“被災借地借家法”はどのような法律なのかを知っておこう
皆さんは、“被災借地借家法”という法律をご存じでしょうか?
被災借地借家法は、被災した借地や借家における特別措置が定められた法律です。
自身が使用している借地や借家が、いつ天災の被害に遭うかはわかりません。
有事に備えるという意味でも、ぜひ被災借地借家法の概要を理解しておきましょう。
被災借地借家法が誕生した理由について
被災借地借家法は、正式名称を“大規模な災害の被災地における借地借家に関する特別措置法”と言います。
この法律が定められる前、被災した借地や借家における法律として基準にされてきたのは、“罹災都市借地借家臨時処理法”という法律でした。
ただこの法律が定められたのは今から70年以上も前の昭和21年であり、定められてから内容が改正されることもなかったため、現代には適していない法律だと指摘されました。
そこで、現代に適している新しい法律を定めようという目的で平成25年に制定されたのが、被災借地借家法です。
被災借地借家法が定められると同時に、これまで基準とされてきた罹災都市借地借家臨時処理法は廃止されています。
被災借地借家法で定められている内容は?
冒頭でも少し触れたように、被災借地借家法では、被災した借地や借家におけるさまざまな特別措置が定められています。
まず1つ目は、借地人の保護が目的の特別措置です。
被災したことにより、借地にある建物が滅失してしまった場合、借地権者はその借地の契約を解除することが認められます。
また一定期間の掲示がなくとも、借地権の対抗力が認められます。
借地権の売却や転貸では、地主の承諾に代わって裁判所で許可されるという措置も定められています。
そして2つ目に、暫定的な借地の利用が可能になる特別措置も定められています。
仮設住宅などの用地に土地を利用する場合、被災地のニーズに応えるため、短期の借地権を設定できることが認められています。
また3つ目は、借家人の保護が目的の特別措置です。
被災したことによって滅失した建物の家主が、建物を建て直して賃貸するケースでは、従前の借地人にその旨が通知されるようになっています。
被災借地借家法が適用されるケースって?
被災借地借家法は、具体的にどんなケースで適用されるのでしょうか?
被災借地借家法は、大きな火災や震災、水害などの災害であり、被災地において借地人の保護や借地借家に関する配慮が著しく認められる事態が発生した場合、適用されます。
簡単に言うと、甚大な災害の被害を受けた被災地で適用されるということです。
ちなみに、借地人の保護や借地借家に関する配慮が著しく認められる災害のことを“特定大規模災害”と言います。
ただ被災借地借家法が適用されるには、特定大規模災害に対して適用すべき措置、適用する地区を法令で指定しなくてはいけません。
例えば大規模な災害で借地上の建物が滅失し、もし被災借地借家法が適用される場合であれば、借地人は適用された日から1年間、地主に借地契約の解除を申し入れることができます。
そして申し入れた日から3ヶ月後に、借地権は消滅します。
具体的な解約申し入れの方法は、被災借地借家法によって定義されていませんが、後々のトラブルを避けるためには、書面で解約を申し入れることが適切でしょう。
ただ申し入れから借地権が消滅するまでの3ヶ月間は、借地人には地主に対して地代を支払う義務が残っています。
したがって、借地人の負担が即時に解消されるというわけではありません。
まとめ
日本全国で大規模な災害が多発している昨今、借地・借家を利用している方々にとって、被災借地借家法は必ず知っておくべき法律だと言えるでしょう。
また土地を貸し出している地主にとっても、内容を把握して対応できるようにシミュレーションしておくべき法律だと言えます。
被災借地借家法は、これからもっと世間に認知されていくことになるでしょう。