相続財産管理人の役割について
財産を相続する人がいないとき、通常ならその財産は放置される事になるでしょう。
しかし、それでは困る人もいます。
そこで、必要があれば相続財産管理人が選任されるのですが、具体的な役割をご存じない方も多いかと思います。
そこで今回は、相続財産管理人の役割について、詳しく解説しましょう。
主な役割
相続財産管理人の主な役割は、次の5つです。
・相続人の有無の調査
・財産についての調査
・財産の管理・換価
・財産からの支払い
・国庫への帰属
これらについて、権限を持っています。 では、それぞれの権限について、詳しく解説していきます。
相続人の有無の調査
まず行われるのが、誰か相続する人がいないかについての調査です。
一人もいないか、あるいは全員が相続放棄した場合に選任されるのですが、もしそれ以外に相続人がいた場合、その人が財産を相続すれば役割を終える事になります。
一人もいないとされている場合は、被相続人の戸籍を生誕から死没まで、細かく確認していきます。
誰も知らないところで、子どもが生まれていた可能性もあるからです。
また、その父母や直系尊属、兄弟姉妹などの戸籍も調査対象です。
子どもや孫が死亡している場合は、その分も調査をしていきます。
兄弟が多い人などは、かなりの人数になるでしょう。
一見、戸籍を見るだけなら簡単なように思えるかもしれませんが、人によっては転籍や結婚、養子縁組、離婚などでかなり変更されている事もあり得ます。
特に、遠方のものは取り寄せるのも大変です。 古いものは、手書きで書かれている事も多いので解読にも労力が必要でしょう。
財産についての調査
どのような財産があるかを調査する為、不動産なら登記事項証明書や固定資産評価証明書などが必要です。
また、預貯金や有価証券についても、その残高がわかる書類を用意して、その額をまとめなくてはいけません。
もしかしたら、隠されていた財産が見つかる事もあり得るでしょう。
また、誰も知らないまま借金を抱えている事も考えられます。
そうしたことも、きちんと把握しておく必要があるのです。
財産の管理・換価
財産に対しては、管理する権限を持ちます。
その中には、保存や利用、改良などの行為も含まれています。
利用や改良については、その性質を変えない範囲とされています。
例えば、対象となる住居で雨漏りがしているようなら、保存の為にそれを修理する契約ができます。
また、その管理をしている間、それを利用して利益を得る事も可能です。
改良行為として、その住居にエアコンを設置することも権限の範囲に含まれます。
これらの範囲を超えるような行為が必要な時は、裁判所に申請して許可を得てから行われます。
特に、不動産を売却するなどの行為がこれにあたります。
許可を得て、不動産を売却した場合は、その代金を入金するための口座を新たに開設します。 それも、財産の一部として扱われるのです。
財産からの支払い
債権者がいるとき、財産から支払いも行います。
また、遺言などがある場合、それに従って財産の分与も行います。
この場合は、相続人以外の受遺者です。
また、特別縁故者がいる場合は、その人に財産を分与します。
特別縁故者は、内縁関係や事実上の養子関係にあった人物、あるいは仕事ではなく被相続人の介護をしていた人物、特に親密な人物などが該当しますが、支払いをする順序としては、相続債権者が優先され、次いで受遺者となり、その次に分与を受けられます。
本来は権利がないので、優先順位は下になります。
国庫への帰属
上記すべての手続きが終わって、相続財産管理人としての報酬付与も終わったうえで財産が残っていた場合は、国に納められることとなります。
その手続きが、最後の役割になります。
また、国庫帰属の際はそれまでに何に対していくら支払ったか、すべて国に報告する必要があります。 その為、不正利用などはできないものと思っていいでしょう。
何故必要なのか?
管理をする人は、必ず必要というわけではありません。
中には、放置される財産もあります。
では、なぜ必要とされるのでしょうか?
選任にあたっては、それを申し立てる人がいます。
それは、被相続人の債権者や相続放棄をした人、あるいは特別縁故者です。
それぞれ、どのような理由から申し立てるのでしょうか?
債権者は、もちろん貸したお金を回収する事が目的です。
相続する人がいなければ、いくら財産があっても返済を求める事はできません。
勝手に持っていくのは、犯罪になるからです。
そこで、支払いを求めて管財人の選任を申し立てるのです。
相続放棄をした場合は、基本的に財産とは関わりがありません。
しかし、相続放棄していても、それを管理する義務はあります。
財産を壊した、もしくは家屋などが倒壊した場合は周辺の住民に損害を与える事もあるでしょう。
その場合は、損害賠償請求をされる事もあり得るのです。
そういった中で、管理を続けたくない場合に管財人を頼むのです。
そうして管理を任せる事で、管理義務から解放されます。
相続を放棄しても、義務だけは残る事に注意しましょう。
特別縁故者は、相続人以外で近しい関係にある人です。
権利はなくても、一定の割合で財産分与を受けられるのですが、それには管財人が必要となるのです。
ただし、相続人とは違って自動的に相続される事はありません。
その資格があるという事を、裁判所で認めてもらえなくてはいけない為、最初は利害関係人という名目で選任の申し立てを行う事になります。
まとめ
相続財産管理人にはどのような役割があるのか、詳しく解説しました。
相続財産を管理するだけではなく、その為に必要な調査などもその役割に含まれます。
ただし、相続人がいないからといって、自動的に選任されるものではありません。
管理する人を必要とする人が、裁判所に申し立てて初めて選任されるものなので、その点も気を付けましょう。