契約書が手元にないとき、借地人様が取るべき行動とは?
借地人様の中には、契約内容の確認などをしようとしたときに、借地契約書が手元にないことに気付いたという方もいるでしょう。
では、契約書が手元にないことがわかった場合、借地人様はどのように行動すればいいのでしょうか?
詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。
借地契約書の概要
借地契約書は、土地賃貸借契約書とも呼ばれるものです。
文字通り借地契約を結ぶ際に使用する書類です。
借地人様は一定の地代を支払う代わりに、地主様の持つ土地の使用収益が認められます。
こちらが借地契約です。
例えば家を建てるとき、土地の購入費用が不足していたとします。
このとき借地人様は借地契約を結ぶことで、購入よりも安く敷地を借りられます。
また賃貸借契約については、口約束でも成立します。
そのため、借地契約書に作成義務はありません。
ただし事後のトラブルを防ぐには、契約時の取り決めを書面化して残す必要があります。
このことから、借地契約書を交わさずに借地契約が締結されるケースは稀です。
借地契約書の記載内容
借地契約書に記載されている内容としては、まず当事者の名前と住所が挙げられます。
借地人様、地主様の名前と住所については必ず記載します。
その他には主に以下のような内容が記載されています。
・土地の住所
・面積
・土地を借りる目的(住居を建築するなど)
・毎月の地代 など
また禁止事項や契約違反をした場合の罰則規定などもあれば記載します。
こちらは借地人様と地主様の間に相違がないように注意しなければいけません。
ちなみに、更新料や承諾料の詳細が記載されるケースも多いです。
借地契約書作成の流れ
借地契約書は一般的に、地主様の作成したものが借地人様に提示されます。
借地人様が内容を確認し、異議がなければお互いに記名押印をして完成させます。
また借地契約書を作成する際は、インターネットで公開されている雛型を使用できます。
ただし借地契約書に記載すべき内容は、当事者の事情などによって変わってきます。
そのため、専門家に相談して作成するのが安心です。
ちなみに記名押印された借地契約書の内容は法的効力を持ちます。
一旦作成・合意してしまうと、簡単には覆せません。
契約書が手元にないとき、借地人様が取るべき行動①不動産仲介業者に確認する
借地契約の更新を不動産仲介業者がしているという場合、基本的には契約書が手渡されているはずです。
したがって、まずは不動産仲介業者に対して、契約書を渡し忘れていないかどうかの確認をしましょう。
このとき、もし不動産仲介業者が契約書を手渡すのを忘れていたのであれば、借地人様が交付を依頼したときに、拒否されることはありません。
契約書が手元にないとき、借地人様が取るべき行動②地主様に確認する
不動産仲介業者に確認し、すでに契約書が手渡されていることが判明した場合、借地人様は、地主様に契約書が交付されているかどうかも確認しましょう。
借地人様に契約書が手渡されているのであれば、当然地主様も所有しているはずです。
普段あまり地主様と話す機会がないという場合、契約書交付の有無のみを、地主様に確認するのは少し気が引けるかもしれませんが、これは非常に大事なことのため、致し方ありません。
契約書が手元にないとき、借地人様が取るべき行動③自宅にないかどうかもう1度確認する
地主様が、不動産仲介業者から契約書を交付されていることが判明した場合、借地人様が紛失してしまっている可能性が高いです。
先ほど、借地人様に契約書が手渡されているのであれば、地主様にも手渡されているはずだと言いましたが、その逆も然りです。
地主様のみが交付されて、借地人様のみが交付されないということは考えにくいため、もう1度しっかり自宅にないかどうかを確認しましょう。
借地契約書が見つからない場合のデメリット
借地権者様が契約書を紛失し、見つからなかった場合は以下のデメリットが生じます。
・地主様が特定できなくなる
・契約期間がわからなくなる
・更新料の取り扱いがわからなくなる
・トラブルの発生時不利になる可能性がある
地主様が特定できなくなる
借地契約書が見つからないと、借地人様は地主様が特定できなくなります。
つまり誰から土地を借りているのかわからなくなるということです。
もちろん、地主様の氏名などは覚えているかもしれません。
しかし住所や電話番号まで詳細に覚えている方は少ないでしょう。
このような場合、地主様との連絡を取るのが困難になります。
また地主様からの連絡に気付かない可能性も高くなります。
契約期間がわからなくなる
借地契約書が見つからないと、その土地の契約期間もわからなくなります。
アパートやマンションなどの場合、2年契約など短期的に更新をすることが多いです。
一方土地を貸す場合、20~30年など長期的な契約をすることがあります。
もし当初の契約書を紛失したら、細かい契約の年数がわからなくなる可能性があります。
また借地権の種類についてもわからないことが考えられます。
こうなると、今後の土地活用に関する見通しも立てづらくなります。
更新料の取り扱いがわからなくなる
借地契約書を紛失した場合、更新料の取り扱いもわからなくなる可能性があります。
借地契約では、契約更新の際に更新料が発生することがあります。
合意で条件を決める合意更新の際に支払うのが通常です。
法定更新の場合でも、“次回更新時に支払う”と定められることがあります。
しかし、こちらは法律で義務付けられたものではありません。
そのため契約書がなければ、借地人様はそもそも支払い義務があるのかもわかりません。
また更新料があることだけわかっていても、金額がわからなければ支払えません。
トラブルの発生時不利になる可能性がある
借地契約書が見つからないと、地主様とのトラブルで不利になる可能性があります。
借地人様と地主様との間では、契約上のトラブルが起こることがあります。
このとき双方の主張が食い違うと、裁判などの手続きを行わなければいけません。
しかし、このとき借地契約書がないと不利な判定をされるおそれがあります。
「口ではこう言っていた」というようなものは証拠になりません。
そのため将来のことを考えると、契約書がないことはリスクが高いです。
借地人様と地主様、双方が契約書を失くしてしまった場合は?
借地人様のみが契約書を紛失している場合、地主様が所有する契約書をコピーさせてもらうことができれば、その問題は解決します。
では、借地人様と地主様、双方が契約書を失くしてしまった場合は、どのように解決すればいいのでしょうか?
結論から言うと、双方が契約書を紛失した場合は、もう1度契約書を作成し直す必要があります。
ただ、契約書を作り直すと言っても、新たに契約を結び直すわけではありません。
したがって、旧法が適用された借地契約であれば、そのまま旧法に基づいた契約書が新たに作成されることになります。
また、もちろん新法が適用された契約の場合は、新法がそのまま適用されます。
契約書がなくても借地契約が存在する理由
先ほど双方が契約書を紛失した場合、新たに契約書作成し直すという話をしました。
こちらも前述の通り、これによって新たに契約を結び直すわけではありません。
契約書がなくても、一度結ばれた借地契約は存在します。
借地契約存在の条件は以下の2つです。
・借地上の建物が利用可能である(朽廃していない)
・地代をきちんと支払っている
これらが満たせていれば、とりあえず借地契約は存続します。
また借地契約書がない場合でも、契約期間は借地借家法によって定められています。
具体的には建物の構造にかかわらず一律で30年以上です。
よって細かい期間がわからなくても、30年以上契約期間があるということはわかります。
契約書がないと借地権を売れない?
ここからは少し余談になります。
借地権を売却したいときには、必ず契約書を用意しないといけないと思っている借地人様が多くいますが、それは間違いです。
契約書を用意しなくとも、地代を支払っている事実を証明できる書類(領収書、振込通知書など)と、借地上の建物の名義の登記(借地人様本人のもの)があれば、借地権は売却できます。
ただ、だからといって、契約書がないまま、ほったらかしにしていても良いという理由にはなりませんので、そこは勘違いしないようにしましょう。
冒頭でも触れたように、少し契約内容においてわからない点などをチェックしたいときにも、契約書は重宝します。
まとめ
ここまで、契約書が手元にないとき、借地人様が取るべき行動について解説しました。
借地権の売却時など、契約書がなくても問題ない場面はあるものの、契約を結んでいる以上、契約書を所有しておくというのは当然のことです。
また、1度契約書を失くしてしまうと、面倒な手続きをしなければならないこともあるため、紛失しないように、必ずわかりやすい場所に保管しておくことをおすすめします。