底地(貸宅地)の地代は、その土地の価格や税金、近隣の地代など、あらゆる事情を加味した上で決定されます。
また、長年契約が続いている底地(貸宅地)では、当然“増減請求”が行われることもあります。
ここからは、底地(貸宅地)地代における増減請求について、詳しく解説したいと思います。

地代の増減請求の概要

底地(貸宅地)の地代における増減請求とは、地代が不相当となったときに、借地契約を結んでいる当事者が賃料の増額あるいは減額を請求できることをいいます。
ちなみに、この請求ができるのは、以下のような理由により、地代が不相当になった場合です。

・土地に対する公租公課の増減があった
・土地の価格の上昇・下降があった
・その他の経済事情の変動があった など

また、この他にも、近隣にある類似した底地(貸宅地)の地代に比較して、対象の底地(貸宅地)の地代が不相当となった場合も、増減請求は可能となります。
そして、実際に地代が“不相当”なのかどうかに関しては、“相当な地代”を算出し、それと比較することで判断します。
これは、“差額配分法”、“利回り法”、“スライド法”、“賃貸事例比較法”のいずれか、あるいは総合方式や積算法によって算出されますが、正確に算出するのは決して容易ではありません。
ちなみに、上記の“相当な地代”は、底地(貸宅地)において、権利金の授受がなかった場合に現れる”相当の地代“とはまったくの別物であるため、混同しないように注意しましょう。

地代の増減請求権行使の方法について

地代の増減請求をする権利、つまり“増減請求権”を行使する方法は、至ってシンプルです。
地主様あるいは借地人様が、相手側に対して行使するという意思を見せるだけです。
もちろん、意思表示の内容は、賃料を増額するもしくは賃料を減額するということになります。
また、底地(貸宅地)の地代における増減請求では、ハッキリと金額を明示する必要がありません。
つまり、金額を指定しない地主様からの地代値上げ交渉、借地人様からの地代値下げ交渉も、増減請求に該当するというわけですね。

なぜこのような制度があるのか?

底地(貸宅地)の地代における増減請求が制度として設けられたのは、今から90年近くも前のことです。
また、これが正式な制度として設けられた背景には、やはり地主様と借地人様の公平を保つことがあります。
つまり、借地契約が結ばれた時点の地代を維持することは、公平の原理に反しているというわけですね。
底地(貸宅地)の地代は、さまざまな要素によって徐々に適切なものではなくなってしまうため、契約時点の地代の維持を当事者に義務付けることは、地主様にとっても借地人様にとっても負担になるのです。

地代の増減請求ができないケースについて

底地(貸宅地)の地代における増減請求は、公租公課の増減や土地の価格上昇・下降などがあったときに実行できるという話をしましたね。
ただ、以下に該当する場合は、たとえ適切な地代を定めるニーズがあったとしても、増減請求をすることができません。

 最初から地代が不相当な場合
経済状況等の変化によるものではなく、借地契約の締結時の時点で、すでに地代が不相当である場合、これだけの理由で増減請求をすることはできません。

 地代が設定されていなかった場合
借地契約締結時点で、地代が設定されていなかった場合も、地代の増減請求は却下されます。

 底地(貸宅地)使用前の場合
底地(貸宅地)をまだ使用していない段階での地代増減請求も認められません。

地代の増減請求における法的な強さについて

底地(貸宅地)の地代における増減請求は、“強行法規”の1つとして数えられます。
これは、法令の規定のうち、それに反する当事者間の合意を問わず、適用される規定をいいます。
借地借家法では、一般的に借地人様から地主様への“片面強行法規”が多くなっています。
つまり、立場の弱い借地人様が守られるケースが多いというわけですね。
ただ、地代の増減請求に関しては、これの対象から外れているため、地主様から借地人様に対する請求も強行法規となっています。
もちろん、先ほども解説したように、すべてのケースで増減請求が認められるわけではありませんが、基本的には地主様、借地人様双方が正当な理由で請求した場合、相手側は認めなければいけないということになります。

地代の増減請求と特約について

先ほど、底地(貸宅地)の地代における増減請求は、強行法規であると解説しました。
では、借地契約書の中に、増減請求に関連する特約が盛り込まれている場合は、一体どうなるでしょうか?
例えば、契約書の中に、“一定期間、底地(貸宅地)の地代における増減はできない”という特約が記載されているとしましょう。
この場合は、原則特約が優先されます。
つまり、増減請求はできないということですね。
また、その他地代の改定に関する特約も、原則有効となります。
ただ、経済事情の変更があったときに、その事実を契約当時、一般的に予見できた場合、あるいは当事者は予見していた場合、上記の特約は無効となります。
これは、“限定的有効説”と呼ばれています。
ちなみに、定期借家における地代改定の特約に関しては、原則として制限がありません。

借地人様が複数いる場合の地代増減請求について

底地(貸宅地)には、借地人様が複数いるということも考えられます。
例えば、底地(貸宅地)に建っている建物を、複数の借地人様で共有しているようなケースですね。
このとき、地主様が地代の増減請求をする場合、すべての借地人様に対し、意思表示をしなければいけません。
1人だけに伝えても意味がないため、注意しましょう。
ただ、底地(貸宅地)の地代の請求に関しては、何人か存在する借地人様のうち、1人に対して行うことが可能です。
ここを混同しないように気を付けましょう。

地代の増減請求において考慮される事情について

底地(貸宅地)の地代における増減請求では、公租公課の増減や土地価格の上昇・下降等の事情が考慮されます。
また、これらの事情は、不動産鑑定評価基準の継続賃料の改定に関する規定としても示されています。
具体的な項目は以下の通りですね。

 近隣エリアもしくは同一需給圏内の類似エリア等における宅地の賃料、または同一需給圏内の代替競争不動産の賃料、その改定の程度およびそれらの推移
 土地価格の推移
 純賃料の推移
 底地(貸宅地)に対する利回りの推移
 公租公課の推移
 直近の合意時点および価格時点における新規地代と、現在の地代の開き具合
 契約内容およびそれに関する経緯
 契約上の経過期間、あるいは直近の合意時点から価格時点までの経過期間
 地代改定の経緯 など

ちなみに、上記の“公租公課”には、地代改定の事由となり得る税金(固定資産税、都市計画税、水利地益税など)が該当します。
また、“契約上の経過期間”についてですが、これは期間が長ければ長いほど、合意時点(契約時)と現在の地代の開きが大きくなり、必然的に改定の必要性も大きくなると判断されます。

まとめ

ここまで、底地(貸宅地)の地代における“増減請求”という制度について、詳しく解説してきました。
地代が不相当なものになると、地主様は十分な収入を得られなくなりますし、借地人様は通常の生活をするのも困難になる可能性があります。
したがって、どのような場面で増減請求権を行使できるのかについては、地主様も借地人様もしっかり把握しておかなければいけません。