底地(貸宅地)の契約形態の1つである“定期借地”について
底地(貸宅地)における一般的な契約形態である普通借地では、法定更新が行われます。
また、普通借地では借地人様が強く保護されるため、地主様は1度土地を貸し出すと、なかなか返還の機会を得られません。
今回は、そんな地主様のリスクを減らす底地(貸宅地)の契約形態である“定期借地”について解説したいと思います。
底地(貸宅地)の契約形態の1つ“定期借地”の概要
通常、期間が設けられた契約は、期間終了と同時に解消されます。
ただ、地主様、借地人様のどちらかが契約更新を拒否したり、契約更新時に双方の意見がまとまらなかったりする場合、いつの間にか契約満了日に至ってしまうということがあります。
このとき、そのまま契約が解消されると、双方のいずれかが大きな不利益を被る可能性があるため、契約は自動的に更新したという扱いになります。
これが、底地(貸宅地)の普通借地における“法定更新”です。
しかし、冒頭で触れたように、このルールは地主様にとっては少し不利なルールとなっています。
なぜなら、法定更新によって借地人様は保護されるものの、契約を打ち切りたい地主様にとっては、「なかなか土地を返還してもらえない」ということに繋がるからです。
このような状況を避けるために、地主様が選択すべき契約形態こそが、法定更新の存在しない底地(貸宅地)の“定期借地”ですね。
地主様は、底地(貸宅地)で定期借地契約を結ぶことによって、契約期間満了とともに土地返還の機会を得ることができます。
諸外国では、定期借地が非常にポピュラーなものとなっている地域も珍しくなく、期間満了まで借地人様が不動産を保有できる契約であることから、“期限付き所有権”と呼ばれることもあります。
地主様が定期借地契約を結ぶことのメリット
地主様が底地(貸宅地)で定期借地契約を結ぶことのメリットは、期間満了時、確実に土地を返してもらえるということだけではありません。
他にも、以下のようなメリットがあります。
①土地を貸しやすい
定期借地の場合、あらかじめ決められた時期になれば、確実に借地人様から土地が返ってきます。
そのため、地主様は普通借地の場合よりも、比較的気軽に土地を貸し出せます。
②地代を無理に上げる必要がない
普通借地の場合、法定更新によって長期間土地を貸し出すことになる可能性もあります。
したがって、地代の引き上げ等に関しては、ある程度積極的に行っていかなければいけません。
一方、底地(貸宅地)で定期借地契約を結ぶ場合、限られた期間の中での貸し出しとなるため、比較的低めの地代でも、地主様の収入に大きな影響が出る可能性は低いです。
実際、定期借地における地代や権利金等の相場は、普通借地よりも低い傾向にあります。
定期借地におけるその他のメリット
底地(貸宅地)の定期借地は、地主様にとってメリットのある契約形態であると同時に、借地人様にとっても悪くない契約形態だと言えます。
契約期間は定められているものの、権利金の金額は比較的低いですし、期間満了まで支払い続ける地代も、相場よりは安いケースが多いですからね。
また、定期借地には、社会経済に良い影響をもたらすというメリットもあります。
普通借地の場合、地主様は土地返還の機会をなかなか得られないことから、土地を貸し出しにくくなってしまいます。
ただ、定期借地の場合は比較的気軽に貸し出せるため、借地人様が土地活用を目的に借地契約を結ぶケースでは、土地活用の促進に協力する形になります。
これにより、賃貸物件や資材置き場、高齢者施設等が増加していけば、社会経済にとっての大きなプラスとなります。
定期借地の種類は3つ
借地借家法において、法定更新が適用されない契約形態を定期借地と呼ぶのであれば、その種類は3つに分かれます。
1つずつ解説していきましょう。
①一般定期借地
底地(貸宅地)の定期借地と言えば、この“一般的定期借地”を指すケースが多いです。
つまり、狭義の定期借地ですね。
これは、存続期間が50年以上の契約を指し、締結の際には書面が必要となります。
②事業用定期借地
底地(貸宅地)の“事業用定期借地”は、事業用建物の建築、運用特有の需要にマッチした契約形態です。
比較的短い期間(10~50年)限定での建物の存続を可能としています。
また、事業用定期借地はさらに長期タイプ、短期タイプの2種類に細分化されます。
前者は存続期間が30~50年で、契約更新と建物買取請求権をなくす特約を設けることが可能です。
つまり、あえて特約を設けず、普通借地と同じような内容にすることもできるというわけですね。
一方、後者は存続期間が10~30年と短く、特約を設けなくとも、最初から更新なし、建物買取請求権なしというルールが適用されています。
ごく短期限定の建物を前提とした契約形態ですね。
これまで事業用定期借地は、設定できる期間の幅が10~20年に限定されていましたが、近年の事業やニーズの多様化に伴い、設定可能な幅が広がるとともに、上記2つの種類に分けられる形となりました。
ちなみに、底地(貸宅地)の事業用定期借地は、公正証書を用いて締結しなければいけません。
これは、法定更新がないという特殊な契約のため、当事者の認識を明確かしておくという趣旨のものです。
公証人が意思確認をするため、認識不順となることが回避できますし、証拠が残るため、事後的なトラブルも防止することが可能です。
③建物譲渡特約付借地
一定の時期に、地主様が底地(貸宅地)上の建物を譲り受ける特約を設けた定期借地を“建物譲渡特約付借地”といいます。
特約が効果を発揮するのは、契約開始後30年以上が経過した時点とされています。
法定更新は適用されず、更新しない合意が有効となるため、定期借地の1つとして数えられています。
ちなみに、建物譲渡特約付借地には、契約方式についての制限がありません。
つまり、書面や公正証書がなくても締結できるというわけですね。
ただ、実際は実務上、書面を作成して締結するケースがほとんどです。
“定期借家”との違いについて
底地(貸宅地)の定期借地とよく似た契約形態に、“定期借家”というものがあります。
これは、定期借地と同じく、法定更新が存在しない形態を指していますが、異なる点もいくつかあります。
まず、定期借地が最低契約期間、最長契約期間が定められているものであるのに対し、定期借家には制限がありません。
これは、法律上設定されているか、されていないかという違いですね。
また、定期借地と定期借家には、“賃料減額請求の排除”に関しても、大きな違いがあります。
賃料減額請求とは、底地(貸宅地)における地代が不相当となったとき、借地契約を結ぶ当事者(地主様、借地人様)が、地代の減額を請求できることをいいます。
これは、強制法規にあたるもので、請求された地主様、借地人様は、原則断ることができないとされていますが、定期借家の場合は、特約で排除することが可能です。
しかし、底地(貸宅地)の定期借地では、賃料減額請求を特約で排除することができません。
これは非常に大きな違いであるため、必ず覚えておきましょう。
まとめ
ここまで、底地(貸宅地)における“定期借地”について詳しく解説してきましたが、いかがだったでしょうか?
今後、地主様として土地を貸し出そうとしている方は、ぜひ定期借地契約の締結も視野に入れてください。
特に、将来自身の所有する土地を利用する可能性がある方には、法定更新が存在しない定期借地がおすすめだと言えます。