不動産の“相続放棄”をする際の流れや注意点について
被相続人が遺した不動産等の財産は、必ずしも相続人が引き継がなければいけないものではありません。
“相続放棄”をすれば、すべての財産の相続を辞退することができます。
ここからは、そんな相続放棄の流れや注意点について解説しますので、将来発生する相続のためにもぜひご覧ください。
相続放棄の概要
まずは、相続放棄がどういうものなのかについて簡単に解説します。
これは、簡単に言うと、被相続人におけるすべての財産の相続を避けることを指しています。
被相続人は、以下のようなプラスの相続財産、マイナスの相続財産を持っていますが、相続放棄をすると、相続人はすべてに対する相続の権利を失います。
プラスの財産 |
不動産(土地、建物)、預貯金、有価証券、債権、知的財産権、事業用財産、家庭用財産など |
マイナスの財産 |
借入金、未払い金、敷金、保証金、預かり金、買掛金、保証債務、連帯債務、公租公課など |
つまり、マイナスの財産の方が明らかに大きい場合、被相続人が誰かの連帯保証人になっている場合などには、相続人は相続放棄をすることも検討すべきだということです。
相続放棄の流れについて
相続人が不動産等の相続放棄をする際の一般的な流れは、主に以下の通りです。
①書類集め
②管轄の家庭裁判所の確認
③相続放棄申述書の作成
④書類提出
⑤照会書の返送
⑥相続放棄申述受理通知書の受け取り
書類集め
まずは、手続きをするのに必要な書類を集めます。
具体的には、以下のような書類です。
・被相続人の戸籍謄本
・被相続人の住民票または戸籍の附票
・相続放棄をする本人の戸籍謄本
・相続放棄申述書
・収入印紙(800円)
・郵便切手
管轄の家庭裁判所の確認
不動産等の相続放棄をするには、家庭裁判所に必要書類を提出しなければいけませんが、どの家庭裁判所に提出しても良いというわけではありません。
提出先は、被相続人が最期に居住していた住所を管轄する家庭裁判所です。
管轄がどこになるかについては、裁判所の公式ホームページで確認できるため、忘れずに目を通しておきましょう。
相続放棄申述書の作成
不動産等の相続を放棄する旨を伝えるための書類が“相続放棄申述書”です。
この書類は、近隣の家庭裁判所から入手したり、裁判所のホームページからダウンロードしたりすることができます。
申述人欄、被相続人欄、申述の趣旨、理由を正確に記入し、最後に捺印をすれば完成です。
もし、書き方が間違っていれば、相続放棄は認められない可能性もあるため、注意しましょう。
書類提出
管轄の家庭裁判所に対し、作成した相続放棄申述書、必要書類を提出します。
郵送する場合は、郵便切手が必要になります。
照会書の返送
必要書類を提出すると、家庭裁判所から“照会書”というものが届きます。
これは、裁判官からの質問状のことであり、適切な回答を記入して返送しなければいけないため、不安な方は弁護士や司法書士などに相談し、書き方をレクチャーしてもらいましょう。
相続放棄申述受理通知書の受け取り
照会書を返送した後、1週間~10日前後経過すると、申述人のもとに“相続放棄申述受理通知書”が送付されます。
これは、「相続放棄を認めます」という意味の書類であるため、届いた時点で相続放棄はすべて完了したということになります。
相続放棄の注意点
相続放棄をする本人は、以下のことに注意しましょう。
・親族に相続放棄する旨を伝えているケースについて
・相続放棄をしても受け取れる財産について
・相続放棄手続きの期限について
親族に相続放棄する旨を伝えているケースについて
不動産等の相続放棄をしようとする方の中には、「親族に相続放棄をする旨を伝えておけば、手続きをする必要はない」と考えている方もいるかもしれません。
しかし、これは間違いです。
相続放棄をするには、必ず家庭裁判所への手続きが必要になります。 また、遺産分割協議書の中に「相続放棄をする」と記入し、署名捺印したとしても、それだけで相続放棄は完了しませんので、注意してください。
相続放棄しても受け取れる財産について
相続放棄をすると、不動産等のプラス財産、借入金等のマイナス財産のすべてを相続しないことになります。
ただ、“遺族年金”に関しては、相続放棄をしても受け取ることが可能です。
相続放棄手続きの期限について
相続放棄の手続きは、相続が開始したことを知ってから3ヶ月以内に行う必要があります。
“亡くなってから3ヶ月”ではなく、“亡くなったことを知ってから3ヶ月”であるため、そこは勘違いしないようにしましょう。
また、被相続人の財産状況がわからないなど、3ヶ月以内に相続放棄の手続きをするのが難しい場合は、申述期間伸長の申請を行うことができます。
まとめ
ここまで、不動産を始めとする財産を相続放棄する際の流れ、相続放棄の注意点などを見てきましたが、いかがでしたでしょうか?
細かいポイントや注意点などを挙げ出すとキリがありませんが、最低でも今回解説したことは、しっかり覚えておきましょう。
それによって、手続きを行う際にバタバタしてしまうことを防止できます。