安倍総理大臣をトップとする安倍政権は、非常に長期の政権となっています。
ただ、近年、そんな安倍政権が“財政出動”しないことについて、問題視される機会が増えてきました。
今回は、財政出動の概要と、安倍政権が財政出動しない理由について、詳しく解説していきたいと思います。

“財政出動”の概要

財政出動とは、経済を良化したり、景気を安定させたりする目的で行われる、“政治政策”のことを言います。
具体的には、税金や国債などの財政資金を公共事業などに投資することによって、公的需要・総需要を増やし、GDP(国内総生産)や民間消費などの増加促進を図るものです。
安倍政権の経済政策である“アベノミクス”には、3本の矢というものが存在し、その1つにはこの財政出動が含まれています。
また、アベノミクスは、財政出動、“金融緩和”、“成長戦略”という3本の矢で、長期のデフレを脱却することを目的としています。
ちなみに、アベノミクスにおける財政出動の対象規模は総額20兆円で、公共事業が主体となっています。

財政出動の始まりについて

財政出動は、1929年、イギリスの経済学者であるジョン・メイナード・ケインズによって提唱されたものだと言われています。
当時は、アメリカでバブルが崩壊し、経済の立て直しが急務の時代でした。
株式市場は軒並み暴落し、金融政策以外に経済を立て直す術がなかった時代に、デフレ不浄を克服するため、経済出動というものが行われるようになったのです。

日本の財政出動における“公共事業”とは

日本の財政出動における公共事業とは、公共の利益や福祉のための行う事業のことを言います。
我々の生活に身近なもので言うと、道路工事や公共工事などが挙げられます。
これは、税金や国債などの資金を用いて、道路の舗装や修復、拡張などといった、公共の場の工事を行うものです。
ただ、有識者からは、公共事業中心の財政出動を疑問視する声も挙がっています。
具体的には、このような公共事業への財政出動よりも、将来を見越した投資中心の財政出動をするべきだという意見が、多く寄せられています。
例えば、社会保障の充実にもっと注力すべきだという意見や、企業に対する助成金や補助をもっと充実させるべきだというような意見ですね。
もっと言えば、より直接的に雇用を促進するために、職業訓練所などの施設の拡充を図るべきだというような、より具体的な意見も出ています。

財政出動をすると金利が上昇するのはなぜ?

余談ではありますが、財政出動が行われると、政府の支出が増加し、政府の財政が悪くなるため、金利の上昇に繋がります。
ちなみに、減税が行われた場合も、政府の収入は減ってしまうため、金利は必然的に上昇することになります。
つまり、政府財政の“信用力”によって、金利が上下するということですね。
政府は、「信用力が低ければ、それなりの金利を貰わないと割に合わない」という風に考えるわけです。
例えば、2009年に起こったギリシャショックでは、ギリシャの財政破綻が問題となり、ギリシャの2年国債金利が20~30%にまで上昇しています。

近年の安倍政権における動きについて

2019年10月、日本では消費税が8%から10%に引き上げられました。
それに伴い、財政政策は緊縮方向に転じています。
近年の安倍政権における金融財政政策は、総じて緊縮的に作用しており、日本経済の先行きは、海外経済次第(正確にはトランプ大統領次第)という、非常に心許ない状況に至っていると判断できます。
また、今後に関しては、政府による国債発行がさらに減少することが予想されます。
そして、イールドカーブ(利回り曲線)を制御するという、現行の政策に日銀がこだわり続ける限り、日銀による国債の購入も減るため、金融緩和効果も減衰するでしょう。
多くのセクターにとって望ましい国債発行拡大を伴う財政出動を、安倍政権がなぜ行わないのかについては、ハッキリとはわかりません。
安倍政権は、2013年に日銀執行部の人事刷新で、大きな政治的効果を得ました。
それをさらに有効活用して、2%インフレを含めた経済正常化を実現するには、財政政策の転換が必要だとされていますが、現在の安倍政権が発するメッセージを踏まえると、財政政策の転換は期待できません。

アベノミクスは当初の予定通り進展していない

アベノミクスでは、金融政策でデフレからの脱却を試み、財政出動で当面の景気を維持し、その間に痛みを伴う構造改革を実施するという流れが想定されていました。
ただ、実際はそのような流れでは進展しなかったのです。
構造改革に対する世論の反発は強く、安倍総理はやがてこの言葉を使用しなくなり、構造改革の司令塔であった“規制改革会議”も有名無実化されています。
その後、第3の矢である成長戦略は、何度か追加されましたが、その多くが予算措置を伴うものであり、第3の矢は、実質的に2本目の矢である財政出動に収斂したと見ていいでしょう。
つまり、アベノミクスは、金融緩和と財政出動を組み合わせた、“2本の矢”で行う経済政策にシフトされたということです。
これは、第3の矢が放たれることはなく、言ってしまえば財政出動頼りの経済政策が構築されてしまったという風に言い換えることもできます。

安倍政権はなぜ財政出動しないのか?

先ほども解説したように、アベノミクスにおいて核となる3本の矢には、財政出動が含まれています。
そして、今や安倍政権は、財政出動頼りの経済政策を構築している状態にあると言えます。
では、なぜ安倍政権は、財政出動をしないのでしょうか?
大きな理由には、財政出動をすると、“政権が終了してしまう”ということが挙げられます。
1990年代以降の日本は、財政出動と緊縮財政(政府支出の削減や増税といった手段で、政府の財政を均衡させる試み)の繰り返しで、どちらも極端なことができず、全体として横ばいの状態が続いています。
具体的には、財政出動⇒赤字の拡大⇒支持率の低下⇒政権交代⇒緊縮財政⇒景気の悪化⇒支持率の低下⇒政権交代という流れを、何周もしている状態です。
これは、国民の要求が、“借金の削減(消費の抑制)”と、“景気の回復(消費の拡大)”を両立することであるため、どちらか一方を行えば、政権が終了してしまうということを表しています。
つまり、安倍政権は、財政出動をしたくてもできない状態が続いているというわけですね。
財政出動が行われるときは、現行の第2次安倍政権が終わるときなのです。
安倍政権の場合、増税や減税、財政出動や緊縮財政をいわば“ゴチャ混ぜ”状態で行っており、それらをすべて、アベノミクスの3本の矢の1つである金融緩和によって調整しているというイメージですが、それでは、結局は経済に大きなインパクトは与えられません。
また、長期政権を作るのであれば、このように増税してみたり、公共事業を増やしてみたり、減税してみたり、支出を削減してみたりと、矛盾したことをあれこれ行うしかないのです。
実際、安倍政権は財政出動を行えずにいますが、冒頭でも触れたように、長期政権の確立には成功しています。

まとめ

ここまで、安倍政権が財政出動しない理由を中心に解説してきましたが、いかがだったでしょうか?
安倍政権の財政出動に関しては、“意図的にしない”ではなく、“したくてもできない”という状態にあります。
ただ、欧米中は積極的に財政出動を行っているため、このままでは日本のみがいわば“1人負け”のような状況になってしまうことは明白であり、安倍政権には早急な財政政策の転換・修正が求められます。