底地・借地権

底地借地を相続した地主様が知っておくべき基礎知識

底地(貸宅地)の地主様は、土地を貸し出す身として、さまざまな知識を身に付けておかなければいけません。
特に、相続などで新たに地主様となった場合、今一度、底地(貸宅地)について勉強し直す必要があります。
今回は、そんな細かい知識を身に付けていただくべく、さまざまな底地(貸宅地)のルールについて解説します。

借地契約、地代支払いの名義人について

地主様となった場合、まずは、土地賃貸借契約書の内容と共に重要なのが過去の賃貸借の経緯などが分かる書面の確認です。特に更新料や各種承諾料の請求書で支払いの状況や算出計算式を確認します。何らかの取決めをした覚書や調停や裁判の書類等もあるかもしれません。どのように借地の関係が続いてきたのかを知っておく大切な資料となりますので、しっかりと確認しておきましょう。

また、地代の支払い状況や地代支払いの名義人も確認しておくべきです。
底地(貸宅地)では、借地契約の名義人と、地代支払いの名義人が異なるケースがあります。
これは、現在の借地人様が、前借地人様(親)から借地権を相続し、地代の支払いのみを現借地人様(子)の名義で行っているという場合に起こり得ることです。
借地権は相続可能なものですし、相続により名義人と振込み名義が違うというのであれば、地主様は何も心配する必要はありません。
ただ、相続とは別の理由だと問題になるケースもあります。
それは、借地人様が地主様に無断で親族や第三者に借地権を贈与や売却してしまったというケースです。
この場合、前借地人様は契約違反を犯していることになるため、大きな問題に発展する可能性があります。
したがって、借地契約と地代支払いの名義人が違うことに気づいた地主様は、とりあえず事実確認をするべく、借地人様に連絡し事実確認をしましょう。そうして、違反の事実が判明した場合は、至急、弊社アバンダンスのような専門家に相談してください。

地代滞納に伴う借地契約解除について

地主様は、借地人様の地代滞納に伴う借地契約解除についての知識も持っておきましょう。
借地契約の解除は、地主様と借地人様の信頼関係が壊れたと認められない場合、原則認められることはありません。
つまり、1ヶ月や2ヶ月程度、それも1回地代の支払いが滞った程度では、借地契約は解除できないのです。
では、地代支払いの督促、催告に対して、期限内ではなく期限後に支払われた場合でも、信頼関係が壊れたとは認められず、借地契約も解除できないのでしょうか?
これに関しては、地主様の行動がポイントとなります。
例えば、地主様が「相当の期間を決めて支払いの催告を行い、その期間内に借地人様からの支払いがなければ、借地契約を解除する」という旨を伝えておけば、上記の場合でも借地契約を解除できるかもしれません。
ただ、借地人様にその旨を伝える前に支払いがあった場合は、契約を解除できませんので、注意しましょう。
もっといえば、借地人様への伝え方としては、口頭等ではなく、内容証明でしっかりと意思表示をしておかなければいけません。
地代の支払い状況についても、毎月地主様の方でしっかりと確認し、早期に地代の未納に気付いて対応する事が重要となります。

契約更新について

土地賃貸借契約は通常20年間と長期の契約がほとんどです。そのため、契約期間が満了していたことを忘れていたという地主様もおられます。契約期間が満了し、借地人様が継続利用を希望した場合、さらに20年間延長することになります。この契約更新手続きには、更新料の支払いが伴います。更新料は借地権価格の5%~10%が相場と言われています。例えば、更地価格が1坪当たり100万円で借地権割合が60%のエリアで30坪の底地の場合、更新料の目安は90万円から180万円となります。この更新料の授受と引き換えに、新しい土地賃貸借契約書を作成し取り交わします。この更新料については、借地人さんとの間で価格交渉があったり、場合によっては更新料を支払わないということになるかもしれません。更新料の支払いはこれまでの土地賃貸借契約書に更新時に更新料を支払って更新するという内容の文言と一緒に、具体的な更新料の金額や計算方法が明記されていなければ、更新料の支払いは義務とならないという見方が強いです。更新する契約書にもこの更新料の文言は出来る限り明確に記載しておいた方が良いでしょう。

増改築や譲渡の承諾について

底地(貸宅地)においては、借地人様から諸々の許可や承諾を求められることがあります。代表的なものは増改築や譲渡の承諾となります。増改築とは建て替えなどを言いますが、借地の場合、借地人様はご自宅とは言え、自由に自宅の建て替えをすることが出来ません。必ず事前に地主様の承諾が必要となります。この時、地主様は借地人様より増改築承諾料を受け取ることになります。この時の承諾料は、更地価格の3%~5%となります。仮に、更地価格が1坪当たり100万円のエリアで30坪の底地だった場合、90万円から150万円が承諾料となります。しかし、建替えが地主様にとって都合が悪いことがあるなどの場合には、増改築の承諾をしないという選択肢も取ることが出来ます。この場合、借地人様はとても困ったことになり、場合によっては、借地人様が裁判所に増改築の許可を求めることになることもあります。申立てを受けた裁判所は、地主様を呼び出し事情を聞くなどして、借地人様の増改築が妥当かどうかの判断を下さいます。多くの場合は許可される傾向にあるようです。
また、譲渡承諾とは、借地人様が自宅を第三者に売却する場合にする地主様の承諾のことをいいます。この譲渡承諾の際も承諾料の支払いが行われます。承諾料の相場は、借地権価格の10%が目安となります。更地価格が1坪当たり100万円で借地権割合が60%のエリアで30坪の底地の場合、承諾料の目安は180万円となります。この承諾がなければ、借地人様は自宅の売却は出来ません。もちろん、この場合でも、地主様の判断で承諾するもしないも自由に決定することが出来ます。また、増改築承諾と同じように、借地人様は裁判所に許可を求めることが出来ます。
このような、底地(貸宅地)を相続した地主様は、様々な借地人様の申し出等に対応することになります。承諾料の相場については最低限知っておいて頂きたいです。

建物買取請求権について

土地賃貸借契約の更新を行わない場合の建物買取請求権に関する基礎知識も知っておきましょう。
借地権存続期間満了時に、借地人様が建てた建物を地主様に買い取ってもらうよう請求できる権利が“建物買取請求権”です。この借地人様からの建物の買取請求について、地主様は拒否をすることが出来ませんので、必ず買い取らないといけません。
では、地主様が地代の滞納を理由に借地契約を解除した後、借地人様から建物の買取請求をされた場合、応じなければいけないのでしょうか?
答えはNOです。
地主様が建物買取に応じなければいけないのは、あくまで借地人様が違反なく契約を満了したときのみであるため、上記のようなケースでは応じる必要がありません。
しかし、無断譲渡で契約解除をした場合の、譲受人からは建物買取請求権を行使される可能性があります。この時の建物の価格は時価とされていますが、場所的利益といって更地価格の20%相当を加算される場合もあるので、案外高額になる可能性もありますので、地主様は準備が必要となります。

その他、地主様の義務について

土地賃貸借契約においては、地主様の貸し出し部分は土地のみで、建物は借地人様がご自身で建築したものです。
したがって、土地部分で何か問題が発生した場合は、地主様が補修や損害賠償責任を負わなければいけません。
例えば、崖崩れ、地盤沈下などが発生し、借地人様が満足に土地を使えないという状況になった場合、地主様には修繕の義務が発生します。
そのままの状態で、借地人様に土地を貸し出し続けるわけにはいきませんからね。
また、もし借地人様が費用を立て替え、崖崩れ等の問題を解決した場合、地主様は後々その費用を負担しなければいけません。
なお、がけ崩れや地盤沈下の原因が借地人様にあった場合は別です。例えば、借地人様宅の水道管や下水管の漏水が原因で陥没やがけ崩れを引き起こすというケースもあります。この場合は借地人様の責任とされる可能性が高いと言えます。
では、地震などの自然災害はどうなのでしょうか?修復が可能な場合、地主様の費用負担で陥没や地割れを修復させる義務が生じます。
自然災害という不可抗力とは言え、地主様は賃貸人としての修復義務を負わないといけません。
さらに、地割れなどで借地の一部が利用不可となった場合、その面積割合に応じて地代の減額を請求される可能性もあります。
このルールは、1つの知識として覚えておきましょう。

まとめ

新しく底地(貸宅地)の地主様となった方は、前述のような細かい知識を少しずつ身に付け、トラブルに対応できるように準備しておきましょう。
知識が不足していると、借地人様を不安にさせてしまったり、不信感を持たれる事にもなります。無用なトラブルを防止し、借地人様と良好な賃貸借の関係を維持するためにも、少しづつ理解を深めて頂ければ幸いです。

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