底地(貸宅地)の“権利金”と認定課税について
底地(貸宅地)で発生する金銭といえば、やはり最初に思い浮かぶのは地代でしょう。
もちろん、地代に関することを知っておくのも大切ですが、底地(貸宅地)の”権利金“に関するルールに関しても、地主様、借地人様ともに知っておくべきです。
詳しく解説しますので、ぜひご覧ください。
権利金の意味合いについて
底地(貸宅地)で発生する権利金には、主に2つの意味合いがあります。
1つは、借地人様が借地権を設定してもらうことのへの見返りとして、地主様に支払うというものです。
イメージとしては、賃貸物件を借りる際、入居者からオーナーに支払う“礼金”のようなものですね。
借地権設定の対価となるものですから、当然支払われる金額は、借地権価格相当ということになります。
そしてもう1つは、“地代の前払い”です。
借地契約の締結時、先に地代を支払っておくという意味合いでも、権利金が支払われることがあります。
ちなみに、これには地代の全額を支払うケースと、一部のみを支払うケースがあります。
権利金の返還義務について
底地(貸宅地)において、地主様が受け取った権利金には、基本的に返還義務が存在しません。
ただ、中には例外もあります。
例えば、借地契約の期間中にも関わらず、何らかの理由で地主様が契約を継続できなかった場合などは、借地人様に権利金を返還しなければいけない場合があります。
また、契約期間の途中で借地契約が終わってしまった場合の権利金の扱いについては、前もってルールを決めておかないと借地人様、地主様の間でトラブルが発生する可能性もあります。
したがって、これに関する事項は、必ず借地契約書に含めておくことをおすすめします。
ちなみに、権利金に返還義務はありませんが、底地(貸宅地)で発生する可能性のある他の金銭(保証金、敷金)については、元々返還義務が存在しますので、混同しないように注意しましょう。
権利金の相場について
底地(貸宅地)における権利金には、一定の相場が存在します。
具体的には、更地価格の6~9割程度ですね。
お世辞にも少額の金銭とはいえません。
また、権利金は借地権設定の見返りとして支払われることが多いため、借地権価格の相場と同等の金額が設定されることもあります。
したがって、借地人様が権利金の金額を妥当かどうか判断するには、上記いずれかの価格と比較することをおすすめします。
もちろん、地主様が権利金の支払いを求める際も、上記どちらかの金額(更地価格の6~9割、借地権価格相当)を参考にしましょう。
権利金の支払い義務について
底地(貸宅地)の権利金は、実は土地賃貸借契約の開始に際して、例えば、親の土地に子が自宅を建築する場合や、社長個人所有の土地に、法人名義で建物を新築する場合などには、権利金を授受しないことも多いかと思います。このように、権利金なしで借地契約を結ぶ場合、地主様や借地人様には後々税金が課税される可能性があります。
これは、税務上で「権利金の授受があったものとみなす」という扱われることになり、課税されてしまうのです。
これを“みなし贈与”や“認定課税”といいます。
親族同士での土地の貸し借りなどでは、このような想定外の税金が発生しやすくなるため、安易に権利金なしで借地契約を結ぶべきではありません。
認定課税を避ける方法について
先ほど解説したように、底地(貸宅地)の権利金では“認定課税”が発生してしまう可能性があります。
認定課税の納税額は、一般的に高額になりやすいので、できれば避けなければいけません。
また、認定課税を避ける具体的な方法としては、『相当の地代』を設定する方法、もしくは『使用貸借契約にする(個人間)』、『土地の無償返還に関する届出書を提出する(一方が法人の場合)』方法があります。
相当の地代とは、通常の地代よりもずっと高い地代(更地価格の6%程度)で設定される地代をいいます。
地主様は、相当の地代を設定することで、「権利金がない代わりに、高めの地代に設定することでバランスを取っている」と判断され、認定課税を回避できます。ただし、あまりにも高額な地代となるので、慎重に検討をする必要があります。
次に、『使用貸借契約にする』とは、借地権の設定をせず、将来、無償で土地を返還する事を約束する契約にしてしまうということです。借地権がないということは、借地借家法で保護される強い権利ではないので、地主の変更が生じたり期間満了で土地を明け渡さないといけなかったりと、弱い立場になってしまいます。親が健在の場合は問題なくとも、相続が生じて兄弟などに土地の所有権が移った場合はトラブルに発展するケースもありますので、権利金の支払いを免れる為だけに、安易に選択をするべきではありません。
もうひとつ、『土地の無償返還の届出書を税務署に提出する』とは、将来無償で土地を返還することを約束した事実を、どちらか一方が法人である貸主と借主が連名で税務署に報告するのです。
つまり、借地契約を結ぶ際の権利金、土地の返還を受ける際の明け渡し料の両方を受け取らないことで、バランスが取れていると判断され、地主様は認定課税を免れることができるというわけです。
既存の借地権における権利金について
底地(貸宅地)で発生する権利金は、借地契約締結時、借地人様から地主様に対して支払われるものです。
では、既存の借地権における権利金とは、一体どういうものを指すのでしょうか?
既存の借地権は、数十年前に設定されたものが多く、中には「土地が空いているから、そこに建物を建てて住んでも良いよ」という風に、借地契約締結時に権利金のようなものの授受もなく、ただ地代だけを授受して現在に至るものも少なくありません。
そもそも、数十年以上前ともなると、まだ権利金に関する法律が存在していませんので、契約締結時に授受されなかったのは当然といえば当然です。
また、既存の借地権では、借地人様が借地権を売却することが、地主様から“土地を借りる権利”を売却することにあたります。
したがって、既存の借地権では、借地人様が借地権を売却する際の売買代金が、権利金と同じような性格を有しているといえるでしょう。
権利金と混同しやすい金銭について
先ほども少し触れたように、底地(貸宅地)では権利金だけではなく、他にもさまざまな金銭が発生します。
それらの金銭は、権利金とはまったく異なる性格を持っていたり、返還の約定があったりなかったりするため、これらの違いは明確にしておきましょう。
また、以下では底地(貸宅地)で発生する権利金以外(地代も除く)の金銭についてまとめておきますので、ぜひ参考にしてください。
敷金
土地の賃貸借契約成立から明け渡しにまで生じる損害を担保するものとして交付されるのが、この“敷金”です。
これは、必ずしも発生するものではありませんが、権利金とは違って返還義務があります。
保証金
“保証金”は、敷金と同じような性格で設定されることが多いです。
その名の通り、地主様が被る可能性のある損害を保証するための金銭ですね。
また、これにも敷金と同じように返還義務が存在します。
建設協力金
地主様が、借地人様から建物建設費の一部、または全額を預かり、建物を建築するための費用が”建設協力金“です。
法的には“貸金”と同じ種類に該当し、これにも返還義務がありますが、土地所有者が第三者に変更した場合でも、前所有者に返還義務があるとされる場合がありますので、売買時には注意が必要です。
まとめ
ここまで、借地人様、地主様ともに知っておくべき、底地(貸宅地)の権利金に関するルールを解説してきましたが、いかがでしたか?
土地の貸し借りに際して、権利金の授受を免れる目的だけで、使用貸借を選択したり、無償返還の届出書の提出という選択は行うべきではありません。権利金が発生しない=借地権が存在しないことですので、借主の権利は借地権と比べて弱い権利であることを理解しないといけません。将来のトラブル防止も含めて、十分に検討をして決定されて下さい。