不動産相続における必要書類の1つ“除籍謄本”について
不動産相続を行う際は、ありとあらゆる書類を用意しなければいけません。
また、中には普段の生活ではあまり触れる機会のない書類もあります。
そのうちの1つが、今回解説する“除籍謄本”です。
ここからは、除籍謄本の概要や取得方法などを中心に解説していきたいと思います。
除籍謄本の概要
その戸籍に誰も存在しないことを証明する書類を“除籍謄本”といいます。
戸籍に記載されている人物が結婚したり、死亡したりすると、その人物は別の戸籍に移ったり、削除されたりします。
これが続くと、その戸籍は誰もいない状態になり、最終的には閉鎖されてしまいます。
また、この閉鎖された戸籍が“除籍”であり、その内容の写しが除籍謄本です。
不動産相続においては、受け継いだ不動産の名義を変更する際に用いられます。
戸籍謄本とは何が違うのか?
“戸籍謄本”に関しては、皆さんも聞いたことがあるでしょう。
これは、戸籍に記載されている全員の身分事項を証明するものであり、除籍謄本と違って閉鎖はされていません。
つまり、“全員が戸籍からいなくなったことを証明する戸籍謄本”が、除籍謄本だということです。
ちなみに、戸籍謄本と似た書類に“戸籍抄本”がありますが、これは戸籍に記載されている人物のうち、1人または複数人の身分事項を証明するものです。
身分事項証明が限定的だというところが、戸籍謄本とは異なる点です。
改製原戸籍について
不動産相続では、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を集めなければいけません。
よって、除籍謄本だけでなく、“改製原戸籍”も取得する必要があります。
これは、法改正に伴い、戸籍の改製(作り直し)が行われる前の古い戸籍を指しています。
つまり、除籍謄本だけでは、古い戸籍に記載された被相続人の情報を明らかにできないため、改製原戸籍も併せて取得しなければいけないということです。
除籍謄本の取得方法について
不動産を受け継いだ相続人は、以下のいずれかの方法で除籍謄本を取得することになります。
・窓口請求
・郵送請求
・専門家への依頼
窓口請求
除籍となった本籍地の市区町村役場に直接出向き、窓口で請求するという方法です。
また、窓口請求の際は、以下の書類が必要になります。
・請求者の本人確認書類
・請求書
・親族関係が確認できる戸籍等の書類
ちなみに、発行手数料が1枚につき750円かかります。
郵送請求
市区町村役場に必要書類を送付し、取得するという方法です。
本籍地が遠く、直接役所の窓口に行けない場合などに有効です。
請求書とその他の添付書類を同封して送付すれば、およそ1週間程度で返送されます。
また、必要な書類は窓口請求をする場合とそれほど変わりませんが、以下のものは別に用意しなければいけません。
・切手を貼付した返信用封筒
・手数料分の定額小為替(1枚750円)
郵送請求の場合、手数料の支払いは現金や収入印紙、切手などで行うことができませんので、定額小為替を使用します。
ちなみに、定額小為替は郵便局で購入することができます。
専門家への依頼
先ほども少し触れましたが、被相続人の出生から死亡までの記録は、1つの除籍謄本にすべて記載されていないこともあります。
よって、複数の除籍謄本、改製原戸籍を取得しなければいけないケースも珍しくありません。
また、これらの書類は、過去に本籍のあった市町村役場でしか取得できないため、相続人にとってはかなり手間のかかる作業となります。
そんなときは、司法書士あるいは弁護士といった専門家に依頼し、取得を代行してもらうことも考えましょう。
ただ、専門家への依頼には、除籍謄本1枚分の手数料750円のほか、取得代行手数料(約3,000~)もかかります。
また、代行手数料は法律や規則で定められているわけではなく、各専門家の事務所によって大きく変動するため、前もって留意しておきましょう。
除籍謄本の保存期間について
除籍謄本の保存期間は、平成22年に戸籍法が改正され、除籍となったときから150年とされています。
よって、少なくとも平成22年からの分であれば、除籍後150年は市区町村役場に保管されることになります。
ただ、それ以前の保存期間は80年とされていました。
80年を経過した時点で、市区町村役場がすぐに廃棄しているとは限りませんが、その後廃棄するかどうかは市区町村役場に委ねられます。
また、これは改製原戸籍も同じであるため、場合によっては古い戸籍を取得するのが困難になる可能性もあります。
ちなみに、不動産相続で除籍謄本が取得できない場合、「除籍等の滅失により、除籍謄本を交付することができない」という旨の市区町村長の証明書が提供されることで、問題なく相続不動産の名義変更ができます。
まとめ
ここまで、不動産相続における重要な書類の1つ、除籍謄本について詳しく解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?
1つの必要書類に関することだけでも、これほど覚えなければいけないルールがあるのが、不動産相続の難しいところです。
よって、今後不動産を受け継ぐ可能性のある方は、早めに各書類について勉強しておきましょう。