相続

“婚外子”への不動産相続におけるポイントについて

被相続人が不動産等の財産を相続する子どもは、必ずしも一般的な子どもとは限りません。
場合によっては、“婚外子”が相続人となるケースもあります。
今回は、被相続人の方に向けて、あまり聞き慣れない言葉である婚外子の概要について、そして婚外子への不動産相続におけるポイントについて解説します。

婚外子の概要

婚姻届を提出していない男女間に生まれた子どもを“婚外子(こんがいし)”といいます。
“非嫡出子(ひちゃくしゅつし)”と呼ばれることもあります。
正確には、法律上の婚姻関係が成立していない男女の間に生まれた子どもであり、北欧などでは特に出生率が高くなっています。
以前は戸籍の続柄欄において、法律上の婚姻関係にある男女間から生まれた“嫡出子(ちゃくしゅつし)”と区別するために、“男”もしくは“女”という記載がされていました。
現在は、2004年の戸籍法施行規則改正により、嫡出子と同じく“長男”、“長女”といった記載に変更されています。
このような記載の変更があった背景には、「一見して婚外子とわかる記載方法は、プライバシーの侵害にあたる」と指摘した東京地裁判決があります。

嫡出子について

先ほど少し触れましたが、婚外子とは逆に、婚姻届を提出している男女の間に生まれた子どもを嫡出子といいます。
また、嫡出子には、婚外子にはない以下のような細かい定義が存在します。

・婚姻中に妊娠した子ども
・婚姻後、201日以後に出生した子ども
・父親の死亡後もしくは離婚後300日以内に出生した子ども
・未婚時に出生して認知され、その後父母が婚姻した場合の子ども
・未婚時に出生してから父母が婚姻し、父親が認知した子ども
・養子縁組の子ども

婚外子への不動産相続は可能なのか?

結論からいうと、被相続人は婚外子に不動産等の財産を相続することができます。
これは、婚外子が嫡出子と同じように相続権を持っているからです。
ただ、これは父親から認知されている婚外子にのみ言えることです。
つまり、被相続人となる父親が認知していない婚外子に対しては、嫡出子と同じように不動産等を相続することができないというわけです。

婚外子を認知する方法について

認知とは、婚姻関係にない男女の間に生まれた子ども、つまり婚外子について、父親が存在を認めることをいい、これによって法律上の父子関係が成立します。
相続でいうと、被相続人と相続人の関係が出来上がるということです。
また、認知の方法としては、主に以下の3つが挙げられます。

・胎児認知
・認知届による認知
・遺言による認知

胎児認知

子どもが生まれる前の胎児の段階で行う認知手続きです。
この場合は、母親の同意を得ることで認知ができます。
また、効力は婚外子が生まれた日から発生しますが、出生届を出さない限りその記載はされません。

認知届による認知

婚外子が生まれた後、認知届を提出することによって行う認知手続きです。
この場合は、母親の同意なく、父親の意思のみで手続きできます。
ただし、子どもがすでに成人している場合は、子どもの同意を得なければいけません。
また、認知届をいつ提出したとしても、認知の効力は出生の日にまでさかのぼります。

遺言による認知

不動産等の被相続人となる父親が認知したかったものの、生前はできなかったというような場合に用いられる認知方法です。
遺言を作成した本人(被相続人)が亡くなった時点で効力を発揮するため、婚外子は父が死亡したと同時に、法律上の父の子になります。
ちなみに、遺言で婚外子を認知する場合、被相続人は以下の事項を記載しておかなければいけません。

・子どもを認知する旨
・子どもの母親
・子どもの住所、氏名、生年月日、本籍、戸籍筆頭者

遺言によって認知する場合は、遺言執行者を定めておく必要があり、もし遺言執行者が定められていなかったら、相続人が家庭裁判所で遺言執行者選任の手続きをしなければいけません。
また、子どもを認知する遺言が見つかった場合、遺言執行者は就任してから10日以内に、認知の届出をする必要があります。

婚外子と嫡出子の相続分について

相続人それぞれの相続分は法律で定められていますが、以前まで婚外子の相続分は、嫡出子の1/2しかありませんでした。
しかし、後に最高裁判決により、婚外子と嫡出子で法定相続分に差を設けることは違憲であるとの判決が下されたことで、それ以降に発生した相続においては、婚外子と嫡出子の相続分は、認知されている限り完全に同じとなっています。
よって、例えば被相続人に配偶者、認知されている婚外子がいる場合、不動産等の相続財産は配偶者、婚外子がそれぞれ1/2ずつを受け継ぐということになります。

まとめ

ここまで、婚外子の概要や、婚外子への不動産相続におけるポイントについて解説してきました。
被相続人の中には、「妻との間に生まれた子でなければ、不動産等を相続させられない」と思っている方もいるかもしれませんが、それは大きな間違いです。
ただ、認知をしなければ相続はできないため、どの形式で行うかについては、早めに決定しておきましょう。

カテゴリーで探す

弊社代表著書

弊社代表・中川祐治執筆書籍 「底地・借地で困った時に最初に読む本」 好評発売中です!

底地・借地で困った時に最初に読む本の表紙

全国の有名書店や
Amazonで絶賛発売中!

底地・借地で困った時に最初に読む本
多くの反響をいただいております! amazon売れ筋ランキング3冠獲得(2020年12月20日現在)

各種資料ダウンロード
していただけます

  • 金銭消費貸借契約書
  • 土地交換契約書(等価交換)
  • 土地交換契約書(交換差金あり)
  • 解約合意書(借地)
  • 建替え承諾願い書、建替え承諾書
  • 私道の相互利用に関する合意書
トップへ