不動産売却における司法書士の役割や依頼費用について
売主だけの力で、不動産売却を成立させるのは不可能に近いです。
さまざまなプロフェッショナルの力を借りることで、初めて問題なく不動産売却を成立させることができます。
では、上記のプロフェッショナルの1つである司法書士には、一体どのような役割があるのでしょうか?
今回はこちらの点を中心に解説します。
司法書士の概要
司法書士法という法律に基づき、各種の定められた業務に従事するのが司法書士です。
“身近な法律家”といった表現をされることも多い職業ですが、試験の合格率は極めて高く、超難関資格といっても過言ではありません。
司法書士は、個人や法人から依頼を受け、主に以下のような業務を行っています。
・登記、供託関連業務
・相続、債務問題関連業務
・後見関連業務
・外国人の帰化に関する業務
・裁判関連業務 など
不動産売却における司法書士の役割は?
不動産売却を行う場合、売主は必ず登記を移転させなければいけません。
こちらは、当該物件の所有者が誰なのかを示したものであり、いわば不動産を所有していることの証明にあたります。
しかし、初めて不動産売却を行う売主は、自分自身で登記手続きをすることに、一抹の不安を抱くでしょう。
きちんと方法を整理すれば、決して困難な手続きではありませんが、うまくいかない場合、買主とのトラブルに発展する可能性もゼロではありません。
そこで頼りになるのが、司法書士です。
司法書士にとって、不動産の登記は専門分野であり、売主はこちらの手続きの代行を依頼することが可能です。
もちろん、司法書士に登記を代行してもらえば、手続きがうまくいかず、トラブルが起こる心配はありません。
それだけでなく、売主は登記にかかる時間と労力を節約できます。
一方、不動産の登記手続きを売主自身で行う場合は法務局に訪れなければいけませんが、こちらは平日しか業務を行っていません。
よって、多くの方は仕事を休んでいくことになります。
もっと言えば、売却する不動産を管轄する法務局は決まっているため、場合によっては遠方まで出向かなければいけません。
さらに、このようなケースでも、書類に不備が見つかると再度法務局を訪れなければいけないため、売主1人では対応が難しくなります。
司法書士への依頼にかかる費用は?
不動産売却に伴う登記手続きは、司法書士に依頼することで滞りなく進みますが、当然依頼には費用がかかります。
では、以下のケースごとに、売主が負担する依頼費用の金額を見ていきましょう。
・抵当権が残っている場合
・売主の氏名、住所が登記簿と異なる場合
・登記簿の所有者が売主と異なる場合
抵当権が残っている場合
売却する不動産に抵当権が残っている場合、売主はこちらを抹消した上で、所有権の移転登記をしなければいけません。
これらの手続きを司法書士に依頼する場合には、以下の費用がかかります。
・抵当権抹消登記費用:10,000~30,000円
・登録免許税:土地1筆あたり1,000円
売主の氏名、住所が登記簿と異なる場合
例えば、転居をした際に、土地の登記簿上の住所を変更していなかった場合や、結婚や離婚により姓が変わったにも関わらず、登記簿上の氏名がそのままになっている場合は、まずこちらを変更しなければいけません。
このようなケースにおいて、売主が司法書士に支払う費用は以下の通りです。
・登記名義人住所・氏名変更登記費用:10,000~20,000円
・登録免許税:土地1筆あたり1,000円
登記簿の所有者が売主と異なる場合
相続された不動産を売却する場合、名義が父親などのままになっていることがあります。
この場合、売主は売却前に、自身の名義に変更しておかなければいけません。
必要な司法書士への依頼費用は、以下の通りです。
・所有権移転登記費用:30,000~110,000円
・登録免許税:土地の固定資産税評価額×0.4%
司法書士に提出する書類は?
司法書士に依頼すれば、不動産売却に伴う登記関連手続きを一任できます。
しかし、以下の書類に関しては、売主自身が用意して提出しなければいけないため、注意しましょう。
・登記識別情報
・委任状
・住民票
・印鑑証明書
・固定資産税評価証明書
・本人確認書類
・抵当権抹消書類
「なぜ委任状が必要なのか?」と思う方もいるかもしれませんが、司法書士への登記手続きの依頼は、“第三者に代理人を務めてもらう”という扱いになります。
つまり、司法書士が売主の代理人を務めるというわけです。
ちなみに、上記の必要書類は、すべてまとめて提出しなくても構いません。
登記の変更に関しては、売却する不動産の引き渡し日にまとめて実施されるため、売買契約の成立から引き渡し日までの間に、少しずつ提出すればOKです。
むしろ、そちらの方が、不備があった場合などに対応しやすいでしょう。
まとめ
不動産売却において、司法書士がどれほど重要な存在か理解していただけたでしょうか?
依頼せずとも、不動産売却を成立させることは可能ですが、その選択をすることには特にメリットがありません。
もちろん、依頼費用は決して安くありませんが、それで安心を手に入れ、スムーズな不動産売却を実現できると考えると、相応の支出だと言えます。