不動産売買時に発生する“固定資産税精算金”について
不動産を売買する際は、仲介手数料や登記費用を始めとするさまざまなコストがかかります。
また、買主、売主の双方が負担することになる代表的な費用に、“固定資産税精算金”というものが挙げられます。
今回はこちらの費用の概要や金額などについて、詳しく解説していきたいと思います。
固定資産税精算金の概要
不動産を所有する方は、必ず固定資産税と都市計画税を支払わなければいけません。
継続して不動産を所有する場合、こちらの税金は当然1人の所有者が支払い続けますが、不動産売買が行われると、引き渡し日を持って所有者が変更になり、それに伴って固定資産税、都市計画税を負担する人物も変わります。
このとき、引き渡し前日までにかかる固定資産税、都市計画税を売主、引き渡し当日以降にかかる固定資産税、都市計画税を買主の分として、各自負担するのが慣例となっています。
こちらの費用のことを、固定資産税精算金といいます。
ちなみに、こちらの金銭の負担に関しては、法律などで定められているものではありません。
ただし、支払い義務に関する条項は、必ずと言って良いほど不動産売買契約書に記載されているため、買主または売主には、実質支払い義務があると考えて良いでしょう。
固定資産税精算金を買主、売主で負担し合うのはなぜ?
固定資産税は、毎年1月1日時点で、当該不動産を所有していた方に課税されるもので、都市計画税も似たような仕組みとなっています。
また、買主と売主で、上記2種類の税金相当額を負担し合う理由は、ずばりこちらの仕組みにあります。
例えば、売主がある年の2月に不動産を売却したとしましょう。
こちらの場合、売主は1年のうち1ヶ月しか不動産を所有していないにもかかわらず、1月1日時点で所有権を持っているがために、固定資産税、都市計画税を1年分支払わなければいけません(起算日が1月1日の場合)。
このような不公平感をなくすために、所有していた日数に応じて買主、売主で負担分を分割することが、固定資産税精算金の目的です。
具体的な金額はどれくらい?
例として、その年の固定資産税の金額が10万円、都市計画税の金額が5万円、不動産の引き渡し日が2022年7月15日のケースにおいて、買主と売主がどれくらいの金額を負担しなければいけないのかを見ていきましょう。
ちなみに、起算日は1月1日とします。
買主が負担する金額
買主が負担する金額は、7月15日~12月31日までの分であり、この日数分を年間日数で割れば、具体的な金額を算出できます。
計算式は以下の通りです。
・15万円×170日(7月15日~12月31日)÷365日=69,863円
ちなみに、固定資産税、都市計画税の物件引き渡し当日分に関しては買主負担になるため、今後不動産を購入しようと考える方は覚えておきましょう。
売主が負担する金額
負担する日数は異なるものの、売主が支払う金額も、買主と同じ計算方法で算出できます。
計算式は以下の通りです。
・15万円×195日(1月1日~7月14日)÷365日=80,137円
端数が発生した場合は?
双方の負担額に端数が発生した場合は、買主と売主が納得するよう、当事者間で調整を行います。
また、1の位や10の位を四捨五入し、10円単位もしくは100円単位までの金額を算出するというケースも少なくありません。
固定資産税精算金の注意点
固定資産税精算金に関して、注意していただきたい点は以下の通りです。
・税法上の取り扱いについて
・消費税について
・売買のタイミングについて
税法上の取り扱いについて
“固定資産税精算金=税金”という認識を持っている方が多いかと思いますが、実際はそうではありません。
税法上、固定資産税精算金は売買代金という扱いになります。
そのため、先ほど計算したような金額は、不動産売買契約書上の売買価額に上乗せされます。
消費税について
固定資産税精算金はあくまで売買代金のため、消費税が課税されます。
具体的には、売主が不動産会社などの場合に、建物部分の固定資産税精算金に課税され、土地部分に関しては非課税となります。
売買のタイミングについて
不動産売買のタイミングが1~5月の場合、その年の固定資産税の金額はまだ確定していません。
よって、一般的には前年の固定資産税額を用いて精算金額を弾き出します。
更地になるなど、特段の理由がない限り、1年で大きく固定資産税額が変動するということはないですが、こちらの方法で金額を算出する場合、実際に発生する税額とは若干差異が発生することもあるため、あらかじめ留意しておきましょう。
ちなみに、6月以降の売買であれば、すでに固定資産税額は確定しているため、比較的スムーズに双方の負担額を算出することができます。
まとめ
ここまで、不動産売買時に発生する固定資産税精算金について解説しましたが、いかがでしたでしょうか?
こちらの金銭に関しては、スムーズに算出できるケースと、少々複雑化してしまうケースがあるため、前もって知識を持っておきましょう。
また、税法上の扱いなど、基本的な性質についても、あらかじめ理解しておくべきです。