地代

地代を設定するために用いる7つの算出方法について

底地(貸宅地)を貸し出す地主様は、必ず1度大きな壁にぶつかります。
それは、「地代をどうやって設定すればいいのか?」という壁です。
地代の設定にはさまざまな算出方法を用いるため、どれを採用するかは別として、まずは一通り把握しておくことをおすすめします。
詳しく見てみましょう。

新しく底地(貸宅地)を貸し出す際に設定する地代の算出方法

まずは、地主様が新たに底地(貸宅地)を貸し出す際に設定する地代の算出方法を見ていきましょう。

積算法

投資した金額から年間の利益を想定した期待利回りを利用し、地代を算出する方法を“積算法”といいます。
これは、地代設定の際に用いる方法として、もっともポピュラーなものですね。
具体的には、(更地価格×期待利回り)+諸経費という式で弾き出した数字が、新しく設定する地代となります。
ちなみに“諸経費”の中には、固定資産税や都市計画税、各種保険料、維持管理費、減価償却費が含まれています。

賃貸事例比較法

対象の底地(貸宅地)と似た事例をもとに、地代を弾き出す方法を“賃貸事例比較法”といいます。
この方法を実践するには、まず膨大な量の地代設定事例のデータを収集し、集まった情報の中から土地の特徴や契約期間などが近い底地(貸宅地)の事例を見つけなければいけません。
また、基本的には、底地(貸宅地)の貸し出しがよく行われている地域や時期に用いられることが多いですね。
逆に、地方などの過疎地では、似た事例が見つかりにくいケースが多いため、あまり用いられることがありません。

収益分析法

借地人様が個人ではなく法人である場合、地主様は地代の算出方法として“収益分析法”を用いることができます。
これは、借地人様(法人)の売上高を分析し、一定期間に不動産がどれくらいの利益を上げるのかを求め、諸経費を足して算出した地代を設定するという方法です。
その性質から、貢献度の高い事業が行われている場合は地代が高く設定され、貢献度が低い場合は安く設定されます。
ただ、地代を算出するために必要な分析や調査は、その道のプロでも容易にできることではありません。
したがって、この方法を用いて地代を設定している地主様は、かなり稀有な存在だと言えます。

地代を変更する際に用いる算出方法

借地契約は、最初に設定した地代のまま継続していくわけではありません。
場合によっては、地主様から借地人様に向けて、地代の変更を提案することもあります。
また、その場合に用いる算出方法は、先ほど紹介した方法とは異なります。
詳しく見てみましょう。

差額配分法

対象の底地(貸宅地)における現時点の適正地代と、現時点の実際の地代を用いる算出方法を“差額配分法”といいます。
具体的には、上記2つの地代の間にある差額を求め、そこから地主様に帰属する金額を割り出し、その額を地代に加算したり、減算したりする方法ですね。
ちなみに、現時点の適正地代は、積算法あるいは賃貸事例比較法によって弾き出されますが、基本的には積算法が用いられます。
また、”地主様に帰属する金額“とは、地価が変わったことによる地代の変動分を地主様・借地人様で配分したとき、地主様に配分される分を指しています。

利回り法

更地価格に“継続賃料利回り”をかけて弾き出した金額に、諸経費をプラスした額を地代に設定する方法を“利回り法”といいます。
“積算法=利回り法”という認識を持っている方は多いですが、正確にいうとこれら2つの算出方法は式が微妙に異なるため、混同しないように注意しましょう。
式に当てはめるのは期待利回りではなく、あくまで継続賃料利回りです。
ちなみに、継続賃料利回りとは、底地(貸宅地)の純利益におけるその底地(貸宅地)に対する割合をいい、現時点の地代で合意した時点における更地価格を、現時点の地代で合意した時点における地代で割って算出します。
また、実際に継続賃料利回りを弾き出す際には、更地価格の変動の大きさ、周辺エリアでの事例における利回りなども考慮されます。

スライド法

現行の地代に、前回の地代設定時から現在までの各種変動率(地価、諸物価、所得水準などの変動率)を示す各種指数を総合的に考慮して求めた“変動率”をかけ、これに諸経費等を加えて地代を算出する方法を“スライド法”といいます。
ちなみに、上記の“各種指数”には、消費者物価指数や市街地価格指数、家賃指数などが該当します。
ただ、変動率を決定するにあたって、どの指数を用いるのかについては、具体的には定められていません。
また、スライド法には用いる式が複数あり、以下のいずれかを用いることで、地代の設定ができます。

①純地代×変動率+諸経費
②実際支払賃料×変動率
③実際実質賃料×変動率

実際支払賃料は、通常借地人様が地主様に支払っている地代を指し、実際実質賃料は、借地人様が地主様に支払う地代だけでなく、共益費や保証金・敷金の運営益、保証金・礼金の償却額なども含まれます。

賃貸事例比較法(地代変更時の場合)

先ほども解説した賃貸事例比較法は、新しく底地(貸宅地)を貸し出す際に設定する地代を算出する際と、地代を変更する際では、微妙に使い方が違います。
地代を変更する際に賃貸事例比較法を用いる場合、参考にするのは“継続中の借地契約で地代を変更した事例”でなければいけません。
また、当然事例を参考にする方法ですから、単に地代を変更して設定した例でなく、今回地代を変更する底地(貸宅地)に“似た事例”を探す必要があります。
ただ、そのような事例は簡単に見つかるものではなく、もし見つかったとしても、参考にできるほど多くのデータは集まらないことが多いです。
したがって、この方法で地代を変更して設定するという選択肢は、最初から外しておいて良いでしょう。

どの方法がおすすめなのか?

新しく底地(貸宅地)を貸し出す際に設定する地代の算出方法、地代を変更する際に用いる算出方法を計7つ見てきました。
新しく貸し出す場合について、最も重要なことは、その算出された地代で『借りてもらえるのかどうか』に尽きます。借地人様も近隣の相場などを調査し、この程度の地代であれば借りてもやっていけるという目安を決めることになるます。その借地人様の目安と地主様の希望に大きな違いがあれば、賃貸借は成立しませんので諦めます。その後、地主様は次の借地人様を探すわけですが、次の借主候補がなかなか見つからないとなれば、地主様の希望する地代が借り主側の考えよりも高いのかもしれませんので、見直しが必要となります。そうやって、計算上算出された地代の調整を行い、借地人様を見つけることになります。

まとめ

ここまで、地代を設定するために用いる7つの算出方法をまとめて解説してきましたが、いかがだったでしょうか?借り主側に説明がつく算出方法での地代設定が重要ですが、その地代が借り主側の目安と合致するものかどうかは別の問題ということが分かりました。新規の借地権設定には、地代の価格設定のほか、権利金や契約条件など重要なことを決める必要がありますので、底地借地の専門家に相談することをお勧めします。

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