底地(貸宅地)において、借地人様が自宅を増改築したり、借地権を第三者へ譲渡する場合、地主様から承諾を得る必要があります。
ただ、必ずしも地主様が許可してくれるとは限りません。
そんなときに利用できるのが、底地(貸宅地)における重要な制度である“借地非訟手続き”です。
今回は、この制度について詳しく解説したいと思います。

借地非訟の概要

底地(貸宅地)における重要な制度である“借地非訟”は、増改築や譲渡の承諾をしてくれない地主様に代わり、裁判所がそれを許可するという制度をいいます。
また、借地非訟には、以下の5つの種類があります。

①借地条件の変更
②増改築の許可
③借地権譲渡と転貸の許可
④競売による借地権譲受の許可
⑤地主の借地権譲受許可(介入権)

それぞれの借地非訟における裁判手続きについて

底地(貸宅地)における借地非訟は、当然種類によって対象になるケースや判断基準、承諾料の相場等が異なります。
では、ここからは、底地(貸宅地)において借地人様が行う借地非訟の手続きについて、それぞれ詳しく見てみましょう。

①建物条件の変更
建物条件変更の裁判は、借地人様が借地条件の変更を伴う建物の再築をするケースが対象になります。
また、条件の変更や許可をするかどうかの判断基準は、裁判所によって行われます。
具体的には、現時点の借地条件と異なる建物の所有を目的とすることが相当である場合に、借地人様の申し出が通ることとなります。
ちなみに、通常は承諾料の支払いも条件に含まれていて、この金額は更地価格の10%程度が相場となっています。

②増改築の許可
増改築許可の裁判は、増改築をしてはいけないという特約が借地契約に設けられている場合で、なおかつ借地人様が、再築にまで至らない工事内容を実施しようとするケースが対象になります。
判断基準は、土地の通常の利用上、相当といえる増改築を行うかどうかです。
また、この借地非訟でも、承諾料は基本的に発生します。
その価格相場は、更地価格の3%程度であり、前述の建物変更の変更とは異なるため、覚えておきましょう。

③借地権譲渡と転貸の許可
借地人様が借地上の自宅を第三者に譲渡しようとする場合で、地主様の承諾が得られないときに、裁判所に許可を求める制度です。裁判所が地主様を呼び出し事情を聞くなどし判断します。多くの場合は、許可される傾向にありますが、この場合でも承諾料が条件となるケースが多いです。譲渡承諾料の目安は借地権価格の10%相当額となります。

④競売による借地権譲受の許可
これは、競売や公売による借地権付き建物の落札者が、借地権譲渡の承諾を地主様よりもらえない場合に、裁判所に許可を求める制度です。

⑤地主の借地権譲受許可(介入権)
借地人様が借地権の譲渡を検討しているときに、地主様が第三者より優先して、その借地権を買い受けることを申し入れる制度です。

借地非訟の裁判手続きにおける共通規則

では、ここからは底地(貸宅地)における重要な制度、借地非訟の裁判手続きにおける共通規則を見ていきたいと思います。

①申し立てる場所について
借地非訟の裁判は、対象となる底地(貸宅地)を管轄する地方裁判所のみです。
当事者によって、簡易裁判所に変更することはできますが、場所自体を変えることは認められませんので、覚えておきましょう。

②調停前置について
裁判を申し立てる前に、まずは調停から始めなければいけないという制度を“調停前置(ちょうていぜんち)”といいます。
また、底地(貸宅地)で利用される借地非訟に関しては、調停前置のルールが存在しません。
ただ、底地(貸宅地)の賃料改定の裁判に関しては、調停前置が適用されるため、この違いは頭に入れておきましょう。

③手続法について
底地(貸宅地)で利用される借地非訟は、その名の通り“非訟”です。
非訟とは、実態的権利義務の存在を前提として、その具体的な内容を形成する作用を持つものであり、手続きには“非訟事件手続法”が適用されます。
具体的には、裁判所が職権で事実調査を行い、原則審理は非公開で行われるものとなります。
これは、一般的な訴訟にはない特徴であるため、これまで訴訟を経験したことがある方でも、新たに頭に入れておかなければいけない規則だといえます。

④審理の方法について
底地(貸宅地)の借地非訟における審理は、“審問期日”によって行われます。
これは、審問室という部屋で行われるものであり、借地人様からの申し立てを受けた裁判官は、当事者双方から言い分を聞きます。
つまり、地主様と借地人様、双方立ち会いのもとで行われるというわけですね。

⑤鑑定委員会について
底地(貸宅地)における借地非訟の裁判では、“鑑定委員会”の意見が大きな影響力を有しています。
これは、一般的に弁護士、不動産鑑定士、一級建築士の3名で構成されるものであり、裁判所が申し立てられた借地非訟の内容に関する判断を下すための組織です。
つまり、借地非訟における判断は、最終的には裁判所によって下されるものの、そのほとんどは鑑定委員会の意見そのものが採用されているということです。

⑥和解・調停について
底地(貸宅地)で利用される借地非訟では、最終的に和解が成立することが多いです。
これは、地主様と借地人様の間での話し合いがまとまるケースが多いというよりかは、鑑定委員会の意見の影響が大きいことが理由です。
また、借地非訟は規則上、調停に移行しても問題ありません。
しかし、移行することによって何か特別なメリットが生まれるわけではないため、このケースはほとんどありません。
ちなみに、裁判における和解と判決言渡の全体的な割合は、五分五分だと言われています。
このことからも、和解が成立する確率が高いことがわかりますね。

⑦即時抗告について
底地(貸宅地)における借地非訟では、裁判所が下した判断に対し、“即時抗告”をすることが認められています。
即時抗告とは、通常の抗告とは異なり、一定の不変期間内に提起することを必要とされる抗告をいい、特に迅速な確定が要求される決定について、法律が明示している場合にのみ認められる不服申立方法です。
借地非訟の場合、裁判所の判断(決定)から2週間以内であれば、即時抗告が可能です。
ちなみに、即時抗告がないまま決定に効力が生じると、その裁判は“確定”という状況になり、一度確定してしまうと、不服を申し立てることはできません。
1日でも過ぎるとアウトのため、不服がある場合は迅速に即時抗告を行いましょう。

まとめ

ここまで、底地(貸宅地)における重要な制度である“借地非訟”について細かく解説してきましたが、いかがでしたか?
底地(貸宅地)の借地人様という立場である以上、今後借地非訟を利用する可能性はゼロではありません。
また、地主様も場合によっては、借地非訟における介入権の行使を行うことがあるため、詳細は事前に把握しておくことをおすすめします。