不動産売買契約に関する法律用語について解説します
不動産売買契約は、売主が買主に不動産の所有権、借地権などの移転を約束し、買主がその代金を支払うことを約束する契約です。
また、こちらにはさまざまな法律が関わっていて、実際契約を結ぶ前に身に付けておくべき知識も多くあります。
今回は、不動産売買契約に関する法律用語について解説します。
悪意
悪意とは、私法上の概念であり、契約などの法律的な行為の際に、一定の事実を知っていることを指す言葉です。
民法などの規定により、事実を知っているかどうかによって行為の効果に違いが生じることがあり、一般に悪意の場合には不利になります。
例えば、AがBに不動産を虚偽で売却した上で登記したとき、AB間の取引は無効になりますが、その登記済みの不動産をCが買い取り、CがAB間の取引が虚偽であることを知っていた場合、ABはCに対して当該不動産の所有権移転が無効であると主張できます。
一方、Cが知らなかった場合(善意の場合)、こちらの主張はできません。
違約金
通常、不動産売買は契約書に基づいて行われますが、売主または買主のいずれかが債務を履行することができなかった場合に、契約違反をした側が相手に対して支払う旨を約束した金銭を違約金といいます。
不動産売買契約が締結された後でも、一定期間内であれば手付金の放棄によって契約を解除できます。
しかし、売主が契約の履行を開始すると契約解除ができなくなり、売主側からすると、新規に住宅を建築した際のコストが発生するなどの理由から、違約金が規定されています。
ちなみに、違約金の金額については、損害賠償額の予定と合わせても、売買代金の2割を超えてはならないと宅地建物取引業法で定められています。
既存不適格建築物
既存不適格建築物とは、建築したときには建築基準法などの法律に適合していたものが、その後法改正があったり、都市計画法が変更されたりしたことにより、現行の規定に適合しなくなった建物のことをいいます。
違法建築ではないため、そのまま使用している限りは、法的に問題ありません。
また、増改築や大規模修繕などを伴わないリフォームは可能です。
しかし、建て替えや建築確認申請の必要なリフォームでは、現行の基準に合わせる必要が出てきます。
つまり、買主がこのような不動産を購入した場合、購入後の建て替えや増改築における自由度が低くなるということです。
取引態様
取引態様とは、不動産会社などの宅地建物取引業者が、不動産売買契約においてどのような立場で関わるのかを示したものをいいます。
売買では、売主、代理、媒介・仲介の3つがあり、売主は不動産会社自らが所有する物件や建築した物件を直接販売すること、代理は不動産会社が売主からの委託を受け、販売や契約業務を行うこと、媒介・仲介は不動産会社が売主と買主の間に入り、取引の仲立ちを行うことを意味しています。
ちなみに、宅地建物取引業者不動産広告を行うときには、こちらの取引態様を必ず表示することが法律で定められています。
債務不履行
債務不履行とは、債権・債務関係において、債務が履行されない状況のことをいいます。
例えば、不動産売買契約において、代金を支払ったにもかかわらず、売主が物件を引き渡さないとき、売主が引き渡し義務を怠っているため、債務不履行に該当します。
このような債務不履行に対しては、法律により、債権者が債務者に対して損害賠償を請求することができるとされています。
ただし、債務不履行を理由とする損害賠償を請求するには、以下の条件を満たす必要があります。
・債務者が債務を履行しないこと(履行不能、履行遅滞、不完全履行)
・債務者に故意または過失があること
・債務不履行を正当化するような法律上の理由が存在しないこと
抜き行為
不動産売買においてある依頼者(売主、買主など)が、ある宅地建物取引業者(主に不動産会社)との間で媒介契約または代理契約を締結しているにもかかわらず、他の宅地建物取引業者がその依頼者を誘引し、媒介契約または代理契約を締結することを抜き行為といいます。
依頼者側から見た場合、先行する宅地建物取引業者と後行する宅地建物取引業者との間で、二重に媒介契約または代理契約を締結することになることもあれば、先行の宅地建物取引業者との契約を解除し、後行する宅地建物取引業者との間でのみ契約を交わすこともあります。
なお、依頼者と先行する宅地建物取引業者との間で締結されていた媒介契約が専任媒介契約、専属専任媒介契約である場合、依頼者は当該媒介契約に従い、違約金を支払うことになる可能性があるため、注意が必要です。
まとめ
ここまで、不動産売買契約に関する法律用語をいくつか解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?
不動産売買契約を結ぶにあたって、売主または買主が、関連するすべての法律を理解するのは困難です。
ただし、触れる可能性のある法律やルールなどに関しては、具体的にどのようなものがあるのかをピックアップし、大まかな意味だけでも把握しておくことで、不動産売買のトラブルを減らすことができます。