土地を貸す対価となる地代の算定方法の一つに、公租公課倍率法というものがあります。
この方法は、具体的にどういったものでしょうか?
また、その方法で決定した地代は、果たして正当なものなのでしょうか?

どのような方法なのか?

まず、この公租公課倍率法という手法は、具体的にどのような方法なのかを解説したいと思います。
その前に、公租公課というのが何のことなのか聞き覚えがない人も多いと思うので、まずはその点から解説していこうと思います。

公租公課というのは、土地にかかる税金である固定資産税と、都市計画税を合わせたものです。
この税率は地域によって異なるのですが、2つの合計はおおよそ2%弱となります。

不動産に対する税額は、不動産の評価額にこの税率をかけた金額となります。
例えば、不動産の評価額が1億円だった場合、固定資産税と都市計画税の合計でだいたい200万円弱の税金を毎年支払うこととなります。
公租公課というのは、この200万円弱の税金のことです。

公租公課倍率法というのは、この公租公課に対して適正な倍率をかけたものが地代となる、というもので、計算しやすいため地代を簡易的に算出する際によく使われています。
ただし地代なので月額で算出しようとした場合は、公租公課の12分の1が1月当たりの金額となります。

適正な倍率というのは、この場合どのくらいとなるのでしょうか?
これまでこの倍率については、裁判で何度か判決が出されています。
時代によって多少の変化があるのですが、おおよそ公租公課の2倍から3倍が適切とされていて、特に商業地では3倍が適切という結論が出されています。

ただし、この地代を争った裁判の記録というのが、昭和47年から昭和55年にかけてのものとなっているため、現在の状況とはそぐわないかもしれません。
時代の流れに応じて、その倍率には変化があるのでしょうか?

倍率の変化

現在の公租公課に対してかけられている倍率がどのくらいかというと、調査データによれば住宅関係の地域の地代が4.3倍前後、商業関係の地域の地代が4倍前後となっています。
また、平成に入ってから東京簡易裁判所で調停が成立した分については、住宅関係の地域であれば3.1倍、商業関係の地域の場合は2.4倍というデータがあります。

実際のところ、その倍率は3倍というのが最低水準とされる向きが強く、それ以上であるのが当たり前といえます。
なぜなら、小規模住宅地についてはそもそも固定資産税が減額されているため、商業地等と比較して税金は低くなるのでその分倍率は高くなるのです。

時代に伴うその倍率の変化を見ていくと、昭和40年代には2倍から3倍が適切とされていて、その中でも住宅地の場合は平均的に低めとなり、商業地の場合は平均的に高めとされていました。

その後、バブル期を迎えて地価は急激に上昇しましたが、地代に関しての上昇率は低めに留まっていて、この時点で土地の価格と地代との間にあった相関関係が失われた、という見方が一般的です。

その後は、平成6年に固定資産税の不動産評価額が引き上げられ、税額が漸増されたことに伴い、地価が下落していき固定資産税は増額されるという現象が生じたことで、継続地代と税金との間にあった関係はますます乖離していったのです。

そこから、平成9年以降に固定資産税の増額に対して、地価の下落率を反映させるという政策が施行されたことで、継続地代との間にあった相関関係については、復活してきました。

土地の価格の変化や、固定資産税の税額の変化に伴い、公租公課に対してかけられる倍率についても変化がみられています。
ただし、土地の価格が安い場合は、倍率が高くなるという傾向もあるので、絶対的に正しいい倍率というのは存在しないということを覚えておきましょう。

公租公課倍率法の活用

この手法の、実際の活用方法について紹介していきます。
公租公課倍率法を用いて地代の相場を知ることができるのですが、その倍率は2倍から3倍が必ずしも正解という訳ではありません。
実際に活用されるシチュエーションについて、解説していきます。

地代の適正な価格について、正しく知る方法としては不動産鑑定をする必要があります。
継続賃料を求める方法としては、スライド法、賃貸事例比較法、利回り法、差額配分法の4つを用いるのが一般的です。
この4つの方法は、不動産鑑定評価基準に主な方法として記載されているものです。

しかし、これらの方法は調査や算出に時間がかかります。
そんな時に、簡単な地代水準を判定するために、この手法が用いられるのです。
このときの使い方としては、周囲の地代との比較です。

例えば、近隣の土地の地代と自分の土地の地代を比較する場合、広さや土地の形状、土地の種類などが同一とは限らないので、単純に比較するのは難しいのです。
しかし、例えばすぐ近くの土地の地代に対しての公租公課の倍率を調べた時、自分の土地の地代と大幅に乖離していた場合、どちらかが適正な地代といえないということがわかります。

近隣の土地の地代について、数ヶ所の倍率を算出した結果、だいたい6倍前後となっているとします。
しかし、自分の土地の場合は同様に計算してその倍率が4倍でしかなかったとしたら、地代を値上げする根拠となるでしょう。

どの程度の地代が最適となるのかを算出するには、不動産鑑定を依頼しましょう。
不動産鑑定では、上記の4つの方法それぞれで価格を算出して、最終的な評価を決定します。
ただし、鑑定を依頼すると当然ながらコストがかかります。

もしも同程度なら、地代を見直す必要はないと考えられるので、地代の適正価格を見直すために不動産鑑定を依頼する必要はなくなります。
そうすれば、鑑定費用の節約になります。

時折、この手法のことを聞きかじって、自分の借りている地代の倍率が3倍を超えているため、不当だと思い込む人がいます。
しかし、この倍率というのは絶対的なものではなく、あくまで最低限の倍率を示しているだけなので、それ以下であれば廉価だと判断される基準ではあるものの、倍率が高いから不当とは言えないのです。

実際に裁判となった際に、地代の相場について公租公課倍率法を用いることが多いのですが、その際も周囲の土地の地代における公租公課倍率を参考として、そこから大きく逸脱していなければ不当とはみなされません。

特に住宅が建てられている土地の場合、固定資産税は土地の評価額を6分の1として算出されるため、必然的に倍率は高くなります。
公租公課倍率法は、確かに地代の相場について簡単に計算できる方法といえるのですが、それでも絶対的な基準とはいえず、様々な理由で近隣の土地であっても倍率が異なることもあるので注意しましょう。

特に、都市部と地方ではその倍率が大きく異なることとなります。
この手法を用いて地代を決める場合、地方のことなのに都会での公租公課倍率を基準に考えないようにしてください。

まとめ

固定資産税と都市計画税から地代を決定する公租公課倍率法は、地代を決定する基準の1つです。
これは、固定資産税と都市計画税を基にして適正な地代を算出するというものですが、その際の倍率は様々な要因から異なってきます。
その時の倍率としては、3倍程度が適正といわれることもありますが、その倍率は絶対ではないのでそればかりを信じないようにしましょう。
また、目安ではなく正確な地代を算出したい場合は、不動産鑑定を依頼しましょう。


その他、公租公課に関する記事はこちら…

『地代の相場を算出する2つの方法。公租公課と路線価について』

 

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