解約手付に関するさまざまな用語について解説します
解約手付は、手付の一種であり、手付金の放棄または手付金の倍額の償還により、任意に契約を解除することができる手付です。
また、こちらには細かいルールがいくつも定められていて、中には少し難しい用語で説明されているものもあります。
今回は、解約手付に関するさまざまな用語の意味について解説します。
債務不履行
解約手付におけるルールには、「一度締結した契約を、債務不履行などの理由の如何にかかわらず、後で解除することができる」というものがあります。
ここで触れられている債務不履行とは、債権・債務関係において、債務が履行されない状態のことをいいます。
例えば、不動産の売買契約において、代金を支払ったにもかかわらず、売主が物件を引き渡さない場合は、売主が引渡義務を怠っているため、債務不履行にあたります。
また、このような債務不履行については、民法により、債権者が債務者に対して損害賠償を請求することができるとされています。
しかし、解約手付においては、手付金を放棄するか、手付金の倍額を償還することが契約解除の理由、つまり一般的な売買契約における債務不履行などに該当するため、上記の引渡義務の不履行などがなくても、任意で契約を解除することができます。
担保責任
先ほども触れたように、解約手付には、法律上の解除条件が発生しなくても、手付金の放棄や倍額償還により、契約解除を行うことができるというルールです。
また、ここでいう法律上の解除条件には、債務不履行のほか、売主の担保責任が挙げられます。
担保責任とは、特定物の売買において、目的物が契約不適合であった場合に、売主が負わなければいけない責任のことをいいます。
契約不適合責任とも呼ばれます。
具体的には、売買契約や請負契約の履行において、引き渡された売買の目的物の種類、品質、数量に関し、契約の内容に適合しない場合に、売主もしくは請負人が買主に対して負うことになる責任です。
買主は、担保責任を負う売主に対し、履行の追完請求(補修や代替物等の引渡請求)、代金、報酬の減額請求、損害賠償請求または契約解除権の行使をすることができます。
ただし、買主がこれらの請求をするには、原則として、不適合を知ったときから1年以内に、不適合である旨を通知しなければいけません。
民法改正前は、売買の目的物に隠れた瑕疵があったときの責任等について、特別な規定が定められていましたが、改正によってこちらの規定が削除され、隠れた瑕疵があった場合を含めて、目的物が契約に適合しない場合の規定に統合・整理されました。
損害賠償
解約手付には、「売買契約成立時、買主が売主に手付を交付し、買主は手付を放棄すればいつでも契約を解除することができ、手付金相当額以外の損害賠償を支払わなくても良い」というルールがあり、こちらは手付流しと呼ばれます。
また、ここでいう損害賠償とは、違法行為によって損害が生じた場合に、その損害を填補することをいいます。
債務不履行や不法行為などの違法な事実があり、その事実と損害の発生とに因果関係があれば、損害賠償義務を負うことになります。
また、損害賠償は原則として現金で行われ、損害を受けた者に過失がある場合は減額(過失相殺)され、損害と同時に利益がある場合は賠償額から控除(損益相殺)されます。
解約手付においては、買主が前もって支払った手付金を放棄することが契約解除条件の一つとなっていて、こちらは買主の違法行為により、売主に損害を与えるものではないため、当然手付金相当額以上の損害賠償は発生しません。
履行の着手
解約手付では、手付流しもしくは手付倍返し(売主による手付金の倍額償還)による契約解除がいつまでも行えるわけではありません。
具体的には、契約の相手方が履行の着手を行った時点からは、このような契約解除ができないと定められています。
また、ここでいう履行の着手は、客観的に外部から認識できるような形で、契約の履行行為の一部をなしたこと、または履行の提供をするために欠くことのできない前提行為をしたことと解釈されています。
具体的には、単に不動産などを引き渡すための準備や、代金を支払うための準備をしただけでは、履行の着手には該当しないと考えられています。
実際に履行の着手があったと判断された事例には、不動産などの他人物売買において、売主が他人の不動産を取得し、登記を得たこと、買主が代金を用意し、売主に不動産の引き渡しをするように催告したことなどが挙げられます。
ちなみに、解約手付は、自身が履行の着手をしたものの、相手方が履行の着手をしていない状態であれば、自身から手付流し、手付倍返しによる契約解除を行うことは可能です。
まとめ
ここまで、解約手付に関する様々な用語の意味について解説しましたが、いかがでしたでしょうか?
解約手付というものの意味を理解するためには、上記のような用語の意味を押さえておかなければいけません。
そうしなければ、自身が不動産売買の当事者になったとき、知らず知らずのうちに契約に違反していたり、損失を被っていたりする可能性もあります。