。公租公課と路線価について』

『地代にも関連する公租公課倍率法の解説』

『地代の算出方法と土地の利用方法によって異なる相場』

 

カテゴリーで探す

弊社代表著書

弊社代表・中川祐治執筆書籍 「底地・借地で困った時に最初に読む本」 好評発売中です!

底地・借地で困った時に最初に読む本の表紙

全国の有名書店や
Amazonで絶賛発売中!

底地・借地で困った時に最初に読む本
多くの反響をいただいております! amazon売れ筋ランキング3冠獲得(2020年12月20日現在)

各種資料ダウンロード
していただけます

  • 金銭消費貸借契約書
  • 土地交換契約書(等価交換)
  • 土地交換契約書(交換差金あり)
  • 解約合意書(借地)
  • 建替え承諾願い書、建替え承諾書
  • 私道の相互利用に関する合意書
トップへ