底地(貸宅地)における“明け渡し請求”について解説します
底地(貸宅地)の“明け渡し請求”とは、文字通り地主様が借地人様に対し、借地権の明け渡し(返還)を求めることをいいます。
また、底地(貸宅地)の明け渡し請求は、基本的に地主様と借地人様の間でトラブルがあった場合に行われることが多く、地主様はその方法を知っておかなければいけません。
詳しく解説しましょう。
底地(貸宅地)の明け渡し請求が行われる主な場面
底地(貸宅地)の明け渡し請求は、主に借地契約を結ぶ当事者間の契約違反などのトラブルが原因で行われるという話をしました。
つまり、借地人様に“契約上の債務不履行”があった場合ですね。
例えば、以下のようなケースが該当します。
地代の未払いが発生している
地主様に許可を取らず借地権の譲渡や売却をした
地主様に許可を取らずに増改築をした など
借地人様は、土地を借りている以上地代を支払わなければいけませんし、借地権の譲渡や売却、底地(貸宅地)上の建物の増改築をする際は、地主様に許可を取らなければいけませんので、上記は契約違反、つまり債務不履行ということになります。
底地(貸宅地)の明け渡し請求における流れ
底地(貸宅地)の明け渡し請求は、主に以下のような流れで行われます。
地主様はぜひ覚えておきましょう。
①借地契約の終了(契約上の不履行による契約解除等)
②仮処分
③明け渡し交渉
④明け渡し請求訴訟
⑤強制執行
では、借地契約終了以降のそれぞれのステップについて、もう少し詳しく見てみましょう。
仮処分について
後述しますが、底地(貸宅地)の明け渡し請求では、地主様が“明け渡し請求訴訟”というものを行うことがあります。
これは、借地人様を強制的に退去させるために、地主様が訴訟をし、裁判所に認められることで成立するというものです。
ただ、後々明け渡し請求訴訟をする場合、借地人様によってそれを妨害されることがあります。
明け渡し請求訴訟では、地主様が被告を借地人様に指定する必要がありますが、底地(貸宅地)上の建物の居住者・所有者を変えられてしまうと、もう1度改めて新しい被告に対し、提訴しなければいけません。
また、これが何度も続くと、地主様はいつまで経っても被告の変更に追われ、明け渡し請求訴訟を完了させられなくなります。
これが、借地人様による明け渡し請求訴訟の妨害ですね。
このような状況になるのを防ぐため、地主様が底地(貸宅地)における占有移転・処分を禁止し、借地人様の妨害を無効にするのが“仮処分”という手続きです。
これを行うことで、たとえ借地人様による居住者・所有者の変更があったとしても、わざわざ明け渡し請求訴訟をやり直す必要がなくなります。
ちなみに、仮処分に関しては、必ずしも行う必要はありません。
そして、仮処分は本来、借地人様の妨害を防ぐという役割のものですが、これをきっかけに地主様、借地人様に協議する機会が生まれ、和解へと繋がることも多々あります。
したがって、地主様は借地人様に対し、まずは「法的手続きを開始した」という姿勢を見せ、和解成立を目指しましょう。
この段階で和解が成立すれば、地主様と借地人様のトラブルが長期化することもありませんからね。
明け渡し交渉について
底地(貸宅地)の明け渡し請求では、地主様の弁護士が代理人となって明け渡し交渉が行われます。
借地人様が非を認め、明け渡しに応じてくれるという場合は、この交渉によって、明け渡しの内容について合意に達することもあります。
また、その場合は合意内容を明確にし、書面にして残しておきましょう。
記録しておくべき項目は主に以下の通りです。
明け渡しまでの期限
明け渡し料の金額
建物の処理(地主様が買い取るのかどうか、登記の申請時期・費用負担等)
支払い時期、支払い方法
違約金 等
ちなみに、通常明け渡し料は借地権価格がベースとなりますが、契約違反などの債務不履行による契約解除の場合、明け渡し料を支払わないことも多々あります。
また、明け渡しまでの期限を書面に記載していても、それまでに明け渡しをしない可能性もありますので、地主様はそのときに備えて、早急に強制執行できる準備をすることが出来ます。
それは、裁判所の”即決和解手続き“を利用する方法です。
即決和解手続きは、地主様と借地人様との間で合意した内容を、裁判所で和解書として作成することです。この和解書があれば、仮に借地人様が期日までの明渡しを怠った場合、裁判をせずとも、強制執行が可能となりますので、時間の短縮と費用を削減することが可能です。これがあるだけで借地人様が期限内に借地権を明け渡す可能性もより高くなります。
明け渡し請求訴訟について
底地(貸宅地)の明け渡し請求が、弁護士による交渉でまとまれば問題ありませんが、交渉が難航する場合、最終的には明け渡し請求訴訟が行われます。
訴訟では、地主様における“正当事由”の内容が裁判所によって審査され、明け渡し請求が認められるかどうかが決まります。
ただ、実際には審査・審理が行われている途中で、裁判所が和解勧告を行い、最終的には地主様・借地人様の間で和解が成立するというケースが多いです。
強制執行について
判決や公正証書(債務名義)によって、明け渡しの義務が確定しているにも関わらず、借地人様が明け渡さないという場合、地主様は強制執行をすることができます。
具体的には、借地人様の所有する家財道具を強制的に搬出する等、引っ越し作業のようなものですね。
また、裁判所の執行官により、底地(貸宅地)上の建物における占有者は排除されます。
つまり、借地人様を強制的に建物外に移動させるということですね。
ちなみに、強制的に搬出した家財道具については、倉庫業者などに一時保管してもらうことになります。
その後、建物を取り壊すことで、強制執行は完了します
借地人様と連絡がつかない場合はどうする?
借地人様が地代を滞納したまま行方不明になってしまった場合などは、底地(貸宅地)の明け渡し請求をしたくてもできないという状況になります。
また、連絡が取れないからといって、地主様は無断で建物を解体したり、家財道具を搬出したりすることはできません。
この場合には、明け渡し請求訴訟の認容判決を獲得し、その後強制執行に移るという流れになります。
もしくは、認容判決を獲得した後、建物の差し押さえや競売申し立てを行うという流れが一般的ですね。
仮に、地主様が勝手に建物内に立ち入ってしまうと、住居侵入罪等の罪に問われる可能性もあるため、注意しましょう。
まとめ
底地(貸宅地)の明け渡し請求には、数多くの複雑な手続きがあります。
また、基本的には借地人様における契約上の不履行が原因で行われるため、1度開始すると双方精神的な負担はとても大きくなります。
したがって、地主様はあくまで和解での成立を目指し、借地人様は明け渡し請求が行われないよう、きちんとルールを守って底地(貸宅地)を利用しなければいけません。