供託で時効は適用されるのか解説します。
馴染みのない人にとって難しいと思われる供託と時効の概念、みなさんはご存知でしょうか?
法律が関与している分野は、内容が難しく、自分で勉強するのは大変ですよね。
まずは、基本的な概念だけでも頭に入れておきましょうね。
この記事では、受領拒否の際に時効消滅が中断されるかについても、合わせて考察していきます。
供託と時効についての基本事項
供託は、供託所に金銭や有価証券を委ね、供託所がその財産をある人に受け取らせることにより、法律上の目的を達成させようとする制度のことです。
注意点として、供託は法令で義務づけられた場合か、認可を受けた場合でのみ行うことが出来ます。
好き勝手に供託を選択することは出来ないのですね。
供託の機能的な分類は、弁済供託・担保保証供託・執行供託・保管供託・没取供託という五種類に分けられます。
それぞれの供託はその法律上の目的が異なるわけです。
次の章で、弁済供託の一例について後述します。
さて、次に、時効に関するお話をしましょう。
時効とは、不動産分野の場合「消滅時効」を意味します。
消滅時効とは、ある権利を一定期間行使しなかった場合、その権利を消滅させてしまう制度です。
権利を行使しない状態が長い間継続すると、もはやその権利は行使されないと思ってしまいますよね。
そのように権利が行使されないと信じた人たちを守る事が目的です。
供託の手続きについて
供託を行うには、供託所に必要な書類を提出します。
パソコンからインターネットを利用して申請することも可能です。
供託の申請は代理人や家族、会社の従業員などが行うことも認められています。
これらの供託の申請自体に手数料はかかりません。
ただし郵送や振込制度を利用する場合は、郵券や振込手数料が必要です。
ちなみに供託を行うべき供託所は、供託の種類によって変わってきます。
弁済供託の場合、債務履行地に所在する供託所に申請します。
営業上の保証供託の場合は、主たる営業所または事務所の最寄りの供託所が対象です。
また裁判上の保証供託は少し複雑です。
担保を命じた裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内の供託所に申請します。
執行供託の場合は、弁済供託と同じく債務履行地の供託所が申請対象です。
弁済供託について
弁済供託は、賃借人に地代や賃料の弁済義務がある場合に行われる供託です。
賃借人は、家主や地主に地代や賃料を支払います。
これにより建物賃貸借契約や借地借家契約の義務を果たせます。
またこれらの対価として、賃貸人は借地や建物を賃貸できます。
しかし、賃貸人から地代や賃料の受け取りを拒否されることがあります。
その他賃貸人が行方不明になった場合も、賃借人は対価を支払うことができません。
このようなケースでは、賃借人が不本意に義務を果たせなくなってしまいます。
そこで行うのが弁済供託です。
弁済供託を行えば、地代や賃料の支払いが済んだのと同じ効果が生じます。
つまり賃借人は賃貸人の事情がどうであれ、契約上の義務を果たせるということです。
ちなみに賃貸人に受け取りを拒否されるケースは受領拒否といいます。
主に家主や地主との関係悪化、賃借人の賃料値上げ拒否などが原因で起こります。
一方家主や地主が行方不明の場合は受領不能に該当します。
その他家主や地主が死亡し、誰に金銭を支払えば良いかわからないケースもあります。
こちらは債権者不確知といいます。
家主や地主と名乗る複数の人物から支払い請求を受けた場合なども該当します。
弁済供託の必要書類や供託金の納入
弁済供託を行うには、以下のような書類が必要になります。
・供託書
・資格証明書
・委任状
・封筒および郵便切手
供託書については供託所で受け取ることが可能です。
資格証明書は、会社や法人が弁済供託を行う場合に必要なものです。
成後3ヶ月以内の代表者の資格を証する書面(登記事項証明書等)が必要です。
また代理人が申請を行う場合は委任状も用意しなければいけません。
弁済供託の通知を要する場合には、封筒や郵便切手も用意します。
ちなみに供託金の納入先には2つの種類があります。
1つは、直接供託所の窓口で取り扱う供託所です。
もう1つは、日本銀行またはその代理店に納める供託所です。
納入の方法については、現金納付のほかに電子納付を選択することもできます。
消滅時効が完成するまでの期間
消滅時効が完成するまでの期間は権利の性質や権利行使しない事情に応じて異なります。
債権の場合権利行使できると知った日から5年、権利行使できるときから10年です。
債券または所有権以外の財産権については、権利を行使できるときから20年です。
不法行為に基づく損害賠償請求権は損害および加害者を知ったときから3年です。
不法行為のときから20年でも消滅時効が完成します。
人の生命・身体の侵害による損害賠償請求権は、少し条件が複雑になります。
まず損害および加害者を知った日から5年(通常3年の特例)で消滅時効が完成します。
その他、権利行使できるとき(債務不履行の始期)から20年(通常10年の特例)です。
定期金債権については、権利行使できることを知ったときから10年です。
権利行使できるときから20年でも同じように成立します。
供託によって時効はどうなるのか
供託と時効の基本事項は理解できましたね?
それでは、供託と時効との関係性について解説していきます。
供託の中でも、弁済供託に関して考えていきましょう。
例えば、家主や地主が、家賃や地代の値上げを要求し、借主との間でトラブルになってしまった場合を想定してみましょう。
これは、弁済供託が利用できる代表的な例のうちの一つで、受領拒否のパターンです。
この場合に、家主や地主の賃料請求権が消滅時効するかというのが気になるところです。
考えてみると、家主が地主は供託制度を利用して賃料を受領しているという事になり、賃料増額分について債務権を承認していないという、自らの証明ともとれますね。
即ち、時効は中断されないという考えに至ります。
建物賃貸借契約における消滅時効
上記と同じようなケースは、建物賃貸借契約でも起こり得ます。
例えば賃貸物件において、入居者が賃料を滞納したまま行方不明になったとします。
このような場合、家主は賃料の回収が困難になります。
その後、あるきっかけによって行方不明になった入居者の所在が判明したとしましょう。
このとき家主は当然滞納した賃料を回収したいと考えます。
しかしすでにある程度年数が経っているために、消滅時効を危惧する方もいます。
ここでいう消滅時効は、賃料債権や損害賠償請求権における消滅時効を指しています。
賃料債権に関しては、消滅時効は5年です。
ただし、滞納賃料が何ヶ月分もある場合は厄介です。
消滅時効は、その月々の滞納賃料が5年経過ごとに毎月かかっていくからです。
つまり何ヶ月分も滞納されている場合、完成期間はバラバラになるということです。
ちなみに損害賠償請求権については、民法に特別な規定があります。
こちらは、入居者から建物の返還を受けたときから1年以内に請求するという規定です。
ただしこちらの期間は除斥期間という扱いになります。
家主は除斥期間内に請求をすれば、請求権は普通の債権になります。
これにより、10年の消滅時効によらなければ消滅しないとされています。
これらの事例にも、家賃や地代の値上げのように供託が絡んでくることがあります。
まとめ
この記事では、供託と時効について解説してきました。
供託と時効についての基本事項を確認した後、受領拒否のパターンを例に、消滅時効が中断されるのか、それとも中断されないのかについて考えていきました。
法律関係の事象は、すべてのケースについて書き記されているわけではありません。
したがって、過去の事例や、法律関係者の見解に左右される部分が多々あります。
困った場合は、必ず専門家に相談するようにしましょう。