不動産売買において発生するさまざまな手数料について
不動産売買にあらゆるコストがかかるのは、皆さんもご存知かと思います。
では、不動産売買にかかる手数料と聞いて、皆さんはどのような費用を思い浮かべるでしょうか?
おそらく多くの方は仲介手数料をイメージされるかと思いますが、実際にはもっとたくさんの種類があります。
詳しく解説しましょう。
不動産売買に関する手数料の種類と特徴
これから不動産を売る方、あるいは買う方が触れることになる手数料には、主に以下の種類があります。
・仲介手数料
・事務手数料
・振込手数料
・引っ越し手数料
・司法書士費用
・住宅ローンの繰り上げ返済手数料
それぞれ詳しく見ていきましょう。
仲介手数料
冒頭で触れたように、不動産売買にかかる代表的な手数料としては、やはり仲介手数料が挙げられます。
こちらは、不動産会社に売買の仲介を依頼する際にかかるものです。
具体的には、不動産会社が売買先を探す活動への対価として、売主または買主が支払う手数料です。
不動産売買を経験したことがない方でも、こちらに関してはご存知かと思います。
金額としては、売買される不動産の価格が400万円を超える場合、以下の式で算出されたものが最大となります。
・物件価格(税抜)×3%+60,000円+消費税
ちなみに、“仲介手数料=仲介を依頼したら必ずかかる費用”という認識を持っている方もいるかもしれませんが、決してそのようなことはありません。
仲介手数料は、あくまで成功報酬です。
つまり、売主や買主が仲介を依頼したものの、最終的に売買が成立しなかった場合は請求されないということです。
事務手数料
事務手数料も、不動産売買で発生する主な手数料の1つです。
こちらは、住宅ローンを利用する場合にかかる手数料で、申込時の手続きを行ってもらう対価として、金融機関等に支払わなければいけません。
ちなみに、金額は借入先または借入金額によって異なり、算出方法には以下の2つがあります。
この機会にぜひ覚えておいてください。
・定率型
借入金額に対し、一定の割合を手数料として支払うという方法です。
例えば、借入金額が2,000万円で、手数料割合が2%の場合は、2,000万円×2%で40万円を支払うという形になります。
・定額型
借入金額にかかわらず、30,000~60,000円程度で設定されている手数料を支払う方法です。
どれだけ借入額が多くても、大きく手数料が変動することはありません。
よって、定率型よりもお得だと思われがちですが、月々返済時の金利はこちらの方が高いケースもあります。
振込手数料
不動産売買にかかる手数料としては、振込手数料も挙げられます。
こちらは、買主から売主に対し、不動産の売買代金を支払う際にかかる手数料です。
つまり、金融機関に対して支払うものだということです。
不動産売買で発生する手付金に関しては、現金で授受されることが多いですが、残代金は数千万円単位になることが多いため、銀行振込で支払われるのが一般的です。
ちなみに、振込手数料は原則、買主が負担します。
なぜなら、現行民法の中に、“弁済の費用について別段の意思表示がないときは、その費用は債務者の負担とする”という規定があるからです。
では、買主が金融機関のローン審査に通過せず、不動産売買契約が解除になった場合、売主から返還される手付金の振込手数料は、一体誰が負担するのでしょうか?
結論からいうと、こちらに関しても買主負担とするのが妥当です。
契約が解除になったことに関して、売主にまったく非がないことから、売主が責任を追及されることはありません。
しかし、振込手数料の負担を巡ってトラブルになる可能性もなくはないため、売主は契約書にローン解除条項として、“手付金返還時の振込手数料は買主が負担する”と記載しておきましょう。
引っ越し手数料
不動産売買で発生する手数料としては、引っ越し手数料も挙げられます。
こちらは、売主が持ち家の売却に伴って新居に引っ越す際、負担しなければいけない可能性があるものです。
より具体的にいうと、売主が賃貸物件に転居する際、不動産会社もしくは管理会社に支払う賃貸借契約の仲介手数料です。
金額としては、概ね賃料の0.5~1ヶ月分+消費税が相場とされていて、法律上賃料1ヶ月分+消費税以上の仲介手数料を請求されることはありません。
ちなみに、売主が不動産売却後、賃貸物件に転居する場合でも、仲介手数料がかからないケースがあります。
例えば、個人のオーナーから、不動産会社が建物を借り上げて管理している場合などは、一切手数料が発生しません。
なぜなら、こちらのケースは、個人のオーナーと借主の間に不動産会社、管理会社がいるわけではなく、貸主自体が不動産会社であるからです。
つまり、仲介という業務が行われていないため、手数料も発生しないということです。
司法書士費用
司法書士は、専門的な知識に基づいて裁判所、法務局などに提出する書類の作成や、登記手続きを行う士業です。
不動産売買契約では、登記の名義を売主から買主に変更させるために、司法書士に申請手続きを委託しますが、このときには手数料として司法書士費用が発生します。
また、不動産売買時、司法書士に登記申請を委託する場合、買主側がこちらの費用を負担するのが一般的です。
所有権移転登記は、買主が行う重要な手続きであり、基本的に売主は登記の手続きをする必要がありません。
そのため、買主が中心になって手続きを行います。
ちなみに、司法書士に支払う費用の金額は、依頼する司法書士によって異なりますが、大体10,000~10万円に収まることが多いです。
住宅ローンの繰り上げ返済手数料
不動産を売却する売主は、その物件における住宅ローンの完済が必要不可欠です。
住宅ローンを組んで購入した物件には、金融機関による抵当権が設定されています。
こちらは、住宅ローンを滞納したときに、担保となる不動産を差し押さえ、競売に出せる強力な権利です。
抵当権が残ったまま不動産を売却すると、買主は「元の所有者が住宅ローンを滞納したら差し押さえられる」と危惧することから、ほとんど買い手がつかなくなります。
売主はこのようなトラブルを防ぐために、売却前に住宅ローンを完済し、抵当権を抹消しなければいけませんが、まだ多くのローン残債がある場合は、毎月定められた返済額に加え、残債もすべて返済するために、繰り上げ返済を申し出なければいけません。
また、金融機関によっては、こちらの繰り上げ返済を行う際、手数料が発生するケースがあります。
金額は金融機関や契約内容によって変わってきますが、一般的には残高の1%程度が目安とされています。
ちなみに、インターネットで繰り上げ返済を行う場合、手数料は無料のケースがほとんどです。
不動産売買に関するその他の費用について
不動産売買では、前述したようなさまざまな手数料の他、以下のような費用が発生することもあります。
・ハウスクリーニング費用
・測量費用
・建物の解体費用
ハウスクリーニング費用
不動産売却を行う売主は、内見前もしくは物件の引き渡し前に、ハウスクリーニングを行うことが望ましいです。
ハウスクリーニングは、特に売却価格には大きく影響しませんが、実施することで購入希望者が増える可能性があります。
不動産を内見に来た購入検討者にとって、室内がキレイかどうかは重要な判断材料であり、ハウスクリーニングが購入の決断を後押ししてくれることが考えられます。
さらに、購入検討者が増加すれば、検討者同士の競争が生まれ、早く売却できたり、値引き交渉の要因を減らせたりすることにもつながります。
また、売主が売却前に行うハウスクリーニングは、当然費用がかかりますが、こちらは清掃する場所や行う作業によって金額が変わってきます。
具体的には、以下の金額が相場です。
・浴室:15,000~20,000円
・キッチン:15,000~25,000円
・レンジフード:8,000~13,000円
・トイレ:8,000~11,000円
・洗面所:9,000~12,000円
・床のクリーニング、ワックスがけ:9,000~16,000(6畳の場合)
・エアコン:10,000~18,000円
中でも、浴室やキッチン、リビングの床をハウスクリーニングでキレイにすることは、購入検討者の好印象につながりやすいです。
測量費用
不動産売買を行うにあたっては、測量が必要になることもあります。
具体的には、土地の境界が明確でない場合や、土地が高額な場合、実際の面積が登記簿と異なる場合などに、買主と売主のトラブルを防止するために行われます。
また、このときには当然測量費用がかかりますが、こちらを負担するのは買主、売主のどちらなのでしょうか?
実は、測量費用については、どちらが負担するのかについて、法律で定められているわけではありません。
ただし、土地を売却するにあたって、境界を確定する必要が生じるのは基本的に売主であるため、測量費用も売主が負担することが多いです。
ちなみに、一般的な測量費用の相場は、約30~80万円ですが、こちらは土地の面積や形状、隣地の数などに影響を受け、大きく変動します。
建物の解体費用
古い建物などを取り壊し、更地の状態で売却する場合、売主は解体費用も負担しなければいけません。
現況のまま不動産を買主に引き渡し、その後買主が建て替えなどの理由で解体する場合は、買主がその費用を負担します。
また、こちらの費用相場については、取り壊す建物の構造によって以下のように変わってきます。
・木造:30,000~50,000円
・鉄骨造:40,000~60,000円
・RC造:40,000~70,000円
これらの相場はすべて坪単価です。
例えば、木造30坪の建物を解体する場合の費用は90~150万円、RC造30坪の建物を解体する場合は120~210万円が相場になります。
現場から廃材を運び出し、廃棄する場所までの移動距離や、建物の中の荷物を残すかどうかなどによっても、金額は上下します。
ちなみに、売主は建物を解体し、更地の状態で売却することにより、解体費用を経費(譲渡費用)にすることができます。
その他、買主が土地の広さや形状をイメージしやすいことや、ハウスクリーニングと同じく、価格交渉の材料を減らせることなどのメリットもあります。
まとめ
ここまで、不動産売買で発生するさまざまな手数料ついて見てきましたが、いかがでしたでしょうか?
売主、買主にかかわらず発生する手数料もあれば、双方のうちいずれかのみが負担するものもあります。
中には、事前にどちらが支払うかを細かく決めておくべき手数料もあるため、後々トラブルに発展しないよう、正しい知識をもって不動産売買に臨みましょう。