不動産相続時に行う“検認”に関する疑問を解決します
不動産の相続時、被相続人が遺言を遺している場合は、その種類によって“検認”をしなければいけないことがあります。
これは、非常に重要な手続きですが、初めて行う方は流れやルールがわからず、困惑する可能性もあります。
今回は、検認の概要と併せて、よくある疑問を解決していきたいと思います。
検認の概要
被相続人が遺言を遺していない場合、不動産の相続・分割方法は各相続人が協議の末決定することになります。
一方、遺言を遺している場合は、その内容を優先して相続・分割しなければいけません。
また、遺言には主に以下の3種類があります。
・自筆証書遺言
・秘密証書遺言
・公正証書遺言
上記のうち、被相続人が自筆証書遺言あるいは秘密証書遺言という形を選択している場合、相続人は検認をしなければいけません。
これは、簡単にいうと、裁判所協力の元、遺言を開封する手続きのことをいいます。
第三者を交え、遺言の内容を明らかにすることで、後々内容が変更されたり、別の遺言が偽造されたりすることを防ぐために行います。
一般的な検認の流れ
不動産相続時に行う検認の一般的な流れを簡潔に解説すると、以下の通りです。
1.相続人が誰なのかハッキリさせる
2.家庭裁判所の管轄を確認する
3.提出書類を作成する
4.家庭裁判所に申し立てをする
5.家庭裁判所から検認期日の通知が送られてくる
6.検認を実施する
7.検認済証明付きの遺言を返還してもらう
検認に関するよくある疑問
では、ここからは検認を行う方によくある疑問を解決していきましょう。
これから相続人となる方も、同じような疑問を抱える可能性があるため、ぜひチェックしてください。
Q.検認当日、相続人は全員出席しないといけないの?
裁判所協力の元、遺言を開封し、内容を明らかにするのが検認です。
したがって、検認当日は相続人全員が出席しなければいけないと思われがちですが、実際はそうではありません。
当日出席する義務があるのは、あくまで検認を申し立てた人物のみです。
具体的には、遺言を保管していた方か、もしくは遺言を発見した相続人です。
ちなみに、検認が終わった後でも、家庭裁判所に検認調書を申請すれば、出席しなかった相続人は遺言の内容をチェックできます。
Q.検認前に遺言を開封してしまうとどうなるの?
自筆証書遺言、あるいは秘密証書遺言を検認前に開けてしまうと、その人物は50,000円以下の罰金を支払わなければいけない可能性があります。
これは、上記2種類の遺言に関して、「必ず検認を経て開封しなければならない」という決まりがあるからです。
ちなみに、誤って開封してしまった遺言であっても、その後検認すれば正当な遺言として認められます。 事前に開封されたことで、効力がなくなるということはありません。
Q.申請から完了までにかかる期間は?
検認を家庭裁判所に申し立ててから、実際終了するまでの期間は、最低でも1ヶ月以上はかかります。
また、申請時は申請書だけでなく、当事者目録や遺言の写し、被相続人の戸籍謄本などさまざまな書類が必要になるため、早めに用意しなければさらに期間は延びますし、その分相続自体のスケジュールも詰まってしまいます。
Q.不動産相続と検認手続きは並行できるの?
検認が終了しないと、相続不動産の名義変更などの手続きはできません。
ただ、不動産の価格調査や、その他の財産の調査など、並行してできる相続手続きはあります。
検認が終わるまで不動産を含むすべての相続手続きを中断していると、終了後スムーズに相続が進まないため、注意しましょう。
Q.検認後、遺言の内容とは違う形で不動産相続をすることはできるの?
検認後、遺言の内容が正式に認められた後でも、すべての相続人が別の方法での不動産相続を望んでいるのであれば、そちらの方法を優先しても構いません。
ただ、これは被相続人が遺した遺言に、「不動産を相続人に相続させる」という旨が記載されている場合のみ、許されることです。
例えば、遺言の中に「相続人以外の第三者に遺贈する」と書かれている場合、相続人のみの協議で相続方法を変えることはできません。
この場合は、遺言で指名された第三者の同意を得る必要があります。
Q.遺言が複数ある場合、すべて検認するべきなの?
被相続人の中には、何らかの理由で遺言を複数残している方もいます。
この場合、原則もっとも日付が新しいものが有効な遺言と判断されますが、検認はすべての遺言に対して行っておくことをおすすめします。
なぜなら、すべて検認していなければ、検認済みではない遺言の内容を書き換え、「こちらが正しい内容のものだ」と主張する相続人あるいは第三者が現れる可能性があるからです。
まとめ
ここまで、不動産相続時に行う検認のよくある疑問を解決してきましたが、いかがでしたでしょうか?
検認が重要な手続きであることは、前述した内容である程度理解していただけたでしょう。
また、スムーズに手続きを進めていかないと、相続手続き全体に影響を及ぼすこともわかっていただけたかと思うので、今後相続人になり得る方は、ぜひ本記事の内容を覚えておいてください。