新型コロナの影響により、休業を余儀なくされた企業は数多くあります。
また、企業は休業中であっても、従業員を雇用し続ける限りは“休業手当”を支払わなければいけませんが、売上が落ちている企業にとって、これを支払うのは決して容易ではありません。
今回は、そんな企業に向けて“雇用調整助成金”について解説します。

雇用調整助成金の概要

経済上の理由によって事業活動の縮小を余儀なくされた企業が、従業員に対して一時的な休業等を行って雇用維持を図った場合には、企業から従業員に休業手当等が支払われます。
このとき、支払われる休業手当等の一部(場合によっては全部)が国から助成される制度が、今回解説する“雇用調整助成金”です。
また、現在はコロナ感染症にかかる特例措置として、2020年4月1日~9月30日までを“緊急対応期間”と位置付け、さらなる特例措置が実施されています。

対象企業について

以下の条件をすべてクリアすれば、企業は当制度の対象になります。

①コロナの影響によって事業活動の縮小を余儀なくされた場合に、雇用調整(休業)を実施する企業であること

ちなみに、“コロナの影響”とは、以下のような理由で経営状況が悪化していることを指します。
 観光客のキャンセルが相次ぎ、売上が減少した
 市民活動の自粛により、客数が減少した
 行政からの営業自粛要請を受けて休業したことにより、客数が減少した など

また、“事業活動の縮小”とは、売上高や生産量等の事業活動を示す指標の最近1ヶ月(休業した月あるいは前々月でも可)の値が、1年前の同月に比べ5%以上減少していることを指しています。
1年前の同月を比較対象とすることが適当でない場合は、2年前の同月との比較が可能です。

②雇用保険適用事業主であること
③受給に必要な書類を提出すること
④労働局等の実施調査を受け入れること

対象外となる企業について

上記の条件をクリアしていても、以下のいずれかに該当する企業は当制度の対象外となります。

①暴力団または暴力団員またはその関係者である
②企業または企業の役員等が、破壊活動防法第4条に規定する暴力主義的破壊活動を行ったまたは行うおそれがある団体等に所属している
③倒産している
④不正受給を理由に支給決定を取り消された場合に、労働局が事業主名等を公表することに承諾していない

対象となる休業について

当制度の対象となる休業は以下の通りです。

①労使間の協定によって実施されるものであること
②企業が自ら指定した対象期間内(1年間)に行われるものであること
③判定基礎期間(休業の実績を判定する1ヶ月単位の期間)における対象従業員に係る休業の実施日の延日数が、対象従業員に係る所定労働延日数の1/40(大企業の場合は1/30)以上になるものであること
④休業期間中の休業手当の額が、労働基準法第26条の規定(平均6割以上)に違反していないものであること
⑤所定労働日の所定労働時間内において実施されるものであること
⑥所定労働日の全日にわたる休業、または所定労働時間内に部署・部門や職種、役職、担当、勤務体制、シフトなどにより行われる1時間以上の短時間休業、または企業一斉に行われる1時間以上の短時間休業であること

ちなみに、“対象従業員”とは、前述の支給対象となる企業に雇用されている雇用保険被保険者を指します。

助成期間や日数、助成額について

当制度は、1年の期間内に実施した休業が助成対象となり、休業を行う場合は、当助成金を受給しようとする事業主が助成期間を指定できます。
また、当助成金を受けることができる限度日数は、1年間で100日分、3年で150日分となっています。
ただし、緊急対応期間中に実施した休業は、この支給限度日数には含めません。
そして、気になる助成額ですが、これは以下の①、②に休業した延べ日数を乗じて計算します。
1人1日あたりの上限額は15,000円です。

①休業を実施した場合に支払った休業手当に相当する額
②助成率(中小企業:4/5、大企業:2/3)※
※解雇等を行わず雇用維持を行う場合は中小企業:10/10、大企業:3/4

ちなみに、2020年6月12日付の特例措置では、助成金の上限額の引き上げと助成率の拡充が適用されるようになりました。
これによって、すでに支給決定を行っている企業等に対して、追加の助成額が支払われます。

必要書類、助成金支給までの流れについて

当制度の申請に必要な書類は以下の通りです。

①雇用調整事業所の事業活動の状況に関する申出書
月ごとの売上等がわかる書類(売上簿、収入簿、レジの月次集計など)を添付します。

②支給要件確認申立書・役員等一覧
役員名簿があれば、役員等一覧の記入は不要です。

③休業・教育訓練実績一覧表(自動計算機能付き様式)
④助成額算定書(自動計算機能付き様式)
⑤(休業等)支給申請書(自動計算機能付き様式)
⑥事業所の状況に関する書類
事業所の従業員数、資本額がわかる書類(既存の労働者名簿および役員名簿)

⑦休業協定書
労働組合がある場合は組合員名簿、ない場合は労働者代表選任書を添付します。
また、休業協定書には、以下の事項について記載する必要があります。
 休業の実施予定時期・日数等
 休業の時間数
 休業の対象となる労働者の範囲および人数
 休業手当の額または教育訓練中の賃金の額の算定基準

⑧労働・休日の実績に関する書類
休業させた日や時間がわかる書類(出勤簿、タイムカードの写し、手書きのシフト表等)

⑨休業手当・賃金の実績に関する書類
休業手当や賃金の額がわかる書類(賃金台帳、給与明細の写し等)

⑩通帳またはキャッシュカードのコピー
振込間違いを防ぐために提出するものです。
また、提出するのは、口座番号やフリガナの確認ができる部分をコピーしたものです。

また、助成金が振り込まれるまでの流れは以下の通りです。

①休業計画および労使協定
休業の具体的な内容を計画し、その後労使で休業の協定を書面締結します。

②休業の実施および休業手当支給
協定に基づいて休業を実施し、従業員に休業中の休業手当を支払います。

③支給の申請
必要書類を揃え、支給申請をします。

④労働局の審査
支給申請のあった書類について、労働局による審査が行われます。

⑤支給決定、振込
審査に通過すれば、その後支給決定額が口座に振り込まれます。

ちなみに、通常は休業を実施する前に、“計画書”を提出する必要がありますが、5月19日以降から手続きをより簡素化するため、計画書の提出は不要となりました。

その他の注意点について

当助成金の不正受給の防止を図るために、労働局は事業所に対して立入検査を実施することがあります。
また、これによって不正受給の事実が判明した場合には、事業主名の公表等、厳しい対応が行われるため、気を付けなければいけません。
そして、休業における判定基礎期間について、同一の賃金等の支出について、他の助成金を受給している場合、当助成金の対象外となります。
したがって、当助成金とは別に他の助成金を受けている場合や、他の助成金を受けようと考えている場合は、最寄りの都道府県労働局もしくはハロワークに相談しましょう。

まとめ

ここまで、多くの企業によって利用されている“雇用調整助成金”について解説してきました。
当制度は、適宜内容が修正されていて、現在では緊急対応期間も9月30日まで延長されています。
したがって、これから利用する企業も、すでに申請している企業も、今後の新たな特例措置等に関する発表は欠かさずにチェックしておきましょう。
これからも、さらに嬉しい措置が追加される可能性は十分あります。