相続

供託と相続の関係性~適切な対処を求めて~

みなさんは、供託という言葉を、聞いた事がありますか?
言葉は聞いた事があっても、概念まで正確に説明できる人は、そう多くないでしょう。
特に、法律の関与する言葉は難しいですよね。
そこで今回は、供託と相続の関係性について、ご説明していきたいと思います。

供託とはどのようなものだろうか

供託と相続との関係を解説する前に、供託とは何か、ご説明したいと思います。
供託という言葉を今まで聞いたことの無い人もいると思いますので、今のうちにしっかりとおさえておきましょう。

まず、どの領域で用いられるのかというところから解説していきたいと思います。
供託は、法的な手続きの一つです。
法的責任を持つことが少ない若年層にとっては、特に聞きなれない言葉かもしれませんね。
供託は、供託所に金銭や有価証券の管理を委ね、供託所が別の人物へその財産を取得させるというものです。

しかし、この供託という行為は一体、何のためにあるのでしょうか。
疑問に思いませんか?
供託というのは、法律上の目的を達成させるために設けられています。

例えば、地主や大家さんが突如、行方不明になった場合はどうですか?
「絶対にそのような事はない!」と、言い切れるでしょうか?
しかしながら、そのまま放置しておく事はできませんよね。
そこで供託所の出番がやってきます。
供託所に地代や家賃を預ける事で、その後、適切な対処をお願いする事ができるのです。

では、法律上の目的にはどのようなものがあるのでしょう。
供託の目的として、機能的に分類すると以下の五種類が存在します。
弁済供託・担保保証供託・執行供託・保管供託・没取供託の五種類です。

次の章では、供託と相続が関与する部分についてより詳しく見ていきたいと思います。

供託と相続が関与する部分とは

供託の概念は分かっていただけたでしょうか?
さいごに、供託についての注意点についてお話ししておきましょう。
実は、供託というのは、認められた条件下でなければ行うことは出来ません。
法令で供託を義務付けられているか、あるいは、供託が認可された場合以外には、供託を行う事が出来ないのです。

したがって、供託と相続の関係に焦点を当ててお話しすると、相続の際、好き勝手に供託を選ぶ事は出来ないという事です。
例えば、法定相続人の一人が行方不明などで、その人の分の財産の扱いに困っていたとしても、何の手続きもなしに勝手に供託制度を利用するという事はあり得ません。
こういったケースに関しては、きちんと遺産分割協議が進行するのを待つべきなのです。

不動産における供託と相続の関係性

供託の概要で少し触れましたが、不動産に関しては、土地や建物の賃貸借契約におけるトラブルにおいて、供託と相続が関係することがあります。

例えば、土地や建物の借主は、毎月土地の貸主(地主)や物件のオーナーに地代、賃料という形で金銭を支払っています。
また、こちらの貸主やオーナーが死亡した場合、基本的にはその相続人に対し、継続して金銭を支払い続けることになります。

しかし、相続人の行方がわからない場合、借主は誰に賃料等の支払いをすべきなのか判断できません。

このように、借主に過失がなく、賃料等の支払うべき相手がわからなくなった場合は、当該賃料等につき、債権者不確知を供託原因とする弁済供託を行うことにより、賃料債務を消滅させることができます。
支払う相手がいないからといって、そのままにしておくことで、自動的に賃料等の支払い義務も消滅するわけではありません。

ちなみに、貸主の相続人ではなく、単純に貸主が突然行方不明になり、借主が賃料等を支払えなくなった場合も、同じように供託を行うことで、問題を解決できます。
貸主本人が行方不明になった場合、供託原因は債権者不確知ではなく、受領不能になります。

こちらは、借主が賃料等の支払いをするための連絡をしたものの、連絡が付かない、所在地がわからないなどの理由で支払いができないケースの他、借主の住所において貸主が賃料等を取り立てる旨の合意があるにもかかわらず、弁済期が来ても貸主が取り立てに現れないケースなども該当します。

このような供託手続きをするときは、地代・家賃弁済供託用の供託書に必要事項を記入し、これに賃料(供託金)を添えて、賃貸借契約上の支払地に所在する供託所において、手続きを進める必要があります。
なお、インターネットを利用して供託することも可能です。

貸主の受領拒否があった場合も供託が可能

土地や建物の借主は、その貸主から賃料等の値上げ等を打診されることがあります。
しかし、こちらが正当な事由に基づくものでない場合や、金額が相当ではない場合などは、相当と認められる金額を貸主に提供します。

このとき、貸主との話し合いが完結していないと、こちらの金銭の受け取りを拒否されることがありますが、借主は相当と認める額の賃料等について、受領拒否を原因とする弁済供託を行うことにより、賃料債務を消滅させることが可能です。
こちらは相続とは直接関係ありませんが、不動産において供託が生じる可能性のあるケースとして、特に借主は把握しておきましょう。

ただし、訴訟の結果、賃料等の値上げが相当なものと判断された場合は、供託した金額との差額を貸主に支払わなければいけません。
そのため、必ずしもこちらの方法でトラブルが解決するわけではないため、注意してください。

ちなみに、借主が受領拒否を原因に供託する場合には、供託を行う前に、まず貸主に対して弁済の提供を行う必要があります。
賃料等の値上げをされたという事実だけでは、受領拒否が明確であるとは言えず、こちらは供託の対象にならないことが考えられます。

不動産の遺産分割と供託について

例えば、被相続人の財産である土地の上に、長男が家を建てて暮らしていたとします。
この場合、長男はその土地を相続したいと考えるのが普通です。

しかし、長男以外の相続人の一人が、遺産分割の話し合いに応じてくれない場合、遺産分割協議書の作成が難航し、長男は自身の家がある土地を相続できません。

このようなケースでは、調停の手続きを利用することで、相続人が理解してくれるケースがありますが、それでも調停への出席を拒む場合は、審判の手続きに移行し、裁判所に遺産分割の方法を決定してもらうことが可能です。

ただし、長男は当該土地を取得した代償として、他の相続人には代償金を支払う必要があります。
こちらは、代償分割という遺産分割の方法です。

また、遺産分割の話し合いに応じてくれなかった相続人は、代償金の受け取りすら拒否することがありますが、この場合も賃料を支払う相手がいないときと同じで、受け取ってもらえないからといって、支払いをしなくて良いということにはなりません。

代償金を受け取ってもらえない場合、長男は供託手続きを利用し、そこに代償金を預けることで、初めて代償分割を成立させることができます。

どこの供託所に供託すべきなのか?

相続に関連するものを含む金銭の供託については、法務局に対して行いますが、このうちどこの供託所に供託すれば良いかは、供託の種類によって、それぞれの供託根拠法令によって定められている場合があります。

例えば、不動産や相続とも関連性の深い弁済供託については、債務を弁済する場所(債務の履行地)に所在する供託所で手続きを行います。
市、町などの最小行政区画に供託所が存在しない場合は、その地を包括する行政区画内(県)における、最寄りの供託所を利用します。

また、裁判上の保証供託は、担保を立てるべきことを命じた裁判所または執行裁判所の所在地を管轄する地方裁判所の管轄区域内の供託所で手続きを行うことになります。

ちなみに、金銭債権の差押等につき、第三債務者からする執行供託については、当該債権(差し押さえられた債権)の債務の履行地の供託所が対象になります。

まとめ

供託と相続の関係についてご理解いただけましたか?
供託も相続も法的な手続きであるため、相続において遺産分割協議が滞っているからと言って、簡単に供託の制度を利用できるというわけではないのですね。
法で定められている事は覆りませんので、トラブルを未然に防いで円滑な取引や契約を進められるよう、今のうちから少しずつでも知識を仕入れておきましょう。

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