皆さんは、“タックスヘイブン”という言葉をご存知でしょうか?
これは、通常とは異なる特徴を持った国、地域を指す言葉であり、長年存在について議論され続けているものです。
今回は、そんなタックスヘイブンの概要や問題点などについて解説しますので、興味がある方はぜひご覧ください。

タックスヘイブンって何?

一定の課税が著しく軽減、あるいは完全に免除されている国や地域のことを“タックスヘイブン”と言います。
“租税回避地”とも呼ばれますね。
よく“タックスヘブン(租税天国)”と言い間違えられますが、ヘイブン(haven)は“避難所”という意味の言葉であり、“天国”を意味するヘブン(heaven)とは異なります。
ちなみに、タックスヘイブンはフランス語で“パラディ・フィスカル”といい、これは“税の楽園”、“税の天国”を意味します。
これが、タックスヘブンと言い間違えられる理由の1つだと言えます。

タックスヘイブンに該当するのはどこ?

タックスヘイブンに該当する場所として有名なのは、イギリス領のケイマン諸島、バージン諸島といったカリブ海の島国です。
アメリカのデラウェア州も、タックスヘイブンとして広く知られており、人口よりも多くの企業が存在しているのが特徴です。
ちなみに、EUが指定した以下の国や地域も、タックスヘイブンに該当します。

 国、地域名
アメリカパナマ、グレナダ、トリニダード・トバゴ、セントルシア、バルバドス
アフリカ・中東バーレーン、ナミビア、チュニジア、アラブ首長国連邦
アジア・太平洋グアム、パラオ、サモア、米領サモア、マカオ、韓国、モンゴル、マーシャル諸島

ちなみに、上記にEU加盟国は含まれておらず、実際には加盟国であるルクセンブルクやアイルランドなどもタックスヘイブンに当たると言われています。
また、EUは上記に加えて、“グレーリスト”としてトルコやスイス、香港など47の国と地域も挙げています。
これは、現時点では国際的に公平な税制を採用していないものの、EUとの話し合いにおいて税制を改善すると約束された国を指しています。

なぜタックスヘイブンが存在するのか?

主要産業がない国、地域にとっては、税制を優遇して企業や富裕層が自国に移転・移住してくれることで、雇用が生まれ経済も潤います。
つまり、タックスヘイブンは、弱小国が成長・維持するためには必要な戦略だということですね。
また、企業にとってもタックスヘイブンはメリットもあるものです。
なぜなら、法人税が大幅に優遇されることで、その分利益が増えるためです。
もちろん、増加した利益は新たな雇用や設備投資にも繋がりますし、タックスヘイブンがもたらす経済的な恩恵が存在することは否定できません。

タックスヘイブンの問題点について

タックスヘイブンの大きな問題点としては、やはり脱税やマネーロンダリングなどの不透明な資金の流れを助長しているとされるところでしょう。
脱税とは、皆さんもご存知の通り、納めなければいけない税金を意図的に逃れることをいいます。
また、マネーロダンリングとは、麻薬取引や脱税、粉飾決算などの犯罪によって得た資金をどこから出たのかわからなくするために、あらゆる口座に転々と送金を繰り返したり、株や債券を購入したり、大口の寄付を行ったりすることを言います。
“資金洗浄”とも呼ばれていますね。
ちなみに、タックスヘイブンには、武器取引やテロリズムを行うための資金を隠匿する場所として、暴力団やマフィアの資金が大量に流入しているとも言われています。
一部のタックスヘイブンは、本国からの取り締まりが難しいという点に目を付けた上記のような悪質な利用の対象となる場合があります。
特に、2007年に世界金融危機が起こったときには、金融取引の実態が把握しにくいことが災いし、損失額の不明瞭化、状況の悪化を助長したとして、猛烈な避難を浴びました。
そして、タックスヘイブンにおけるもう1つの問題点として挙げられるのは、やはり“税収の減少”です。
企業等がタックスヘイブンに利益を移したり、分配させたりすることで、本国は本来得られるはずだった税収を得ることができません。
そうなると、国は税収分をどこかで補わなければいけなくいなり、結果的に消費税や酒税など、市民の生活に大きな影響が出るような税金の額が上がりやすくなります。
もっと言えば、タックスヘイブンをこのままにしておくことで、一部の企業や富裕層ばかりが課税を免れ、どんどん裕福になっていきます。
それにより、貧富の差がさらに広がっていく可能性も否めません。

パナマ文書について

2016年、”パナマ文書“という文書が流出したことが大きな話題となりました。
これは、パナマの法律事務所である“モサック・フォンセカ”が40年もの間記録し続けた1,100万件を超える文書の電子データであり、世界各国の首脳、富裕層などが、バージン諸島やパナマ、バハマなどのタックスヘイブンを利用した金融取引で、意図的に資産隠しをしている可能性を示していたものです。
具体的には、首脳や富裕層などによって、タックスヘイブンに多くの“ペーパーカンパニー”が作られていたことが明らかになりました。
ペーパーカンパニーとは、登記上設立はされているものの、事業活動の実態がない会社を指し、特に法人格が悪用されているというニュアンスが込められていることが多いです。
まず、タックスヘイブンにペーパーカンパニーを設立し、本国から利益を移転することで利益を蓄積させ、先進国で科される税率を回避するというのが、一般的な悪用方法ですね。
ちなみに、富裕層の中には、世界的に有名な俳優やアスリートなどの名前も掲載されていたといいます。

日本における対策について

日本は、タックスヘイブンの存在によって税収が減ることへの対策として、“タックスヘイブン対策税制”を取り決めています。
これは、海外関係企業を利用した租税回避を防止するために、一定の条件を満たす海外関係企業の所得を日本にある親会社との所得と合算し、日本の税制で課税する制度をいいます。
つまり、海外関係企業に利益を流せば、租税を回避できるという状況に対する規制をかける制度ですね。
また、2017年からは、経済協力開発機構加盟の先進諸国と協定を結んだ、タックスヘイブンの国や地域での金融口座の残高などを、先進諸国の税務当局に自動的に送付する仕組みを導入しています。
その他で言うと、5,000万円以上の資産が世界にある国内居住者に、資産内容の報告を義務付ける“国外財産調書制度”も採用しています。

タックスヘイブンの今後について

タックスヘイブンは、弱小国にとっては必要な戦略ではありますが、一般的にはどこにおいても“悪の巣窟”として描かれています。
また、そこでは合法的な租税回避という視点が完全に欠落しています。
もちろん、脱税は利益に対して収めるべき税から逃げる行為であるため、批判されて当然です。
ただ、過去には各国の首相などが恩恵を受けていたこともあり、今後タックスヘイブンをもっとオープンな形で議論することは難しいと言えるでしょう。

まとめ

今回は、タックスヘイブンについて徹底的に解説してきました。
タックスヘイブンが良いものであるか悪いものであるかは、見る側の立場によって大きく変わってきます。
弱小国や富裕層などにとってはメリットのあるものかもしれませんが、やはり国際的な観点や一般市民からの視点で見たときには、デメリットばかりが浮き彫りになってしまいます。
また、タックスヘイブンに関する議論は、今後も行われていく可能性が高いでしょう。