相続

山林の相続におけるメリットやデメリット、手続きについて

“不動産の相続”と聞くと、宅地をイメージされる方も多いかと思います。

ただ、不動産にはさまざまな種類があり、宅地以外の特殊な土地を受け継ぐことになるケースも決して珍しくはありません。

ここからは、“山林”の相続におけるメリットやデメリット、必要手続きについて解説したいと思います。

山林の概要

法律上、山林は“耕作の方法によらないで竹木の生育する土地”と定義されています。

わかりやすく言うと、耕したり肥料をやったりといったように、植え育てる作業をしていない状態で、なおかつ竹や樹木が生育する土地であれば、地形や人工林、自然林の区別なく、山林という扱いになるということです。

地方での不動産投資では、宅地ではなく山林を受け継ぐことになることも度々あります。

畑や原野との違い

山林と似た地目として、畑や原野が挙げられます。

畑とは、農耕地で用水を利用せず耕作する土地のことをいいます。

例えば木が生い茂っている果樹園などは、一見山林のように見えます。

しかしこちらは耕作目的であるため、山林ではなく畑という扱いになります。

また原野については、耕作の方法によらず雑草や灌木類の生育する土地を指します。

山林と同じく、耕作目的の土地ではありません。

ただし、その土地に生育している植物の種類が異なります。

山林には、人の背丈を超えるような木もしくは竹が生育しています。

一方原野は、人の背丈程度で根本付近から枝分かれしているような植物が生えています。

どの地目に当てはまるのかについては、その土地の登記事項証明書で確認できます。

固定資産税課税明細書にも記載されています。

それでも、上記のような方法で見極められるということは把握しておくべきです。

山林を受け継ぐメリットは?

では、山林を相続することには、一体どんなメリットがあるのかを見てみましょう。

主に挙げられるのは、以下のようなメリットです。

・貸し出せる
・林業を展開できる
・地域貢献に役立つ
・太陽光発電ができる

貸し出せる

需要の有無や土地面積にもよりますが、被相続人から受け継いだ山林は、林業を行う業者などに貸し出すことが可能です。

また、中には積極的に山林を活用しようとする自治体もあるため、一度貸し出しや売却の相談をしてみる価値はあるでしょう。

林業を展開できる

被相続人が林業を営んでいたという場合、その立場をそのまま受け継ぐことも可能です。

もちろん、相続人の方自身にノウハウがなくても、人を雇用すれば十分収入源になり得ます。

地域貢献に役立つ

学校などでは、キャンプやハイキングなどのレクリエーションが行われる場合があります。

そのような行事をするにあたって、山林は非常に適しているため、十分な広さがある場合は提供することで、地域貢献に繋がります。

太陽光発電ができる

太陽光発電は、実施する場所の敷地が広ければ広いほど、多くの機材を設置できますし、収入も多くなります。

もし、貸し出し先が見つからないのであれば、このような活用方法も検討しましょう。

山林を受け継ぐデメリットは?

山林は宅地にはないあらゆるメリットを持っていますが、当然以下のようにデメリットもあります。

・売却が難しい
・管理が大変

売却が難しい

宅地と比較すると、山林はなかなか買い手が見つからないことが多いです。

また、たとえ広大な土地面積を有していても、それほど高額での売却は期待できないため、買い手が見つかったとしても、わずかな売却益しか手に入らないことが多いです。

管理が大変

処理方法に関わらず、相続した山林は一旦相続人の方が管理することになります。

また、長期間買い手や貸し出し先が見つからない場合、その間管理をし続けることになりますが、この管理は決して楽なものではありません。

山林の草木は想像以上のスピードで生い茂っていくため、自宅から離れた場所で相続した場合などは、より管理が大変になります。

災害の危険性がある

山林は適切に管理せずに放置すると、瞬く間に荒れ果てていきます。

また宅地であれば建物の朽廃が起こりますが、山林はさらに放置のリスクが高いです。

それは災害の危険性があるからです。

山林を管理しなかった場合、地盤を支えて保水する力が低下します。

そうすると、結果的に土砂崩れや豪雨被害などの災害に結び付く可能性があります。

またこのような災害が起こった場合、所有者は管理者責任を問われることもあります。

山林の相続に必要な手続き

山林の相続が決まった場合は、以下の3つの手続きを行わなければいけません。

・所有者の届出
・名義変更
・森林組合への報告

所有者の届出

新しく山林を取得した方は、面積に関わらず市町村長に届出をすることが義務付けられています。

届出の期限は、所有者になった日(相続した日)から90日以内であり、仮に遺産分割が完了していない場合でも、90日以内に法定相続人の“共有物”として届出をしなければいけません。

もし、届出がなかったら、10万円以下の罰金が科される可能性もあるため、注意しましょう。

名義変更

山林を相続した方は、法務局で名義変更の手続きをする必要があります。

これを実施することで、売買や貸与がスムーズに行えるようになりますし、将来子どもに相続する際も負担をかける心配がありません。

また、名義変更をすることで、相続人の方は自己の山林における所有権を容易に証明できます。

逆に、名義変更をしていない場合、もし企業やNPOなどが山林を活用したいと考えていても、所有者が誰なのかすぐにわからないため、売買のチャンスを失ってしまうおそれがあります。

森林組合への報告

“森林組合”とは、地元の森林所有者の共同組合のことをいい、施業委託や補助金、融資や維持管理など、さまざまな業務を担っています。

山林を受け継いだ方は、その旨を森林組合に報告し、売却や管理の希望を出しておきましょう。

こうすることで、組合が買い手あるいは貸し出し先を見つけてきてくれるかもしれません。

もっと言えば、森林組合に相続人自らが加入するのも良いでしょう。

森林組合に加入することで、以下のようなメリットが生まれます。

活用法について相談できる

管理や維持の相続ができる

定期的な境界管理ができる など

相続した山林への建築について

山林を相続した方の中には、その土地に建物を建築しようと考える方もいるでしょう。

しかし、その土地の状態によっては問題が生じます。

例えば地目が山林であっても、現況が農地として利用されているケースはよくあります。

このような土地は農地法によって守られている可能性が高いです。

そのため建物を建築するには、農地転用届や農地転用許可の申請が必要になります。

また山林が保安林に該当する場合、原則勝手に木を伐採してはいけません。

保安林は、農林水産大臣が森林法で指定した土地です。

こちらは土砂の崩壊や風害を防ぐために機能しています。

このことから、建築のために木を伐採すると原状回復を命じられることもあります。

ちなみに地目が山林の土地は市街化調整区域に指定されている場合があります。

こちらは原則建物を建てることはできません。

ただし例外として、農林漁業を営む者の居住用建築物であれば建築できます。

山林を相続したくない場合はどうする?

山林の相続にはメリットもありますが、見過ごせないデメリットもあります。

では相続したくない場合はどのように対処すれば良いのでしょうか?

具体的な案としては主に以下が挙げられます。

・他の相続人に相続してもらう
・相続放棄をする
・寄付する

他の相続人に相続してもらう

山林を相続したくない場合、複数相続人がいればそちらに相続してもらいましょう。

ただし他の相続人も相続したくないというケースも当然あります。

このような場合は負の遺産として扱い、他の財産と取得内容を調整して交渉を行います。

また他の相続人に対し、山林のメリットを伝えるというのも一つの手です。

特に土地活用を検討している相続人であれば、魅力を感じてくれることがあります。

相続放棄をする

山林を相続したくない場合の選択肢としては、相続放棄も挙げられます。

相続放棄を行う場合、他の相続人の同意を得る必要はありません。

そのため、大きなトラブルにつながる心配は少ないです。

ただし、相続放棄は被相続人における相続財産の一切を受け取らないものです。

山林のみ相続放棄することはできません。

つまり莫大な預貯金などがあってもその相続は拒否しなければいけないということです。

このことから、放棄するかどうかは慎重に決断しなければいけません。

例えば山林を含むプラスの財産より、マイナスの財産の方が金額は大きいとします。

このような場合は、山林を含むすべてのプラス財産の相続放棄を検討すべきです。

なぜなら相続財産にはマイナスの財産も含まれるからです。

上記の場合、プラスの財産をすべて現金化してもマイナスの財産はなくなりません。

つまり相続人が被相続人の借金を返済していなければいけないということです。

ちなみに相続放棄は、原則自身が相続人になったと知った日から3ヶ月以内に行います。

よって考えられる時間はそれほど多くありません。

寄付する

山林を相続するのが嫌なのであれば、受け取った後寄付するという選択肢もあります。

山林は地域貢献に役立つという話をしましたが、こちらは寄付をしても同じことです。

市民のレクリエーションの場として活用しやすい山林などは寄付しやすくなります。

ただしすべての山林が寄付できるわけではありません。

そのため、一度役所で相談することをおすすめします。

このとき山林情報がわかるように、写真などを持って行くと話がスムーズです。

公図や不動産全部事項証明書の持参も必須です。

ちなみに山林の寄付先は自治体だけではありません。

民間会社などの法人や個人でも、山林を受け取ってくれる方は存在します。

なお山林を寄付する場合でも、事前に法務局で名義変更を行わなければいけません。

まとめ

ここまで、山林の相続に関するさまざまなことを解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?

このような特殊な土地に関する知識は、一朝一夕で身に付くものではありませんし、普段から相続時のシミュレーションをしておかないと、滞りなく進めていくことができません。

よって、被相続人が土地を所有している場合は、それが宅地以外の土地でないかどうか確認しておきましょう。

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