不動産投資開始後に実施する拡大、売却、相続・贈与について
不動産投資をスタートさせ、ある程度成功を収めた後は、投資規模の“拡大”を考えることになります。
また、物件を手放す際は“売却”、配偶者や子どもなどがいる場合は“相続”あるいは“贈与”を行う場合もあります。
今回は、不動産投資開始後に実施するこれらの作業について、具体的に解説したいと思います。
不動産投資開始後に実施する投資規模の拡大について
不動産投資開始後に実施する投資規模の拡大は、ある程度1つの不動産で利益を上げ、余裕資金ができた段階で行うことをおすすめします。
複数の物件を所有すると、借入金の額が増え、手元に残る自己資金がとても少なくなってしまうためです。
また、不動産投資における空室リスクなども考えた場合、余裕資金がないまま投資規模を拡大してしまうと、少し計算が狂っただけで、たちまち困窮してしまうでしょう。
もっとも理想的な投資規模の拡大は、最初に購入した不動産で上げた利益を使用して、別の物件を購入するというものです。
ちなみに、投資規模の拡大と言っても、必ず所有する物件を増やさなければいけないわけではありません。
例えば、1,000万円で最初の不動産を購入し、ある程度余剰資金ができた段階で売却して、2,000万円で別の不動産を購入するというのも、立派な投資規模の拡大だと言えます。
投資規模を拡大すればリスクヘッジに繋がる
所有する物件を増やして、投資規模を拡大させる場合、リスクヘッジ効果も生まれます。
例えば、1つしか不動産を所有していない場合、その物件の入居率がゼロになってしまうと、一切収入を得ることはできません。
一方、2つの不動産を所有していれば、たとえ1つの物件の入居率がゼロになっても、もう1つの物件で利益を上げることができます。
また、物件の数が3つ、4つと増えていけば、いずれかの物件で利益を上げられる可能性はアップします。
もっと言えば、最初に購入する不動産、その後に購入する不動産のエリア、広さ、立地を全く別にすることで、入居や退去のタイミングが被りにくくなり、より高いリスクヘッジ効果が期待できます。
投資規模を拡大させるには“優良物件”を見抜く力が重要
書店などに足を運ぶと、“不動産投資で○億円を稼ぐ方法”といったようなタイトルの本がいくつも販売されています。
このような本を著した方は、いわゆる“カリスマ投資家”などと呼ばれる方が多いですが、このような方々も、失敗知らずのままここまで登り詰めたわけではありません。
例えば、空室が生まれやすい不動産を迂闊に購入してしまい、その反省を活かして、優良物件を見抜く力を身に付け、カリスマ投資家となった方も多くいます。
また、近年は、不動産投資における失敗例も、ネットや書籍ですぐにチェックすることができます。
それらで失敗の原因として挙げられることが多いのは、やはり立地、設備についての検討不足です。
つまり、優良物件を見抜く力が、そのまま投資規模拡大の成否に繋がると言っても過言ではないということです。
物件選びのノウハウは、不動産投資におけるとても大きな武器となります。
そのため、それが確立された手ごたえというものを感じるまでは、たとえ余裕資金があったとしても、安易に投資規模を拡大するべきではないと言えるでしょう。
不動産投資開始後に実施する売却について
不動産投資開始後に実施する売却には、大きく分けて2つの種類があります。
1つは、利益確定を目的とした売却です。
不動産投資は、基本的に長期収入を狙って行う方が多いですが、中には5年前後の短期で終了させる方もいます。
このような方には、「不動産投資で○円儲かったらやめよう」と最初から決めている方が多いですね。
例えば、200万円の利益を上げることを目標に不動産投資を実施するとします。
このとき、物件の購入価格が1,000万円であれば、数年間で得た賃料収入と、売却価格を足した金額が1,200万円を上回るとき、200万円の利益を達成したことになります。
そして、不動産投資開始後に実施するもう1つの売却は、他の物件の購入を目的とした売却です。
例えば、1,000万円で1つ目の不動産を購入し、10年間、毎年50万円の利益を出していたとします。
この時点で、手元にはすでに500万円が蓄積されていますよね。
このタイミングで不動産を売却すれば、借入金は完済できます。
また、蓄積された500万円の自己資金を使用し、金融機関から1,000万円の借入をすることができれば、1件目よりも高い1,500万円の不動産を購入できます。
つまり、この売却は、不動産投資用の物件をグレードアップさせ、さらに高い賃料設定にし、より効率的な不動産投資を実施するためのものだということです。
売却した方がいいタイミングは?
上記以外にも、不動産投資開始後に、売却を実施する場合があります。
それは、売却しなければ、投資家の方が不利益を被るタイミングが訪れたときです。
例えば、すぐ近くにある大学が移転する場合、あるいは、すぐ近くにある大手企業が撤退する場合などには、そのエリアにおける競争率が下がる可能性があるため、売却を検討すべきでしょう。
そのまま所有していても、入居者や物件価格は目減りしていくことが予想されます。
もちろん、現在満室であり、賃料も問題なく支払ってくれる優良な入居者が多い場合、売却にはかなりの勇気が必要になります。
ただ、物件価格が下がってしまうと、これまで得た収入をすべて吐き出してしまうほどのダメージを負うことも考えられるため、まだ購入したいと思う他の投資家がいる段階で、思い切って売却するべきだと言えます。
不動産投資開始後に実施する相続・贈与について
不動産投資開始後に実施する相続・贈与では、相続税、贈与税という税金が発生します。
相続税は、文字通り不動産を相続する際に課税される税金です。
財産総額から基礎控除を差し引いた額に対して課税されるものであり、財産総額が基礎控除を下回っている場合は非課税になります。
ちなみに、基礎控除は、3,000万円+法定相続人数×600万円という計算式で弾き出されます。
一方、贈与税は、不動産を生前贈与することで課税される税金です。
相続税と大きく異なるところは、基礎控除の金額が極端に安いというところです。
贈与税の基礎控除は110万円であり、課税対象額は、贈与額-110万円という式で計算されます。
相続時精算課税制度を活用すれば、贈与税額は軽減される
不動産投資開始後に実施する贈与において、ぜひ活用したい制度の1つに、“相続時精算課税制度”というものがあります。
これは、贈与時の贈与税額が軽減される代わりに、相続の際、贈与した財産を足し戻して、相続税を計算するという制度です。
この制度を活用すれば、生前贈与される財産が2,500万円を超えない限り、贈与税は非課税になります。
また、2,500万円を超えたとしても、適用される税率は20%であり、これは通常の贈与の半分程度です。
もっと言えば、例えば1,000万円の不動産を贈与する場合、この制度を利用することで、贈与税に加えて相続税も非課税になります。
なぜなら、先ほど解説したように相続税の基礎控除はとても大きいためです。
まとめ
ここまで、不動産投資開始後に実施する投資規模の拡大、売却、相続・贈与について解説してきましたが、いかがでしたか?
不動産投資には、いずれ規模を拡大させるタイミング、物件を売却するタイミング、相続・贈与するタイミングが訪れます。
そのため、利益を上げるという目的を達成したとしても、次はうまく投資規模を拡大する、うまく売却する、うまく相続・贈与するというところに、目的を切り替えなければいけないのです。