土地を等価交換することで発生する3つのデメリット
土地を活用する方法の1つに、等価交換という方法があります。
自分が所有している土地を含む一帯を業者が開発する際に、売却するのではなく出資するという形をとることで、その開発によって建てられた建物と土地の権利を出資した分だけ所有するという方法ですが、実はそこにデメリットが潜んでいることをご存知でしょうか?
どのようなデメリットがあるのか、紹介します。
等価交換の概要
等価交換とは、等しい価値のものを相互に交換することをいいます。
特に土地の所有者と開発業者が協力し合うものを指しています。
まず、これらが協力し合って土地に建物を建てます。
その後、完成後の土地の所有権の一部と建物の所有権の一部を交換し合います。
このとき交換する割合は等価です。
こちらが土地の等価交換で、等価交換方式とも呼ばれます。
こちらの仕組みを利用すると、土地の所有者は建築自己負担なしで土地を活用できます。
デメリット① 実質的に土地を手放す必要がある
土地の等価交換でよく見られるのが、保有している土地の上にマンションを建てるので土地を提供し、その代金分としてマンションの所有権を得られる、という形です。
しかし、マンションの建築費などがかかるため、当然その土地は今までどおり自分のもの、という訳ではありません。
不動産の所有権については、主に建物部分が該当することになるので、土地についてはあくまでもその建物部分に付随した共有持分に限られることとなるため、実質的にその土地に対する所有権は失われることになるのです。
これまでは自分だけの土地だったのが、今後はそのマンションを建築した業者との共有となってしまうことに抵抗を覚える人もいるでしょう。
もう土地を自由にする権利はなくなってしまうため、人によっては抵抗があるかもしれません。
特にその傾向が強いのが、自分で購入したという訳ではなくこれまで先祖から連綿と受け継がれてきた土地の場合です。
話を聞いたときは良い話だと思ったものの、取り返しがつかなくなってから後悔の念が押し寄せてくる、ということも珍しくはありません。
ちなみに、このときに地主のものとなる分の床面積を、還元床というのですが、この割合についても納得がいかずにトラブルとなる場合もあります。
この割合を決定するまでに長い時間がかかることも珍しくはなく、決定してからもいざ受け取った段になって、思ったよりも狭いなど不満を抱くこともあり得ます。
しかし、その条件で契約してしまった以上はどうにもならないので、還元床については決定するまでによく話し合って、納得がいかない場合は契約しないようにした方がいいでしょう。
デメリット② 利回りが高くない
建物の一部を等価交換で取得するケースでは、借入などをしないでマンションの一部を取得できることになるのでリスクなどは少なくなるのですが、自己資金でその土地にマンションを建設するケースと比較して利回りは低くなってしまいます。
ローンを組んでその土地に同じようなマンションを建設した場合、そのマンションから得られる収入は全て自分のものとなりますが、土地との等価交換で一部だけを得た場合、その割合に応じて利回りも小さくなるでしょう。
特に、賃貸マンションであれば最初に建設費用を負担したとしても、その後の長期間にわたる収入へと結びつくことになるので、10年後、20年後の収支を計算するとかなりの違いが生じる可能性は高いでしょう。
ただし、自分でマンションを建てた場合は空き室リスクなども自分の責任となり、管理責任なども生じます。
修繕の必要が生じた場合なども考えると、自分でマンションを経営することは一概にいいことばかりとは言えないでしょう。
この点がデメリットとなるのか、それともメリットとなるのかは主に立地条件などで変わってきます。
黙っていても満室となりやすい地域であれば、等価交換による利回りの低下はデメリットになる可能性が高くなります。
また、自己資金での建設と比較して、等価交換の場合は減価償却費も小さくなってしまいます。
その理由には、立体買い換え特例というものが関係しています。
この特例は、土地との等価交換でマンションを得る際に適用条件を満たしている場合だけ、適用される特例です。
マンションを建設した場合、その建築費を耐用年数に応じた長期間の減価償却が可能となるのですが、この特例を受けた場合は課税の繰り延べができる代わりに、減価償却できる金額は少なくなるのです。
減価償却費が小さくなるということは、それだけ所得税や住民税が減税されないということです。
とうなると、そこから生じた収益に対しても節税効果が少なくなるということです。
デメリット③ マンションのイメージはデベロッパー次第
マンションを建設するのは、デベロッパーです。
デベロッパーというのは開発業者のことですが、デベロッパーによって得意としているマンションのタイプがあり、基本的にはそれに従ってマンションが建てられます。
等価交換で土地を提供し、ファミリー向けマンションが出来上がることを創造していたとしても、デベロッパー次第ではワンルームマンションとなる可能性もあるのです。
それでは、考えていた予定が狂うこともあるでしょう。
デベロッパーは、その土地の客層を想定して、それに合ったマンションを建築します。
しかし、事前の話し合いで地主様が納得しない場合は、そもそも取引が成り立たないので等価交換は不可能となるでしょう。
また、事前の話し合いが不十分で、地主様がマンションの具体的な内容について聞かないままに契約をして、出来上がってから後悔するということもあり得ます。
いくら地主様が希望したとしても、デベロッパーはその土地に合わないようなマンションを建設するわけにはいかないので、建設するマンションは事前に確認したほうがいいでしょう。
契約時に具体的なマンションのタイプが決まっていない場合は、一度そのデベロッパーがどのようなマンションをこれまでに建設しているのかを確認してみましょう。
これまでワンルームタイプが多ければ、今回もワンルームである可能性が高くなります。
同様に、ファミリータイプが多ければその可能性が高いでしょう。
タイプだけではなく、イメージも重要です。
周囲を見回してマンションを見れば、同じような広さでも外観や配色、間取りなどは様々です。
建設されるマンションがどのようなイメージになるのかも、これまでそのデベロッパーが建設したマンションをチェックすればわかりやすいでしょう。
自分の土地に建設されるマンションとはいえ、等価交換の契約をするとデベロッパーが建設するマンションに口出しするのは難しくなります。
実際に出来上がったマンションを見てからでは遅いので、最初に詳細な説明をしてもらってから契約しましょう。
等価交換というのは、面倒がないに思えるかも知れませんが実際にはこのようなデメリットもあるということを覚えておきましょう。
デメリットとなる点には、あらかじめ備えておくことが可能な点も多いので、契約前にデメリットを知っておくことで、損害を受けることが少なくなるでしょう。
デメリット④ 権利関係が複雑になる
土地の等価交換には、権利関係が複雑になるというデメリットもあります。
等価交換を行った後は、自身と建築費用の出資者が土地と建物を共有します。
しかしこちらは自身だけで所有していたときよりも、権利関係がややこしくなります。
例えば、等価交換によって分譲マンションを建築したとします。
その後、建築費用を負担したデベロッパーが各部屋を販売したとしましょう。
この場合、土地と建物の所有者がどんどん増えていきます。
そのため等価交換後の相続などで問題起こると、トラブルが複雑化するかもしれません。
デメリット⑤ できる人が限られる
土地の等価交換はできる人が限られます。
等価交換は開発業者との共同事業です。
そもそも開発業者が話に応じてくれなければスタートできません。
そのため、開発業者にとって魅力的な土地を所有していることが前提になります。
いくら自身が等価交換したくても、パートナーがいなければ意味がありません。
このことから等価交換ができる人は限られています。
メリット① 借入金を組まずに事業ができる
さまざまなデメリットを抱える等価交換ですが、こちらにはメリットもあります。
等価交換のメリットといえば、やはり借入金を組まずに事業ができる点です。
土地の所有者は建物投資を行わないことから、自己資金も借入金も不要です。
仮に将来家賃収入が減少したとしても、借入金返済に対する不安はありません。
そのため、事業リスクは極めて小さい土地活用だと言えます。
相続で土地を手に入れたものの、まとまった現金を用意できない方などにおすすめです。
メリット② 譲渡税優遇措置がある
土地の等価交換には譲渡税の優遇措置があります。
こちらは立体買い換えの特例というものです。
等価交換では、所有者が業者に土地を売却することになります。
そのため原則として、その売却益には譲渡所得として所得税と住民税が課されます。
しかし立体買い換えの特例を活用すると、譲渡所得税を100%繰り延べられます。
あくまで繰り延べのため、税金が免除されるわけではありません。
それでも等価交換利用時には税金がゼロになるので便利です。
ただし等価交換に際して現金を受け取っていた場合は注意が必要です。
この現金については、金額に応じた譲渡所得税がかかります。
メリット③ 相続税対策に有効
土地の等価交換は相続税対策としても有効です。
更地の場合、土地の評価額がそのまま相続税を計算するときの評価額になります。
一方土地を等価交換して賃貸物件を建てると、軽減措置が適用され相続税が下がります。
つまり等価交換をして賃貸物件を建てると、相続税対策になるということです。
残された家族に負担をかけたくないという方は、このような対策を取る必要があります。
メリット④ 専門家に任せられる
等価交換のメリットとしては、専門家に任せられるということも挙げられます。
等価交換は、デベロッパー主導で進むことが多いという話をしました。
しかし大規模な建築物の工事や事業の推進には、専門的な知識や経験が必要です。
等価交換であれば、不動産事業のプロであるデベロッパーと共同で事業を行えます。
豊富なノウハウを持つ専門家がリードするため、投資資産としての成長に期待できます。
メリット⑤ マンション以外でも活用できる
等価交換で可能な事業は、マンション経営以外にもあります。
マンション経営は立地条件によって、なかなか入居者が決まらないこともあります。
物件探しをしたことがある方は思い当たる節があるでしょう。
しかし等価交換の場合、ニーズが合致していれば人が住む建物でなくても構いません。
オフィスビルや高齢者施設など、土地柄に合ったプランを考えた事業化も可能です。
もちろん事業計画は綿密に練り、デベロッパーにも話を通しておく必要があります。
またその結果、等価交換が所有地の活用にベストではないとわかることもあります。
このような場合は、他の活用法を考えれば良いだけです。
土地には多くの活用法があります。
一つの可能性が消えたからといって諦める必要はありません。
等価交換を成功させるポイント
土地の等価交換で失敗しないためには、以下のポイントを押さえておくべきです。
・信頼できるデベロッパーを選ぶ
・交換比率の基準を知っておく
メリットだけでなく、リスクもきちんと話してくれるデベロッパーは信頼できます。
このようなデベロッパーを選ぶためにも、複数社から選ぶようにしましょう。
また不動産の所有権を配分する前に、その交換比率の基準を把握しておくのも大切です。
こうすることで、不公平な契約の締結を防止できます。
まとめ
自分が所有している土地を提供して、等価交換としてその土地に建築されたマンションの一部を取得するような契約には多くのメリットがありますが、デメリットも3つほど生じます。
どのようなデメリットがあるのか、事前に知っておくことで備えることもできるでしょう。
契約してしまってからではどうにもならないようなデメリットもあるので、デメリットへの対処は必ず契約前に行いましょう。