【不動産相続】農地の相続、登記について知っておこう
不動産の相続人の中には、一般的な宅地ではなく、“農地”を受け継ぐことになったという方もいます。
また、農地の相続や登記には、一般的な土地にはないさまざまな特徴があります。
今回は、被相続人あるいは相続人に向けて、農地の相続、登記に関することを解説したいと思います。
ぜひ参考にしてください。
農地を受け継ぐことができる人について
農地は通常の土地とは違い、“農地法”という法律の制限を受けることになっています。
これは、農地の保護や権利関係に関する基本的な法律で、農地は耕作者が所有することが適当と認め、耕作者の地位の安定と農業生産力の増進を図ることを目的としています。
また、農地を売買あるいは贈与で取得した場合、受け取り手の方は登記前に、農地法第3条で定められた許可を得なければいけません。
一方で、農地を相続によって受け継いだ場合は、上記の許可を得なくても登記ができます。
つまり、相続であれば、農地は基本的に誰でも受け継ぐことができるというわけです。
これら贈与・売買によって取得したケース、相続によって取得したケースに関しては、混同している方も多いため、注意してください。
わかりやすく表にまとめておきます。
状況 | 許可・制限 |
相続で農地を取得した | 許可、制限なく権利の移転(登記)が可能 |
売買、贈与で農地を取得した | 農地法第3条に定められた農業委員会の許可がないと権利が移転(登記)できない |
農地を受け継いだ後の流れについて
農地を受け継いだ後は、早めに以下の2つの手続きを行わなければいけません。
・登記
・農業委員会への届出
農業委員会への届出に関しては、権利取得を知った日から概ね10ヶ月以内に行う必要があります。
もし、相続があったにも関わらず、届出をしなかったり、嘘の申請をしたりした場合は、10万円以下の罰金を科される可能性があるため、覚えておきましょう。
また、農業委員会は、すべての自治体に設置されているわけではありません。
東京や神奈川などの都市圏にも設置されていない自治体はあるため、どこに届出をすれば良いかわからない場合は、役所に問い合わせてみましょう。
農地相続の良い点、悪い点について
農地相続の良い点として挙げられるのは、主に以下の点です。
・活用すれば資産になる
・農作物を育てられる
・貸し出せば賃料を得られる
特に、資金源となる土地を手に入れられるというのは、農地相続の大きなメリットの1つだと言えるでしょう。
しかし、農地の相続は、決して良いことばかりではありません。
例えば、以下のような点は悪い点だと言えるでしょう。
・活用に失敗すると“負動産”になる
・維持管理に手間とコストがかかる
・手放したくても手放せない
中でも最大のデメリットは、負動産になったとしても、簡単に手放せないという点でしょう。
なぜなら、農地の売却には制限があるからです。
農地の買い手として認められているのは、農家または農業生産法人のみであり、さらに以下の要件をすべてクリアしている方でなければいけません。
・農地を取得後50a(約1,512坪)以上の面積を所有している
・所有しているすべての農地で農業が行われている
・常に継続して農業を行っている
・農業に必要な機材や人材を所有し、その数が適正である
つまり、農地を受け継いだ方にどれだけ売却の意思があったとしても、買い手がなかなか見つからず、売却が難航する可能性は高いということです。
農地の相続放棄について
一般的な宅地等と同じように、農地も相続放棄をすることができます。
また、相続放棄をすれば、どれだけ荒れ果てた農地であっても、その相続人は受け継がなくて済みますが、この際には他の財産も同時に放棄することになります。
具体的には、預貯金や居住用建物、有価証券などの財産です。
よって、もし被相続人が莫大な預貯金を所有している場合であれば、どれだけ農地が荒廃した状態であっても、なかなか簡単には相続放棄できないでしょう。
ちなみに、相続放棄の申請は、相続開始から3ヶ月以内という期限があるため、相続と放棄を天秤にかけている間に、期限が切れないように注意してください。
農地の相続税について
農地も土地の一種であることには変わりないため、当然相続税の対象になります。
ただ、農地を引き継いだ方が、その土地だけでなく、農家としての立場も受け継ぐ場合は、一定の要件のもと、相続税の一部猶予が受けられます。
ただ、一度猶予を受けられたとしても、その後以下に当てはまってしまうと、それまで猶予されていた相続税+利子税が課税されるため、注意しましょう。
・受け継いだ農地を譲った
・受け継いだ農地を貸し付けた
・受け継いだ農地を転用した
・農業を辞めた
・猶予の継続届出書が提出されなかった
まとめ
ここまで、農地の相続、登記に関する重要なことについて解説しましたが、いかがでしたでしょうか?
農地を相続するケースはそれほど多くありませんが、すでに両親が農業を営んでいたり、農地を所有していたりすることが判明している方は、早めに前述の知識を身に付けておきましょう。
そうすることで、いざ相続が発生した際に、スムーズに行動できます。