地代

【地主様向け】地代の請求をする際の流れを知っておこう

底地(貸宅地)におけるトラブルの1つに、借地人様による地代の滞納トラブルがあります。
もちろん、すべての借地人様が地代を滞納するわけではありませんが、地主様は有事に備えて滞納されている地代請求の流れを知っておきましょう。
なるべく細かく解説しますので、ぜひ参考にしてください。

①滞納の情報を集める

地主様は、まず滞納地代の請求をする前に、滞納に関する情報を集めましょう。
具体的には、いつからいつまでどのくらいの期間滞納しているのかなどの情報ですね。
また、今後地主様と借地人様との間で裁判が起こることも考えられるため、この時点で以下の資料は集めておきましょう。

 地代台帳
 地代振込口座
 借地人様に交付した領収書の控え

これらの資料は、地代の受領に関する資料として後々役立ちますし、正しい滞納金額、期間を確定させるためには必要不可欠なものです。
したがって、今後地代の請求をするかもしれないことを考えると、地主様はどれだけ信頼できる借地人様が相手でも、必ず上記の資料を大切に保管しておかなければいけません。

②地代請求権の有無を確認する

地代を請求したい地主様は、滞納に関する情報を集めた後、“地代請求権”の有無を確認しましょう。
借地人様が地代を滞納しているのが、数ヶ月程度の短い期間であれば大丈夫ですが、数年間もの間滞納されている場合、地代請求権の有無は必ず確認しなければいけません。
地代は通常、月単位あるいは年単位で支払い時期が決まっているため、請求権の消滅時効期間は5年となります。
したがって、支払い期限から5年以上経っている滞納分に関して、地主様は請求することができませんので、この点は必ず覚えておきましょう。
また、どの時点が消滅時効の起算点となるのかについてですが、これは“権利行使が可能なとき”とされています。
借地契約でいうと、“あらかじめ定められた支払い時期”ですね。
例えば、2020年3月の地代から、借地人様が滞納しているケースで考えてみましょう。
このとき、当月の地代の支払い期日を前月末までとする契約内容になっていれば、2020年3月分の地代請求権における消滅時効は、2020年2月29日が起算点となります。

③地代を請求する

ここまで準備が整ったら、いよいよ地代の請求に着手します。
地主様は、このとき2つの選択肢の中から、自身が今後借地人様とどのように接していくのかを決めることになります。
1つ目は、滞納分を支払ってもらった後、そのまま契約を続けていくという選択肢です。
そして2つ目は、滞納分の請求と共に借地契約を解除するという選択肢です。
これらのうち、どちらを選択するかはもちろん地主様の自由ですが、いずれにせよ滞納分はしっかり借地人様に支払ってもらわなければいけません。
また、具体的な地代の請求方法ですが、これには主に“支払督促”と“少額訴訟”が挙げられます。
支払督促とは、金銭等の一定数量の給付を目的とする請求について、簡易裁判所の書記官が行う処分をいいます。
請求内容に争いはないものの、その相手方(借地人様)が支払いをしないような場合に、迅速かつ簡易に債務名義を取得することができます。
地主様は、簡易裁判所に対して申し立てをすることで、この支払督促が行えます。
一方、少額訴訟とは、訴額が60万円以下の金銭の支払いの請求を目的とした紛争について、原則として1回の期日で審理を終了し、ただちに判決を言い渡すことを予定した訴訟手続きをいいます。
60万円までの請求しかできないこと、同じ簡易裁判所において1年に10回までしか利用できないことなど、いくつかの制約はあるものの、1回の審理での終結を予定していることから、通常の訴訟よりも地主様本人が対応しやすい手続きと言えるでしょう。
逆に、弁護費用等とのコストパフォーマンスの観点から、弁護士が代理をしてまで利用することはない手続きとも言えますね。
請求に借地人様が素直に応じ、なおかつ滞納分を全額支払ってもらえれば、地代の請求は完了です。
ただ、これはあくまで、請求後も借地人様と契約を続ける場合です。
契約を解除する場合はこの限りではありません。

地代を請求後、契約を解除したい場合は?

地代の滞納分を請求するだけではなく、「これ以上借地契約を続けたくない」という場合は、借地契約の解除に着手します。
具体的な流れは以下の通りです。

①契約解除が可能かどうか確認する
契約解除に着手する場合、まずは解除が可能かどうかをチェックします。
詳しくいうと、借地契約における“解除条項”において定められた滞納期間を超える滞納になっているかどうかのチェックですね。
例えば、解除が認められる滞納期間が6か月となっていて、借地人様が地代を6か月以上滞納している場合であれば、地主様は契約解除の意思表示ができます。
ただ、原則解除条項で定められた期間よりも短い期間での滞納であれば、意思表示はできません。

②信頼関係を壊すような事情がないかどうか確認する
先ほど、借地契約における“解除条項”において定められた滞納期間を超える滞納になっていれば、地主様は契約解除の意思表示ができるという話をしました。
ただ、地主様が「契約を解除しますよ」という意思表示をしたとしても、双方の信頼関係を壊すような事情がなければ、解除は認められません。
また、信頼関係を壊すような事情があったかに関しては、借地人様がどのような経緯で滞納したのか、どれくらいの金額・期間滞納しているのか、地主様の催促や借地人様の対応や状況はどうなのかなど、あらゆる要素から判断されます。
したがって、どのようなケースを“信頼関係を壊すような事情があった”とするのかについては、非常に判断が難しいと言えます。
地代の滞納の場合、一般的には長く滞納されているほど、信頼関係が壊れたという事実が認められやすくなります。
逆に、借地人様が初めて滞納した場合、あるいは数日程度滞納したくらいでは、なかなか認められないでしょう。

③無催告解除特約があるかどうか確認する
地代請求後、契約を解除しようと考える地主様は、“無催告解除特約”が契約書に含まれているかどうかも、忘れずにチェックしましょう。
これは、文字通り催告をすることなく、契約解除が可能になる条項をいいます。
例えば、地主様と借地人様が結ぶ借地契約書において、“地代の滞納が3ヶ月ある場合、無催告で契約を解除できる”というような記載があれば、これが無催告解除特約にあたります。
借地人様の立場が強く守られる借地契約において、この特約における効力を疑問視する声は多いですが、過去には無催告解除特約に基づいた契約解除が認められた判例もあります。
実際、これによって解除するのは、現行の借地借家法においては容易ではありませんが、地主様は確認だけでも行っておきましょう。

まとめ

ここまで、地主様における地代請求の流れを中心に解説してきましたが、いかがでしたか?
少し内容を理解するのが難しい部分もありますが、いざ借地人様に地代の滞納が発生したおき、これを知っているのと知らないのでは、対応の早さにかなり違いが出てきます。
また、弁護士などの力を借りるシーンが訪れる可能性も考えると、地代請求や契約解除には費用もかかることを視野に入れておきましょう。従いまして、地代の滞納に気付いたら、すぐに借地人様に連絡を取って事情を聞きましょう。放っておくと、弁護士や裁判所に頼らざるを得なくなります。出来る限り、火は小さいうちに消しましょう!

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