【被相続人向け】遺言書でできる10のこと
現在不動産を所有している方は、いずれ訪れる相続に向けて、ある程度準備をしておかなければいけません。
また、被相続人の準備として挙げられるのは、やはり“遺言書”の作成です。
ここからは、被相続人の方に向けて、遺言書でできる10の行為について解説したいと思います。
ぜひ参考にしてください。
遺言書でできる10のこととは?
不動産を含む財産を所有する方は、遺言書によって以下の行為が可能であることを把握しておきましょう。
・認知
・財産処理方法の指定
・後見人の指定
・廃除
・相続分の指定
・分割方法の指定
・分割禁止の指示
・担保責任者の指定
・遺言執行者の指定
・遺留分減殺方法の指定
認知
法律上の婚姻関係によらず生まれた子を、その父または母が自分の子だと認める行為を“認知”といいます。
これは、通常戸籍窓口に認知届を提出することで成立するものですが、遺言にその旨を記載することで、手続きの代わりとすることもできます。
つまり、被相続人の方は、遺言書によって特定の人物を自身の子と認知し、不動産などの財産を相続する権利を与えることができるというわけです。
財産処理方法の指定
被相続人の方は、自身が遺した不動産などの財産における処理方法について、遺言書で相続人に指定することができます。
例えば、以下のような処理を望む場合は、遺言書にその旨を記載しましょう。
・相続不動産を相続人以外に贈りたい
・相続不動産を財団法人のために寄付したい など
後見人の指定
判断能力が不十分な人物に代わり、契約などの法律行為をする人物のことを“後見人”といい、遺言書ではこれを指定することもできます。
例えば、遺言書で後見人を指定しておくことで、自身の子(未成年)に代わり、相続不動産の管理等を託すことができます。
廃除
被相続人が虐待を受けたり、重大な侮辱を受けたりした場合に、当該相続人から相続人としての地位を奪うことを“廃除”といいます。
これも、遺言書で行える行為の1つで、対象となった相続人は、不動産等を引き継ぐ権利が完全に消滅します。
相続分の指定
相続人が引き継ぐ財産の割合は、あらかじめ法律で定められています。
ただ、遺言書において被相続人は、法定割合によらず、自由にその割合を指定することができます。
例えば、配偶者の本来の法定割合を、1/2から1/3にするといった行為です。
分割方法の指定
不動産等の相続財産における分割方法は、通常、相続人同士が協議して決定しますが、被相続人は遺言書でその方法を指定することができます。
例えば、不動産等の分割しにくい財産について、「換価分割することとする」といった内容を記載することなどが該当します。
分割禁止の指示
相続人の中には、少しでも早く被相続人の財産を引き継ぎたいがために、自身の意思ばかりを主張するような方もいます。
この場合、相続は円滑に進まないことが予想されますが、被相続人は防止策として、遺言書で“分割禁止”を指示することができます。
これは、5年以内までの相続財産分割禁止を指示することをいい、その間相続人には冷静になる時間が設けられます。
担保責任者の指定
相続人には、“担保責任”というものがあります。
これは、相続財産の分割後、相続した土地や建物に他人の権利が付いていたり、引き継いでみたら坪数が不足していたりする場合に、他の相続人が損害賠償をする責任があるというものです。
被相続人は、この場合の担保責任者を遺言書で指定できます。
遺言執行者の指定
遺言書の内容を実現するために、必要な手続きをする人物を“遺言執行者”といいます。
具体的には、以下のような手続きを行う人物です。
・相続財産目録の作成
・各金融機関での預金解約手続き
・法務局での不動産名義変更手続き など
被相続人は、遺言書で遺言執行者を指定することが可能です。
また、自身で指定するだけでなく、第三者に指定を委任することもできます。
遺留分減殺方法の指定
民法で定められている一定の相続人が、最低限相続できる財産のことを“遺留分”といいます。
また、遺言書の内容により遺留分を侵害され、それに納得がいかない相続人は、侵害された遺留分を確保するために、遺言書により財産を相続した人物に対し、“遺留分減殺請求”をすることがあります。
つまり、被相続人は遺留分を侵害してまで、他の相続人に財産を遺すことはできないというわけです。
ただ、遺留分減殺請求があった場合の方法については、遺言書で指定することができます。
これは、相続人の遺留分減殺請求によって、相続財産のすべてが受遺者と遺留分権利者の共有になるという、ややこしい状況を避けるための手段です。
まとめ
ここまで、被相続人の方に向けて、遺言書でできる10のことを解説してきました。
少し複雑なルールもありますが、これらすべての行為について把握しておけば、被相続人の方は不動産等を思惑通り引き継がせたり、処理させたりすることができます。
また、残された家族に負担をかけさせないという意味でも、これらの知識は早い段階で得ておくことをおすすめします。