不動産相続を考えた方が良いケース①工場や資材置き場から土壌汚染や産業廃棄物が発見された!

一口に不動産の相続と言っても、引き継がれる物件にはさまざまな種類があります。
もし、被相続人の遺した不動産に“工場や資材置場”が含まれていれば、慎重に調査や検討方が良いでしょう。
ここからは、なぜ工場や資材置き場は、引き継がない方が良いのかについて解説します。
工場や資材置き場を安易に引き継がない方が良いケース

工場や資材置き場といえば、わりと大きな敷地があり、相続後に売却すれば、高額な現金を手に出来るかもしれないと期待してしまいます。しかし、工場や資材置き場には、残置物があるかもしれません。簡単に捨てられる物であれば良いのですが、この場合、産業廃棄物として専門家に処分を依頼することになるでしょう。産業廃棄物の場合、高額な処分費用を請求されるということもあります。その他にも、工場や資材置き場には目に見えない部分にも問題を抱えている可能性があるので注意が必要です。
もし、相続人がこのような不動産を引き継ぐのであれば、まずは残置物やその他の問題を事前調査し、相続後、ご自身で問題解決してまで、取得する価値があるかどうかを検討することが大切です。
では、工場や資材置き場が抱える問題には、一体どんなことが挙げられるのでしょうか?
具体的には以下の通りです。
・産業廃棄物が残置されている
・土壌汚染の可能性がある
・近隣トラブルが発生している場合がある など
産業廃棄物が残置されている
工場や資材置き場には、業種や利用方法、危険な薬品や油のほか、産業廃棄物が残置されている可能性があります。時には、地中に埋められている場合もありますので、見た目では判断がつかないこともあります。
これら残置物は、家庭ごみや粗大ごみのように、簡単には捨てることが出来ず、産業廃棄物の処分業者などに依頼する必要があります。これらの処分費用が高額になることは容易に想像が付きます。
相続で取得後、工場や資材置き場を売却するのであれば、これらの処分費用は売主負担となることが多く、売買代金が大きく減額されてしまうことになってしまいます。従って、相続を受ける決断を下す前に、現地に出向き、工場や資材置き場には、どの程度の残置物があるのか、調査や確認を行う必要があります。
土壌汚染の可能性がある
特に工場の場合、土壌汚染の可能性を排除することは出来ません。土壌汚染と言えば、大きな工場をイメージするかもしれませんが、小さな町工場や自動車の板金塗装工場やクリーニング店なども対象になる可能性があるのです。工場で使用する薬品の保管や廃棄方法によっては、地中深くに浸み込んでしまって、地下数メートルの土地を掘り返し、全て入れ替えたという大掛かりな対応を余儀なくされたという例もあります。当然、この時の費用は数億円とも言われています。
近隣トラブルが発生している場合がある
工場や資材置き場では、すでに近隣トラブルが発生している可能性があります。
なぜなら、騒音、振動や臭気など、近隣住民が嫌がる以下のような特徴があるからです。つまり、工場や資材置き場を相続する場合、不満や怒りを覚えている近隣住民から、避難の集中砲火を受ける可能性もあります。近隣トラブルがあると、売却時の境界画定に支障が出るほか、購入者にも思わぬ被害が生じる可能性もあり、売却が難しくなるかもしれません。
工場や資材置き場の相続放棄をする際の注意点

工場や資材置き場は、相続の決断前に、慎重な調査と検討をおすすめします。その結果、相続をすることでマイナスが大きいという結果から、相続を諦める、『相続放棄』を選択することもあるでしょう。
しかし、相続放棄をしたからといって、簡単に空き家の管理責任から逃れられるとは限りませんので、相続人の方は注意しましょう。
民法第940条第1項には、以下のような記載があります。
“相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となったものが相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない”
つまり、相続放棄をしても、その後“相続財産管理人”が選任されるまでの間は、本来相続人となる方が工場や資材置き場の管理をしなければいけないということです。
また、「それならすぐに相続財産管理人を選任すれば良いのでは?」と思う方もいるかもしれませんが、ここで問題になるのが費用です。
相続財産管理人は、業務で財産管理を行う人物であり、選任するには当然費用が発生します。
この際の費用は、被相続人の財産から差し引かれることになりますが、もし足りなければ、申立人(相続人)が支払わなければいけません。
そのため、経済的な余裕がなければ、早々に放置された空き家から離れるのは難しくなります。
プラスの財産が引き継げなくなる点も注意しよう
工場や資材置き場の相続放棄をすれば、当然預貯金などのプラスの財産も引き継げなくなります。
もちろん、「プラスの財産を犠牲にしてでも、空き家の相続を放棄したい」という方はいるかもしれませんが、被相続人が巨額の財産を遺している場合、実際このような選択をするのは難しいでしょう。
まとめ
ここまで、工場や資材置き場の相続について解説してきました。
急に工場や資材置き場を相続することになると、相続人の方はどう行動すべきなのか困惑するでしょう。
したがって、被相続人が存命の間に、残置物等の有無や土壌汚染の原因になりそうな薬品の使用状況などのヒアリングを行い、実際相続することになったとき、どう対処するのかもシミュレーションしておくと良いでしょう。