地代・家賃収入を得た方の確定申告について徹底解説します
地主様や賃貸物件のオーナーは、地代や家賃収入を得ることができます。
ただ、これらの不動産所得を得たとき、場合によっては確定申告をしなければいけません。
ここからは、地代や家賃収入を得た方が確定申告をしなければいけない場合や、確定申告におけるポイントなどについて詳しく解説したいと思います。
確定申告をしなければいけない場合とは?
地主様や賃貸物件のオーナーは、たとえ会社員などの給与取得者であっても、不動産所得を得ている以上確定申告をしなければいけません。
また、会社では年末調整を行ってくれますが、不動産所得に関してはノータッチです。
したがって、「会社員だから会社がやってくれるだろう」という考えは間違いです。
ただ、地代や家賃収入から経費、控除額を引いた金額が20万円以下の場合、確定申告をする必要はありません。
つまり、地代や家賃収入があまり手元に残らない方は、確定申告をしなくてもいいということですね。
これは、少額不追及の考え方があるため、または事務処理簡略化の目的があるためです。
損失が出ても確定申告しなければいけないのか?
先ほど、諸費用を差し引いた地代・家賃収入が20万円以下の場合、確定申告はしなくてもいいと解説しましたね。
では、規模の大きい修繕が行われることなどによって、地代や家賃収入に損失が発生した場合はどうすればいいのでしょうか?
この場合、必ず確定申告をしなければいけないわけではありませんが、なるべく申告しておくことをおすすめします。
なぜなら、地主様や賃貸物件のオーナーが会社員などの給与取得者である場合、申告することで損失をゼロにできるためです。
また、これによって給与所得に対する所得税が返ってきたり、住民税が節約できたりもします。
義務があるのに申告しなかったらどうなる?
不動産所得から経費、控除額を引いた金額が20万円を超えているにも関わらず、確定申告をしなかった場合、地主様や賃貸物件のオーナーはどうなるのでしょうか?
結論から言うと、以下のような追徴課税が課されます。
① 延滞税
延滞日数、納税額、年度によって税率が変わる税金です。
また、期日通り申告しても、修正申告が必要になった場合は延滞税がかかる可能性があります。
② 過少申告加算税
納めなければいけない税金が少なかった場合で、期日までに申告した際、新たな税金とは別に加算される税金です。
③ 無申告加算税
期日までに申告を行わなかった場合に加算される税金です。
④ 重加算税
申告額が少なかったり、申告が遅れたりしたとき、それが悪質だと判断された場合に加算される税金です。
つまり、意図的な隠蔽などが認められた場合に加算されるものであり、ペナルティ要素が非常に高いものとなっています。
確定申告のポイントについて
地代や家賃収入として扱われるのは、単純に地主様や賃貸物件のオーナーが得たこれらの収入ではありません。
地代、家賃収入の総収入額から経費、控除額を引いた金額が、地代または家賃収入の金額となります。
また、確定申告ではこの金額を計上しますが、借地人様や入居者による地代・家賃の未払い分がある場合は、少しややこしくなるため注意が必要です。
なぜなら、確定申告時に計上する地代・家賃収入は、契約上決まっている支払日で計上する必要があるためです。
つまり、借地人様や入居者からまだ受け取っていない金額があったとしても、それを含めた上で計上しなければいけないケースが出てくるわけですね。
したがって、未払い分があるとわかっている時点で、できるだけ借地人様や入居者に早く支払ってもらうように工夫しましょう。
経費にはどんなものが該当する?
確定申告で計上されるのは、地代・家賃収入の総収入額から経費が引かれた金額ですが、この“経費”には一体どんなものが該当するのでしょうか?
実際に見てみましょう。
租税公課(不動産所得税、登録免許税、固定資産税、印紙税、事業税等)
損害保険料
借入金の利子
減価償却費
修繕費
管理費
宣伝広告費
立退料 など
ちなみに、以下のような費用は経費として認められないため、こちらもセットで覚えておきましょう。
生計を一にする配偶者、その他の親族に支払う地代・家賃収入・借入金の支払い利息
所得税および復興特別所得税
利子税
延滞税
各種加算税
住民税
罰金・科料・過料
資本的支出(減価償却相当額は経費扱い可能) など
確定申告には何が必要なのか?
不動産所得を得た地主様・賃貸物件のオーナーが確定申告をする際には、以下のものを用意しなければいけません。
① 税務署で入手するもの
確定申告書B
青色申告決算書(不動産所得用)
② 会社から入手するもの
源泉徴収票
③ 不動産会社から入手するもの
不動産売買契約書
売渡清算書
譲渡対価証明書
家賃送金明細書
賃貸借契約書
④ 借入先(銀行など)から入手するもの
借入金返済予定表
⑤ 不動産の修繕を依頼した業者から入手するもの
見積書
領収書
請求書
⑥ 送付で入手するもの
固定資産税通知書
火災保険等の証券
確定申告をすると口で言うのは簡単ですが、いざ実践しようとすると、これだけ多くのものを用意しなければいけません。
また、あらゆる場所から入手しなければいけないため、できるだけ早めに準備しておくことをおすすめします。
また、経費の計上も考えている方は、上記と併せて経費関連の書類も集めなければいけないため、さらに大変になります。
したがって、直前でバタバタしないように、日ごろから確定申告を見越して書類の管理・整理をしておくことが重要でしょう。
確定申告の流れについて
地主様、賃貸物件のオーナーが行う確定申告の大まかな流れは以下の通りです。
① 必要なものを揃える
1月1日~12月31日の所得を計算するための書類を揃えます。
② 申告書を作成する
書類の数字を見ながら、確定申告書を作成します。
手書きでも構いませんが、国税庁のサイトからも書類を作成できるため、そちらを活用するのも良いでしょう。
また、書き方や入力方法がわからない場合は、確定申告期間中に税務署などで質問することもできます。
③ 申告書を提出する
申告書を税務署に直接持参する、もしくは郵送します。
ICカードリーダーとマイナンバーカードがあれば、インターネットでの申告も可能です。
ちなみに、税務署に直接持参するか郵送するかで迷っている方は、なるべく直接持参するようにしましょう。
なぜなら、郵送の場合は職員に内容をチェックしてもらうことができないためです。
確定申告後の納税方法について
確定申告書を提出した後は、振替納付、現金納付、e-Taxのいずれかで納税します。
振替納付は、口座振替で納付する方法で、申告期限までに申告書を提出した方が利用できます。
また、現金納付は、現金に納付書を添え、金融機関又は住所地等の所轄税務署の納税窓口で納税します。
そして、e-Taxは、インターネットを利用して納付するシステムで、申告書の提出後の納付書送付や、納税通知等による納税の通知がありません。
確定申告の期間はいつ?
確定申告書の提出期間は、当該年度が終了した翌年の2月16日~3月15日です。
ただ、期日が土日である場合は、翌開庁日まで期間が延期されます。
この期間を過ぎてしまうと、先ほども解説した追徴課税のペナルティが発生してしまうため、注意しましょう。
また、もし前年度以前の所得に申告漏れがあったら、過去5年までさかのぼって“過年度申請”を行い、7年分ほど前までは追徴課税が課されます。
そうなると、かなり大きな経済的ダメージを負ってしまうことが予想されるため、気を付けなければいけません。
初めての確定申告には確定申告ソフトの利用がおすすめ
確定申告は地主様や賃貸物件のオーナーにとって、1年に1度必ず行わなければならない重要な手続きです。
しかし、確定申告を行うにはさまざまな計算をしたり、書類を作成したりしなければならないため、慣れていないとハードルが高いと感じる方もいるかもしれません。
このような方でも、確定申告を効率良く進めるポイントとしては、確定申告ソフトを活用することが挙げられます。
確定申告ソフトなら、青色申告に必要な複式簿記での帳簿つけもスムースで、各種控除の計算も簡単にできます。
こちらを上手に利用してミスや漏れを防ぎ、手間なく確定申告を行いましょう。
経費のクレジットカード払いについて
先ほど、地主様や賃貸物件のオーナーは、特定の費用について確定申告の際、経費として計上できるという話をしました。
このとき、経費を支払う方法としては、クレジットカード払いが便利です。
クレジットカード払いにすることで、履歴の管理がグッと楽になります。
クレジットカードの普及により、今ではほとんどの経費をクレジットカードで支払えます。
今までバラバラに支払っていた経費をクレジットカードでまとめると、経費を一元的に管理できるので、非常に整理しやすくなります。
また、すべての支払い日がクレジットカードの引き落とし日にまとめられるため、資金調達を計画的に進めることができるなど、現金払いよりもメリットが多いです。
さらに、先ほどの確定申告ソフトと連携すると、クレジットカードの履歴をそのまま取り込むことも可能です。
税理士に依頼するのも一つの手
地主様や賃貸物件のオーナーの確定申告については、その年にさまざまなことが重なり、どのように手をつけて良いのかわからない場合や、過去に申告すべきはずだったものが、後になってから見つかった場合など、さまざまな事情があります。
そのような場合に、相談や税務代行を依頼できるのが税理士です。
税理士は、税理士法に規定する税務の専門家です。
納税者と税務署のどちらに偏ることなく、独立した公正な立場で税法を解釈、適用することが使命とされています。
そして、税理士法第52条では、税理士又は税理士法人でない者は、税理士業務を行ってはならない旨の記載があります。
したがって、税理士業務は、税理士(税理士法人)のみが行うことを許された独占業務なのです。
ちなみに、税理士への依頼事項としては、確定申告に限らず、税金に関する相談を含めた税務全般について依頼対象となります。
税理士に確定申告を依頼するメリット
言うまでもありませんが、税理士は経理のプロフェッショナルです。
そのため、ミスなく確定申告書の作成を行うことができます。
その上、税理士であれば、正確に記帳し書類作成をするのはもちろん、それらのデータに基づいて、経営分析についてアドバイスをもらうこともできます。
また、税理士が関わって適切な節税対策を行うと、支払うべき税額が変わり、その分利益を確保することができます。
節税対策というと、「納税額を減らすためにたくさん経費を使おう」と思う人もいますが、それは全く意味がありません。
意味のない経費を使っても単に無駄遣いをしているに過ぎず、かえって資金繰りが悪化してしまうリスクが高いです。
早めに税理士に相談すれば、適切なタイミングで節税方法、タイミングについて、常にベストの内容を検討してもらい、合法的な方法で最大限の節税を実現することができます。
ちなみに、税理士に依頼することで、何度も税務署に足を運んだり、二度手間になったりしないため、時間を効率的に使うことができます。
税理士に確定申告を依頼するデメリット
確定申告を税理士に依頼するもっとも大きなデメリットは、やはり費用がかかるという点です。
確定申告を地主様や賃貸物件のオーナーが自身で行えば、当然ほとんど費用はかかりません。
しかし、税理士に業務の一部もしくは全部を依頼すれば、報酬を支払う必要が生じます。
もちろん、普段から顧問契約を結んでいたり、何かの業務を委託したりしているのであれば、毎月発生する報酬もあります。
また、税理士に確定申告をすべて任せてしまうと、地主様や賃貸物件のオーナー自身に経理や税務の知識が身につきません。
経理や税務の知識を持っていると、節税対策が行えたり利用できる、補助金や助成金を十分活用できたりします。
賃貸業務の開始以降、長年確定申告を税理士に任せきりにしてしまうと、貸主として成長する機会を失ってしまうかもしれません。
さらに、賃貸業務にかかっているお金の流れを把握するのが難しくなるというのもデメリットといえます。
まとめ
今回は、地代を得た地主様、家賃収入を得た賃貸物件のオーナーにおける確定申告について詳しく解説しましたが、いかがでしたか?
不動産所得の金額によっては、確定申告をしなくてもいい場合がありますが、損失が出た場合は基本的に申告するべきだと覚えておきましょう。
また、どんな理由があっても、申告義務がある方は期限を過ぎてはいけません。