不動産相続をしない方が良いケース②相続時の納税が困難
被相続人から受け継ぐ不動産は、そのまま居住したり、さまざまな土地活用の土台にしたりすることができます。
ただ、相続時の納税が困難と予想される場合は、相続を放棄した方が良いでしょう。
今回は、相続税の納税が困難になる理由と、なぜ相続税を支払えないとき、不動産を受け継がない方が良いのかについて解説します。
相続税の納税が難しくなるケース
そもそも、相続時の納税が困難になるケースには、一体どんなケースが挙げられるでしょうか?
具体的には、以下の2つのケースが考えられます。
・なかなか不動産が売れない
・そもそも手持ちの資金が少ない
なかなか不動産が売れない
相続税は、被相続人が遺したすべての財産に対して課税されます。
「預貯金には〇〇円」「不動産には〇〇円」という様に、財産ごとに課税額が変わってくるわけではありません。
また、不動産を含む財産が3,600万円を下回る場合、相続人は相続税を支払わずに済みます(相続人が1人の場合)。
ただ、逆に言えば、財産の額が基礎控除額を上回れば上回るほど、相続額は高額になります。
これは、相続するプラスの財産が増えるほど、税率が高くなることが理由です。
相続財産の総額が億単位になると、被相続人は数千万円もの相続税を支払わなければならないこともあります。
しかし、不動産はすぐ売却して現金に換えられるとは限らないため、「相続税額は高いのに、なかなか支払えない」という状況が生まれてしまいます。 このような状況になると予想できる場合は、最初から不動産を相続しない方が良いでしょう。
そもそも手持ちの資金が少ない
相続人の中には、生活が苦しく、被相続人から受け継いだ不動産を売却し、生活費や借金の返済に充てようと考えている方もいるでしょう。
ただ、このとき不動産の売却益を生活費や借金返済の費用に充ててしまうと、相続税が払えなくなることがあります。
つまり、相続した不動産を売って生活に余裕ができたとしても、また新たに相続税という支払うべき費用が発生するということです。
このような場合も、最初から相続しない方が良いでしょう。
相続税の納税が困難な場合に、不動産を相続しない方が良い理由
相続時の納税が難しくても、さまざまな方法で対処することは可能です。
ただ、ここから紹介する対処法は、どれもリスクが高いものであり、あまりおすすめできません。
これも、相続時の納税が困難な場合に、不動産相談をしない方が良い理由です。
つまり、相続時の支払いが難しい状態で相続し、何らかの対処をしたとしても、それなりのリスクが付きまとってしまうということです。
支払いが難しいときの対処法は、主に以下の3つです。
・延納
・物納
・金融機関からの借入
では、それぞれのリスクについて解説しましょう。
延納
一括納付が難しい相続税について、納付期限を最大20年まで延期し、分割納付できるのが“延納”という制度です。
素晴らしい制度のように感じますが、これは以下の条件をすべて満たさないと利用できません。
・相続税額10万円以上
・延納税額相当の担保を提供する
・延納申請期限までに延納申請書、担保提供関係書類を税務署に提出する
また、延納期間中は、延納税額に対して利子税(年2.1~6%)がかかります。
物納
相続税は基本的に現金で納めなければいけませんが、前述した延納でも支払えないという場合は、“物納”を行うことができます。
これは、相続税を支払うための現金が用意できない場合に、以下のいずれかの資産を差し出すことで代用できるという制度です。
第一順位 |
不動産、船舶、国債証券、地方債証券、上場株式など |
第二順位 |
非上場株式 |
第三順位 |
動産(車、家具など) |
ただ、物納が許可されるまでの間には利子税がかかります。
また、上記のうち第一順位の資産から物納しなければいけません。
例えば、車を物納したい場合でも、国債証券を所有していれば、そちらを手放さなければいけないということです。
金融機関からの借入
これは、非常にシンプルな対処法です。
金融機関からの借入を行い、その借入金を相続税の支払いに充てるという方法です。
この方法を実践すれば、期限までに相続税を支払える可能性は高いため、前述の延納や物納を行う必要はなくなるでしょう。
ただ、相続人の属性や与信によっては、必ずしも借入が認められるとは限りません。
また、相続税の支払いはできるものの、借入金に対しては当然利息を支払うことになるため、トータルの負担額は大きくなります。
もちろん、申込時の不手際などにより、借入の審査開始から融資実行までの期間が長期化してしまうと、相続税の納付期限を過ぎてしまうことも考えられます。
まとめ
ここまで、不動産相続をしない方が良いケースとして、相続税の支払いが困難な場合について解説してきました。
相続税における現行の基礎控除額は、以前よりも金額が低くなっているため、近年は相続税の支払いが難しくなるケースも増えています。
また、相続税の支払いが難しい方に向けた救済措置や対処法はいくつかありますが、どれも決してメリットばかりではないため、利用しない方が賢明です。