借地にある空き家はどうやって処分すればいいのか?
借地に建っている建物には、なんらかの理由で空き家になってしまっているものもあります。
もし借地権者がその空き家を使用しないという場合、どのように処分すればいいのでしょうか?
借地にある空き家の処分方法と、借地にある空き家を処分しなければいけない状況について解説します。
借地の空き家を処分しなければいけない状況って?
借地にある空き家を処分しなければいけない状況には、以下のようなケースが考えられます。
例えば、借地にある建物に住んでいた親がなくなり、その子どもが建物を相続したとします。
この時点で、借地権も親から子に移ることになります。
ただその借地にある建物は、親が亡くなってから長い期間空き家の状態であり、借地契約書も残っていない状況です。
また借地権者である子どもは別の場所に住居を持っており、今後その空き家に居住する予定は一切ありません。
ただ借地権を相続している子どもは、空き家を利用しなくても地代を支払う義務があるため、空き家を保有し続ける限り損をします。
もし空き家を何らかの形で使用する場合でも、老朽化がひどいため莫大な修繕費がかかります。
これだけの状況が揃ってしまうと、いよいよ借地にある空き家を処分せざるを得ないと言えます。
近隣住民に迷惑をかけている場合も早急な処分が必要
借地の空き家を放置していると、庭の草木が生え放題になって景観を損ねたり、倒壊のリスクが高まり、近隣住民に危険が及んだりすることがあります。
その他、一切管理されていない空き家では、浮浪者のたまり場になるリスク、放火されるリスクなどもあります。
また、近隣住民に迷惑をかけてしまうと、損害賠償請求をされてしまうことが考えられます。
もちろん、損害賠償請求で済めばまだ良いですが、万が一倒壊などで人を巻き込むようなトラブルが発生した場合、取り返しがつきません。
大きなトラブルを避けるためにも、近隣住民への迷惑がかかるかもしれない程度の段階で、早めに処分することが大切です。
空き家の管理が難しい場合も処分を検討すべき
借地にある空き家の状態が悪くない場合であっても、親からその空き家を相続したことなどにより、管理が難しい場合には、処分を検討すべきです。
例えば、空き家を相続した方の住居と、親から相続した借地にある空き家との距離が遠い場合、管理のために訪れるだけで大きな負担になりますし、飛行機や新幹線での移動になれば、コストもかさみます。
また、空き家の管理自体も、非常にやることが多いです。
具体的には、定期的に以下のようなことを行わなければいけません。
・通風
・通水
・清掃(室外を含む)
・目視チェック など
ちなみに、これらの管理を行うのを負担に感じた方は、空き家管理サービスを利用することもあるかと思いますが、こちらの費用も決して馬鹿にはなりません。
費用は会社やプランによってまちまちですが、概ね月々5,000~10,000円程度です。
もっと言えば、これらの空き家管理サービスを使用したとしても、空き家の老朽化を完全に止めることはできません。
空き家管理サービスは、確かに定期的に借地の空き家を管理してくれますが、その頻度はせいぜい月1回程度です。
頻度が低いことから、いくら管理しているとはいえ、それほど絶大な効果は期待できません。
今後利用する予定がないのであれば、早めに処分する方が負担は軽くなります。
借地の空き家を処分する前に・・・
借地の空き家を処分する前に、借地契約書の内容をチェックしましょう。
借地契約の期間内であれば、その期間が満了するまで地代を支払わなければいけません。
また先ほどの例のように、借地にある空き家がひどく老朽化しているような状況であれば、借地契約書が残存していないこともよくあります。
この場合は、借地権者が自ら地主に連絡を取り、契約内容を確認しなければいけません。
契約内容を確認し、借地にある空き家を処分してもいい状況だということを把握して、初めて空き家を処分するための手続きに移ることができます。
例え自身が使用していない建物であっても、借地にある以上、無断で売却・修繕などはできないのです。
借地の空き家はどうやって処分する?
借地権者は、建物が空き家であっても管理しなければいけない義務があり、周辺の住民や地主に迷惑をかける行為も禁じられています。
また行政指導を受けるような管理体制も許されていないため、利用していない空き家は速やかに処分すべきなのです。
借地の空き家の処分として考えられるのは、“建物の売却”と“借地契約の解除”です。
建物の売却では、買い手に借地にある空き家と借地権を同時に売却することになります。
ただ老朽化している空き家はなかなか買い手が見つからないケースも多いため、すぐに建物と借地権を売却するのは簡単ではありません。
もし買い手が見つからない場合は、空き家を売却するのを諦めて“借地契約の解除”をするのが賢明でしょう。
地主との借地契約を解除(合意解除)する場合、原則借地権者は建物を取り壊し、借地を返還することになります。
空き家を取り壊す際の費用は借地権者が負担しなければいけないので、その費用は最初から計算に入れておかなければいけません。
ただこの際に地主に交渉すれば、借地にある空き家を買い取ってもらえる可能性もあります。
借地にある空き家を地主が買い取ってくれれば、借地権者は利益を得た上で空き家を管理する必要がなくなります。
“建物の売却”と“借地契約の解除”、どちらを選択するにしても、無駄に地代を支払い続けるのと比べれば効率的だと言えるでしょう。
借地の空き家を売却する際のアピールポイント
借地の空き家は、第三者に売り出してもなかなか買い手が付かないケースが多いです。
そのため、どうしても売却したいというのであれば、メリットをしっかりと買主伝えることが大切です。
まず、借地の空き家は購入費用が割安です。
一般的には、所有権付き建物の70~80%程度が相場になるため、第三者に売却する際は、こちらの点をしっかりとアピールすべきです。
また、借地の空き家は、固定資産税や都市計画税といった土地に関する税金を支払う必要がありません。
借地の所有者は、あくまで借地権者に土地を貸し出す地主であり、土地に関する納税義務は地主にあります。
こちらの点についても、買主には必ず伝えましょう。
ちなみに、借地は法律によって手厚く保護されています。
こちらは、借地権者が建物を所有する目的で土地を借りた場合、旧借地法や借地借家法により、一定に権利が守られるというものです。
定期借地権を覗き、地主の都合で借地権者に対して立ち退きを求める場合は、正当事由が必要になるため、容易に認められることはありません。
借地は権利関係がややこしいというイメージを持っている買主には、このようなメリットも伝えるべきです。
賃貸物件として貸し出すという選択肢もある
借地にある空き家は、売却や地主による買い取りのように、処分するだけでなく、賃貸物件として活用することも可能です。
売却とは違い、空き家を賃貸物件として貸し出す場合は、地主の許可を取る必要がありません。
借地権者の判断で行うことができます。
ただし、こちらの方法については、空き家が貸し出せる状態であることが前提です。
人が住めるような状態ではない場合、選択するのは難しいでしょう。
例えば、親から相続した建物をそのまま数年間放置していた場合などは、老朽化が進み、そのままでは賃貸物件として貸し出すのが難しいケースが多いです。
また、リフォームを行ってから貸し出すという方法もありますが、費用が高額になる場合、借主が見つからなかったときなどのリスクは高くなりますし、大規模な改築になると、地主の許可が必要になります。
もちろん、人里離れた山奥など、入居者を募集しても見つかる可能性が極めて低い立地である場合、賃貸物件としては成立しない可能性が高いです。
使用する予定があるなら建て替えも検討すべき
今後借地の空き家を使用する予定がある場合で、著しく建物の老朽化が見られるのであれば、建て替えも検討すべきです。
ただし、借地権者が借地の空き家の建て替えを行う場合は、地主の承諾が必要です。
また、承諾を得る際には、建て替え承諾料という費用が発生します。
建て替え承諾料については、一般的に更地価格の3~5%程度が慣習になっています。
こちらの建て替え承諾を行わずに建て替えてしまうと、借地契約を解除されてしまうなど、トラブルに発展しかねないため、注意してください。
ちなみに、旧借地法においては、非堅固な建物から堅固な建物に建て替えてしまうと、借地契約の条件変更に該当します。
まとめ
借地にある空き家を処分するには、さまざま手順が必要です。
管理が面倒だと感じた場合、または借地にある空き家を利用する予定がない場合には、速やかに処分することをおすすめします。
利用していない建物、土地の地代を支払い続けるほど無駄なことはありません。
またこれから親の借地権、建物を相続する可能性がある方は、今回紹介した処分の手順を覚えておきましょう。