不動産相続でトラブルが起こりやすい理由と事例について
不動産相続において、始まりから終わりまで一切トラブルなく終わるというケースは、決して多くありません。
ほとんどの相続人は、何かしらのトラブルに遭遇しています。
では、なぜ不動産相続はこれほど揉めやすいのでしょうか?
今回は、その理由と併せて、その他の不動産相続のトラブル事例も見ていきたいと思います。
不動産相続でトラブルが起こりやすい理由3選
相続財産にはさまざまな種類がありますが、中でも不動産はトラブルの引き金になりやすい財産と言われています。
その理由としては、主に以下のことが挙げられます。
・そのまま分割できないから
・処分の方法が多いから
・評価の方法が多いから
そのまま分割できないから
不動産相続が揉めやすい代表的な理由は、なんといっても“そのまま分割できないから”です。
例えば、現金あるいは預貯金の場合、相続人の人数に合わせて、1円単位まで公平に分割できる可能性が高いです。
一方で、不動産はそのまま分割できないため、基本的にはいずれか1人が引き継ぐことになります。
しかし、ここで問題になるのが、「誰が引き継ぐのか?」という点です。
一度売却して得た現金を分割するという選択肢もありますが、あくまで現物のまま引き継ぐことにこだわるのであれば、すべての相続人が納得するような不動産相続を実現するのは難しくなります。
処分の方法が多いから
不動産相続でトラブルが起こりやすい理由としては、“処分の方法が多いから”ということも挙げられます。
例えば、現金や預貯金の場合、基本的には相続人同士で分けるか、相続放棄するという選択肢しかありません。
ただ、相続不動産は、以下の方法で処分もしくは維持されます。
・建物を残したまま売却
・更地にして売却
・残った建物に居住
・土地活用
もちろん、1人の相続人が売却を希望していても、他の相続人が“住みたい”と思っていれば強行することはできませんし、その逆もまた然りです。
つまり、処分について相続人全員の意見を一致させにくいことも、不動産相続が揉めやすい理由の1つだということです。
評価の方法が多いから
不動産を相続する際は、誰が引き継ぐのかなどを決める前に、まずその不動産の価値を評価します。
ただ、この際に用いる評価方法は1つではありません。
以下の5つのうち、いずれかの価格を用いて価値を評価することになります。
・固定資産税評価額
・公示地価
・路線価
・基準地価
・実勢価格
不動産の価格は日々変動するものであり、どの価格を用いるのか、そしてどの時点を基準に評価するのかによって、大きく評価額に違いが出ることがあります。
また、どの評価方法を用いるかについては、相続人同士の協議で決定されるため、ここで揉めてしまうというケースも散見されます。
不動産相続のトラブル事例
では、前述した事例以外の不動産相続トラブルには、一体どんなケースが挙げられるのかを見ていきましょう。
・相続できると誤解していた
・誰も相続しなかった
・遺留分がもらえなかった
相続できると誤解していた
相続人の中には、被相続人とずっと同居していたり、介護をしていたりしたことを理由に、「必ず不動産を相続できる」と考えている方もいますが、実際はそうとは限りません。
このような相続人は、“寄与分”という制度を利用し、被相続人の財産維持・増加にどれだけ貢献したかをアピールする必要があります。
もし、寄与分が認められれば、当然相続は認められますし、貢献分だけ財産を多く引き継ぐことができます。
誰も相続しなかった
不動産相続に関するトラブルと聞くと、“不動産を相続人同士で取り合う”というイメージが強いです。
ただ、逆に“誰も相続しない”という場合も、当然トラブルに繋がります。
なぜなら、取得する人物が決まらないということは、相続不動産がそのまま放置されることに繋がるからです。
放置された不動産は、どんどん老朽化していきますし、見た目の悪さや臭いなどによって、周辺住民の生活に悪影響を与えるおそれもあります。
遺留分がもらえなかった
相続人には、相続財産についての最低限の取り分である“遺留分”というものがあります。
ただ、場合によっては、特定の相続人が遺留分すら得られないこともあります。
例えば、被相続人が1人の相続人に対し、不動産を相続させるという旨の遺言書を作成した場合などです。
この場合、損をした相続人は“遺留分侵害額請求”を行うことで、得をした別の相続人から、遺留分相当額を支払ってもらうことができます。
ただ、遺留分侵害額請求は、あくまで金銭の支払いを求めるものです。
よって、前述のような遺留分を侵す不動産相続があったとしても、すでに不動産を取得した別の相続人から、当該物件を取り戻すことはできません。
まとめ
ここまで、不動産相続が揉めやすい理由、よく起こるトラブルの事例について解説しましたが、いかがでしたでしょうか?
今回解説したトラブル事例はほんの一部であり、実際不動産相続をすることになると、まだまだ揉めるケースはたくさんあります。
また、たとえ相続人同士の関係が良好であっても、不動産相続が始まったことにより、関係が悪化することも珍しくないため、注意しましょう。