【不動産相続】“エンディングノート”と遺言書の異なる点
今後被相続人となる方の中には、早めに遺言書を作成し、不動産等の相続に備えようとする方もいるでしょう。
また、遺言書と似たようなものに“エンディングノート”が挙げられますが、皆さんはこれらの異なる点をご存知でしょうか?
ここからは、エンディングノートの概要、遺言書と異なる点について詳しく解説します。
エンディングノートの概要
高齢の方が亡くなったときに備えて、自身の希望を書き留めておくノートを“エンディングノート”といいます。
具体的には、自身が亡くなったとき、判断力や意思疎通能力の喪失を伴う病気を患ったときに、希望する内容を記載します。
この説明だけだと、遺言書とまったく同じように聞こえますよね。
ただ、実際これらには、まったく異なるものと言っても過言ではないくらい、さまざまな違いがあります。
異なる点は主に5点
エンディングノートと遺言書の異なる点は、主に以下の5つです。
・法的効力がない
・記入方法に決まりが無い
・記載内容
・作成費用
・開封ルール
法的効力
遺言書は、法的効力を有する書類です。
そのため、被相続人の方は、相続不動産の分割方法などを遺言書に記載することで、相続人にその通り行動させることができます。
一方、エンディングノートに法的効力は存在しません。
なぜなら、これはあくまで、存命中や死後の家族の負担を減らすことを目的としているものだからです。
イメージとしては、相続人不動産の分割方法などについて、相続人に“強制”させるためのものではなく、“お願い”するものです。
被相続人の意思を尊重し、記載内容通りに行動するかどうかは、あくまで相続人次第となります。
記入方法
遺言書は、記入方法が定められています。
例えば、自筆証書遺言に関しては、その全文と日付、氏名を自筆しなければいけないというルールがあります。
つまり、パソコンなどを用いて記入してはいけないということです。
また、以下のことも禁止されています。
・遺言書を代筆させる
・音声で遺言を遺す
・映像で遺言を遺す
これに対しエンディングノートは、どんな方法で記入しても構いません。
パソコンを使ってもOKですし、スマートフォンやタブレットなどの端末を用いても問題はありません。
中には、市販されているエンディングノートを使用する方もいます。
記載内容
遺言書とエンディングノートは、記載内容も大きく異なります。
遺言書の場合、主に以下の内容が記載されます。
・相続分の指定
・遺言書の執行に関する効力
・相続廃除
・遺産分割方法の指定、分割の禁止
・相続財産の処分 など
一方、エンディングノートに記載される主な内容は以下の通りです。
・病気になった際、延命措置を望むか望まないか
・自身に介護が必要になった際に望むこと
・預貯金、不動産に関する情報
・葬儀に関する希望
・相続に対する考え方
・プロフィール、自分史 など
遺言書は、正しい形式で相続について記載しないと法的効力を発揮しませんが、エンディングノートはそもそも法的効力がないため、幅広い内容を記載できます。
作成費用
遺言書にはあらゆる形式がありますが、どれも比較的作成コストは高めです。
自筆証書遺言は、被相続人となる方が自ら作成するだけであるため、それほどコストはかかりませんが、これが公正証書遺言となると、そういうわけにもいきません。
なぜなら、公正証書遺言を作成する場合には、公証人に支払う手数料が発生するからです。 また、相続する不動産等の財産の価額によって、手数料の金額は以下のように変わります。
相続財産の価額 |
手数料の金額 |
~100万円 |
5,000円 |
100万円~200万円 |
7,000円 |
200万円~500万円 |
11,000円 |
500万円~1,000万円 |
17,000円 |
1,000万円~3,000万円 |
23,000円 |
3,000万円~5,000万円 |
29,000円 |
5,000万円~1億円 |
43,000円 |
1億円~3億円 |
43,000円+超過額5,000万円までごとに13,000円を加算した額 |
3億円~10億円 |
95,000円+超過額5,000万円までごとに11,000円を加算した額 |
10億円~ |
249,000円+超過額5,000万円までごとに8,000円を加算した額 |
一方、エンディングノートはほとんどコストがかかりません。
ノートとペンを用意する場合でも、数百円程度で済みます。
開封ルール
遺言書を開封する際は、“検認”という手続きが必要になります。
家庭裁判所によるチェックを受け、なおかつ相続人全員が揃っている場合でなければ、開封できません。
検認を行わずに無断で開封すると、過料を支払わなければいけない場合もあります。
これに対し、エンディングノートはいつでも自由に開封できます。
特別な手続きは必要ありませんし、被相続人が存命中に開封することも可能です。
むしろ、被相続人の意思を早めに理解しておくためには、死亡後より生前に内容をチェックしておく方が良いでしょう。
まとめ
ここまで、遺言書とエンディングノートの異なる点について解説しましたが、いかがでしたでしょうか?
所有する不動産や預貯金などの処理についての希望がある方は、早めにエンディングノートや遺言書を作成しておきましょう。
もちろん、どちらを作成する際も、自身の希望を盛り込みつつ、なおかつ相続人の負担を極力大きくしないように意識しなければいけません。