不動産に関するあまり知られていない法律について
不動産に関する法律と言えば、宅地建物取引業法や借地借家法、建築基準法などが挙げられます。
また、これらの法律については、ある程度どのようなものか把握している方もいるかと思いますが、中にはあまり知られていない不動産に関する法律もあります。
今回は、こちらの法律について解説したいと思います。
区分所有法
区分所有法とは、マンションで円滑な共同生活を送るため、また住人の財産を守るために制定された法律のことをいいます。
正式名称は“建物の区分所有等に関する法律”といいます。
専有部分、共用部分、敷地などの権利関係、マンションの管理に関係して、管理者、規約、集会、管理組合法人、義務違反者に対する措置、復旧、建替えなどについて定められています。
2002年に行われた改正では、住人および議決権の各4/5以上の多数決で建替えの決議ができるようになったことが注目されました。
悪臭防止法
悪臭防止法とは、公害対策の1つとして悪臭を規制する法律のことをいいます。
1967年に施行された公害対策基本法で、悪臭は典型公害の1つとして規定され、その後悪臭防止技術の進歩や国民意識の高まりを背景に、工場や事業者などに対して必要な悪臭防止対策をとらせるものとして制定されました。
規制地域は住宅地など生活環境を守るべき地域を対象に、都道府県知事が指定します。
規制方法は、特定悪臭指定物資(22物質)の濃度規制または臭気指数を用いて、敷地境界線、煙突などの排出口、排水口における規制基準が決められています。
調査の結果に対しては改善勧告、改善命令が出され、違反者には罰則規制もあります。
マンション管理適正化法
マンション管理適正化法とは、マンションの管理を適正に行なうための仕組みを規定している法律のことをいいます。
こちらの法律で規定されているのは、以下のような内容です。
①管理組合の運営などマンションの管理に関して、管理組合の管理者やマンションの区分所有者等に対して助言、指導その他の援助を行なう専門家の資格を定めること(マンション管理士制度)
②マンションの管理業務を受託する者の登録を義務づけること(マンション管理業の登録制度)
③マンション管理業務を行なうに際して、一定の資格者を置くことを義務付けること(管理業務主任者制度)
原則的に、マンションの管理はその所有者が責任を負いますが、①によって所有者に対して直接に支援する仕組みを、②および③によってマンション管理業務を受託する者が適正に業務を実施する仕組みをそれぞれ整えることにより、良好なマンション居住環境を確保することを目指しています。
消費者契約法
消費者契約法とは、事業者の不適切な勧誘行為によって締結された契約は、消費者が取り消すことができるというものです。
2001年に施行された法律で、不動産を含む全ての契約が対象となります。
消費者にとって不当な契約条項は、契約条項自体が無効となります。
契約が取り消せるケースとしては、事実と異なる情報を提供した場合、「将来値上がり間違いなし」など誤認を与えた場合、隣地に高層マンションが建設されるなど不利な事実を告げなかった場合などが挙げられます。
また、その他押し売り、監禁の類は、「消費者が困惑した」という程度であっても無効となります。
マンション建替え円滑化法
マンション建替え円滑化法とは、名前の通りマンションの建て替えを円滑に進めるための仕組みを定める法律をいいます。
マンションの建て替えや除去は、原則として区分所有法に基づいて進めますが、こちらの法律は、そのための合意形成や権利調整について特別の措置を定めています。
主な規定は次の通りです。
・法人格を持つ組合を設立して建替事業を施行する制度を創設すること(マンション建替組合)
・建替事業において、従前のマンションの所有権、敷地利用権、借家権を再建マンションの各権利に変換するための手続きを定めること(権利変換制度)
・耐震性が不足していると認定されたマンション(要除却認定マンション)についてその敷地を売却するための手続きを定めること(除却する必要のあるマンションに係る特別の措置)
・法人格を持つ組合を設立してマンション敷地を売却する事業を実施する制度を創設すること(マンション敷地売却事業)
犯罪収益移転防止法
犯罪収益移転防止法とは、マネーロンダリングを防止するための法律をいいます。
金融機関等の本人確認、取引記録保存、疑わしい取引の届出等の義務などを定めています。
2007に公布、翌年全面的に施行されましたが、従来のマネーロンダリング対策を強化すべく、本人確認等を義務付ける特定事業者の対象を、金融機関のほか、非金融業者(不動産、貴金属、宝石等取扱業者等)、職業的専門家(法律家、会計士等)に拡大するなどの措置が定められました。
こちらの法律により、宅地建物取引業者も同法の特定事業者とされ、一定の取引について本人確認等の義務を負うこととなっています。
まとめ
ここまで、不動産に関するあまり知られていない法律について解説しましたが、いかがでしたでしょうか?
不動産のルールについて明確に定めているもの以外にも、不動産が関係している法律は数多くあります。
これらすべての内容を完璧に理解するのは難しいですが、不動産の所有者、宅建業者に関する法律については、概要だけでも知っておくべきです。