底地・借地権

借地権は“無形固定資産”に当てはまるのか?

固定資産には無形固定資産、有形固定資産、その他の資産の3種類があります。
今回はそれぞれの違いを解説し、借地権が無形固定資産に該当するのかどうかに関しても検証したいと思います。
知識がないと混同して覚えてしまいがちな固定資産もあるので、しっかり学んでおきましょう。

無形固定資産の概要

無形固定資産は長期間保有したり、1年以上現金化・費用化されたりする固定資産です。
詳しくは後述しますが、目に見えない形のない資産を指しています。

固定資産というと建物や機械など形のあるものがイメージされやすいです。
しかしながら特定の権利などについては、形がないものの重要な資産です。
これらは有形固定資産と区別して無形固定資産という扱いになります。

有形固定資産の概要

有形固定資産は資産の中でも物理的な形態を持つものです。
具体的には、形があって目で見たり手に取ったりできるものを指します。

しかし会計基準においては、有形固定資産という言葉に明確な定義はありません。
そのため具体的な内容や範囲は企業や国、地域などによって微妙に変わってきます。

日本における有形固定資産の内容については後述します。

その他の資産について

その他の資産は、無形固定資産にも有形固定資産にも該当しない資産です。
具体的には以下のようなものが該当します。

・関連会社や子会社への株式
・投資有価証券
・長期貸付金
・投資不動産
・長期前払い費用

投資関連のものが多く含まれることから、投資その他の資産とも呼ばれます。

固定資産と流動資産の違い

固定資産には無形固定資産と有形固定資産、その他の資産があります。
これらは長期にわたって保有するものですが、似たようなものに流動資産があります。

こちらは文字通り流動性の高い以下のような資産を指します。

・現金預金
・商品在庫
・売掛金 など

固定資産に比べ、現金化しやすいのが流動資産の特徴です。

また固定資産と区分する基準には、正常営業循環基準と1年基準があります。

正常営業循環基準は、正常な営業サイクルで生じる資産や負債についての基準です。
このような資産や負債は流動資産に含めることが定められています。
通常の販売や仕入れで発生した債権や債務は、回収期間を問わず流動資産になります。

1年基準は、ワン・イヤー・ルールとも呼ばれるものです。
こちらの基準では、1年以内に現金化できる資産は流動資産にすると定められています。

ただし商品やサービスによっては、販売から回収まで1年以上かかるものもあります。
そのような場合は、1年以内に現金化できなくても流動資産扱いになります。

物理的に存在するかしないかで固定資産は分けられる

簡単に言うと、無形固定資産は物理的に存在しない資産のことです。
有形固定資産はその逆で、形があり物理的に存在する資産です。

無形固定資産 特許権、商標権、営業権、漁業権、実用新案権、ソフトウェアなど
有形固定資産 建物、建物の設備等、航空機、船舶、車両運搬具、工具など

 

では形のない借家権は、無形固定資産に当てはまるのでしょうか?

借家権は無形固定資産ではなく“非減価償却資産”

実は固定資産には、無形固定資産でも有形固定資産でもないものが存在します。
該当するかしないかを判断するには、全ての固定資産を“減価償却資産”、“非減価償却資産”の2種類に分けなくてはいけません。

減価償却資産とは、時間が経つにつれて少しずつ価値が下がっていく資産のことを言います。
無形固定資産、有形固定資産に当てはまる資産は、全てこの減価償却資産に当てはまります。
これには建物や自動車などが該当します。
特許権や商標権、ソフトウェアなども時間の経過によって少しずつ価値が下がるとされているため、減価償却資産に該当します。

これに対して、時間がいくら経過しても価値が下がることのない資産を“非減価償却資産”と言います。
非減価償却資産は、無形固定資産でも有形固定資産でもない資産です。
借家権は経年劣化して価値が下がるものではないので、無形固定資産ではなく非減価償却資産に該当します。
また、同じ資産の中に減価償却資産と非減価償却資産が混同するというケースもあります。
例えば建物でも、非減価償却資産に該当するものがあります。
まだ建設途中の建物であれば、建設が終わっている部分のみが減価償却資産となり、建設が終わっていない部分は非減価償却資産という扱いになります。

この場合、完成していない部分は“使用されていない資産”という扱いなので、無形固定資産でも有形固定資産でもありません。
この細分化がややこしいのは、“価値が上がるものと上がらないものの見極め”が難しいためです。
例えば、骨董品や書画などの有形固定資産は一見経年劣化しそうに思えますが、時間が経つにつれて逆に価値が上がる場合もあるので、非減価償却資産扱いになるものもあります。
借家権を始めとする形のないものが、無条件で無形固定資産に当てはまるというのは間違いだということです。

旧借地権、普通借地権の減価償却

先ほども触れたように借地権は無形固定資産にも有形固定資産にも当てはまりません。
価値が下がらない非減価償却資産という扱いです。

では借地権の種類ごとの減価償却について、もう少し詳しく解説しましょう。

旧借地権や普通借地権は、いずれも取得にかかった費用を減価償却できません。
ただし借地契約を更新した場合は話が変わってきます。
このとき支払った更新料は、その土地を一定期間借りるための経費になります。
そのため減価相当額を計上することが可能です。

なお更新料は、基本的に更地価格の3%程度が目安とされています。
更新料を必要経費として算入するための減価相当額の計算方法は以下の通りです。

・更新直前の取得権取得価額×更新料÷更新時における借地権時価

更新直前の借地権取得費が0円だった場合は、経費も0円になります。

定期借地権の減価償却

定期借地権も減価償却はできません。
こちらは以下のすべての定期借地権が含まれます。

・一般定期借地権
・事業用定期借地権
・建物譲渡特約付定期借地権

先ほど触れたように旧借地権や普通借地権は、更新料のみ減価償却が可能です。
しかし定期借地権には更新の概念がありません。
このことから、完全な非減価償却資産だと言えます。

また定期借地権は、繰延資産として償却することもできません。

繰延資産はすでに支払いが済んだ支出のうち、資産の効果が1年以上に及ぶものです。
一旦は資産として計上し、年度をまたいで償却して費用化する仕組みです。
定期借地権はこちらの仕組みにも対応していません。

借地権の減価償却類似の会計処理

借地権は非減価償却資産です。
一方これに関係する費用については、減価償却類似の会計処理が可能な場合があります。

例えば地代については、土地を賃借するために必要なものです。
毎月支払う場合は、当然事業の運用経費になります。
そのため決算処理などでは経費として、減価償却ではなく地代家賃の項目で計上します。
所得税を算出する際の課税所得は、収入から経費や控除を差し引いたものです。

また借地権の取得価額も、経費として計上できます。

借地権にまつわる費用は、勘定科目や借地権の取り扱い時期に応じた処理が必要です。
以下に示すのは借地権の取得価額に含まれる費用です。
これらは会計処理上資産として計上できます。

・権利金
・仲介手数料
・更新料
・承諾料
・立ち退き料
・建物の取り壊し費用
・改良費 など

なお、地主側で借地権関連費用の会計処理が必要になる借地権の取扱時期は以下です。

・取得時
・更新時
・認定課税時(地主が法人の場合)
・売却時

認定課税は、本来あるべき費用の負担をせずに権利を得たときに課税されるものです。
その者に利益があったとみなし、得た利益の価額に贈与税や贈与所得税が課されます。

ただし認定課税は、その地域の商慣習や不動産相場などによって総合的に判断されます。

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