不動産と裁判所に関する用語について
不動産は、居住や投資に使用するものである以前に、預貯金などと同じく一つの財産です。
また、こちらは債務不履行などがあったとき、裁判所の手続きを介し、財産としてさまざまな処置が行われることがあります。
ここからは、不動産と裁判所が関わる主な用語について解説したいと思います。
差押え
債権者の訴訟により、国家の執行機関である執行裁判所や執行官が、債務者の財産や権利の処分を禁止することを差押えといいます。
債権者は、確定判決などの債務名義と執行分の付与を受け、執行機関に執行の申立を行います。
その後、不動産の場合では差押え宣告がなされ、差押えの登記がされ、競売が開始されます。
ちなみに、確定判決が出ていないなど、差押えの条件が満たされていない場合は、仮差押えの申立ができます。
強制管理
強制管理は、不動産に対する強制執行の方法の一つです。
例えば、債務者がビルなどの不動産を所有している場合、それを差し押さえた上で売却せず、裁判所が選定した管理人に運用させ、賃貸料などを債務の弁済に充てます。
また、不動産に対する強制執行には、差し押さえた不動産を売却する強制競売という方法もありますが、競売には市場価格を下回る落札が多く入るため、債務額に届かないというリスクを抱えています。
限定承認
限定商品とは、相続する財産の範囲内で、相続した負債を支払うことをいいます。
相続は、財産も負債も双方を承継することになるため、相続人には相続を放棄する相続放棄が認められています。
しかし、一方で不動産などの相続する財産があり、負債に関しては金額がハッキリしない場合、単純相続では被相続人の債務すべてに弁済義務を負うことになります。
そのようなおそれがあるとき、相続の限定承認をすることで、債務の承継を相続する財産の範囲内に限定できます。
ちなみに、限定承認を行うには、相続人全員で、相続を知ったときから3ヶ月以内に、財産目録を作成し、家庭裁判所に申述をしなければいけません。
強制執行認諾約款
強制執行認諾約款は、公正証書の中の文言で、「債務不履行の場合には強制執行を受けても異議はない」という旨を認めたものです。
こちらの約款があることで、公正証書が強力な執行権を持つことになります。
こちらの文言がなければ、通常の契約書と同様に、裁判で勝訴して初めて強制執行が可能です。
しかし、公正証書は判決と同じ強制力を持ち、こちらの約款があると、債権者は裁判をしなくても強制執行が可能です。
ただし、強制執行が認められているのは金銭関係に限定されていて、不動産の明け渡しなどは対象になりません。
権利の濫用
民法に記載されているルールである権利の濫用は、正当な権利を持つ者であっても、その権利を行使することが、他者に多大な損害を与える、あるいは社会的概念から逸脱していると判断される場合は、権利の行使が許されないとされるものです。
権利の濫用の判断は裁判所が行うため、ケースバイケースになることが多いですが、不動産関連では、以下のようなケースで権利の濫用とされた判例があります。
・賃料を滞納している借主に対し、貸主が借主逃すや水道を止めた
・別居中の夫婦の夫が、妻が住む共有名義の不動産の夫の持分を妻の同意なしに譲渡しようとした
・私道の所有者が、他人の通行を妨げるために私道入口にバリケードを設置した
・住居専用の賃貸マンションに、事務所として使用する借主が多数存在する場合に、特定の借主に対し、事務所使用は契約違反として、貸主が退去を求めた
公示送達
公示送達とは、賃料不払いのまま行方不明になった借主に対し、貸主が単独で賃借契約を解除する方法をいいます。
賃貸借契約は、賃料の滞納があっても、契約解除の意思を相手に表明しなければ解除できません。
しかし、相手が行方不明の場合には、意思を伝えることができません。
そこで、相手が最後に住んでいた場所の簡易裁判所に申し立て、裁判所が認めると、送達文書が官報や新聞に掲載されます。
そこから一定期間を過ぎると、相手に通達したものと見なされます。
先取特権
法律上定められた特殊な債権を持っている債権者が、債務者の財産について、法律上当然にほかの債権者に優先し、その債権の弁済を受け得る担保物権を先取特権といいます。
債務者のどういうものを裁判所で競売できるかによって、一般の先取特権、不動産の先取特権、動産の先取特権の3つに分けられます。
さらに、先取特権の種類には、共益の費用、雇用関係、葬式の費用、日用品の供給があり、このうち共益の費用は、不動産を競売にかける際に裁判所に予納する費用などが該当します。
まとめ
ここまで、不動産と裁判所が関わる主な用語について解説しましたが、いかがでしたでしょうか?
裁判所が関係する不動産の処置や手続きには、所有者の方が特に問題を起こさなければ関わる機会がないものと、そうでないものがあります。
いずれにせよ、不動産を所有している方であれば、知っておいて損はないものばかりのため、この機会にぜひ覚えていただけると幸いです。