登記費用

登記費用のすべてが譲渡費用扱いされないのはなぜなのか?

不動産売買・本人確認

土地や建物を売却した金額からさまざまな費用が引かれることで、譲渡所得が算出されます。
このとき、土地や建物を売却した金額から引かれる譲渡費用には、登記費用の一部も含まれます。
ただ登記費用のすべてが、譲渡費用扱いになるわけではないので注意しましょう。
どういうことなのか詳しく解説します。

登記にはどんなものがあるのか?

登記費用と譲渡費用について解説する前に、まずは登記にはどんな種類があるのかについて解説します。

表示登記
建物の登記記録における表題部を、新たに作成するための登記です。
基本的に、建物が新しく完成したときに行われます。

所有権保存登記
甲区欄の初めに、所有者としての名前を入れるための登記です。
所有権を主張するために行われるもので、これも新築の建物に対して行われます。

所有権移転登記
土地や建物を売却する際、または相続する際などは所有権が移転することになり、その際に行われるのがこの所有権移転登記です。

・その他の登記
その他の登記には、抵当権を明らかにするために行われる“抵当権登記”、建物を解体する際に行われる“建物滅失登記”、融資をすべて返済したときに行われる“抵当権抹消登記”などが挙げられます。

譲渡費用にはどんな種類がある?

登記にはどんな種類があるかを解説したところで、次は譲渡費用にどんな種類のものがあるのかについて解説します。

・土地、建物を売却する際に負担した仲介手数料
・売主が負担した印紙税
・賃家を売却するため、貸借人に立ち退きを要求したときに支払った費用
・土地売却に伴う建物の解体にかかった費用と建物の損失額
・契約済みの不動産の契約解除にかかる違約金
・借地権を売却する際に支払った費用

参考:国税庁「譲渡費用となるもの」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3255.htm

登記費用の中で譲渡費用扱いされるものは?

登記費用の中で譲渡費用扱いされるものについては、上記の“譲渡費用となるもの”を参考にすればわかります。
登記費用のうち譲渡費用扱いされるのは、建物を解体する際に行われる“建物滅失登記”にかかる費用です。
譲渡費用扱いされるものには、先ほど解説したように“土地売却に伴う建物の解体にかかった費用と建物の損失額”というものがあります。
このうち、“土地売却に伴う建物の解体にかかった費用”に建物滅失登記費用が当てはまるため、この登記費用は譲渡費用扱いになるということです。

建物滅失登記の費用相場は?

建物滅失登記の費用相場は、土地家屋調査士に依頼した場合、平均的な住宅で30,000~50,000円程度かかります。
ただし、建物が大きい場合や、所有権など各種権利の証明に多くの書類が必要な場合は、さらに高くなることがあります。

また、自身で登記手続きをするのであれば、最低限必要なのは登記簿謄本の取得手数料(1通につき1,000円)です。

ちなみに、建物滅失登記の手続きについては、不動産登記法により、建物の解体後1ヶ月以内と決められています。
土地家屋調査士にすべての手続きを依頼しても、2週間程度の期間はかかるため、自身で申請する場合は、特に早く行動することをおすすめします。

建物滅失登記の手続き方法は?

建物滅失登記を売主自身で行う場合、以下のようなさまざまな書類を用意しなければいけません。

・建物滅失登記申請書
・滅失した建物の登記事項証明書
・建物滅失証明書
・解体業者の代表者事項証明書
・解体業者の印鑑証明書
・滅失した建物周辺の地図

これらの書類のうち、建物滅失登記申請書と登記事項証明書は、建物が存在していた場所を管轄する法務局の窓口、インターネットで請求することができます。

また、建物滅失証明書、解体業者の代表者事項証明書、印鑑証明書は、解体業者が準備します。
建物周辺の地図については、売主の手書きや市販の地図、ネットの地図を印刷したものなど、形態はどのようなものでも構いません。

ちなみに、結婚や引っ越しなどで所有者の住所氏名が変更になった場合は、婚姻届や転入届などが別途必要になります。

そして、書類を用意した後は、建物が存在していた場を管轄する法務局の不動産登記申請表示係に郵送、または持参します。
書類提出後、およそ1週間で登記完了証が発行されます。

登記費用のすべてが譲渡費用扱いにならないのはなぜ?

登記費用のうち、建物滅失登記は譲渡費用扱いになるということを解説しました。
では、冒頭で解説したような他の登記費用は、なぜ譲渡費用扱いにならないのでしょうか?
その理由は、譲渡費用扱いになる登記費用には、“売却に直接関係している必要がある”という条件があるためです。
建物滅失登記は、土地売却をするために行う解体に伴う登記のため、売却に直接関係している登記という扱いになり、費用を譲渡費用扱いにできます。
逆に言えば、表示登記や所有権保存登記、所有権移転登記などは、売却に直接関係している登記ではないため、費用が譲渡費用扱いにはならないということです。
土地を売却する方の中には、融資をすべて返済したときに行われる“抵当権抹消登記”を、“売却に直接関係している登記”と認識している方もいますが、この費用に関しては譲渡費用扱いにはならないため、注意が必要です。

その他の譲渡費用扱いされる費用は?

不動産売買で発生するその他の費用の中で、譲渡費用扱いされるのは以下のようなものです。

・仲介手数料
不動産会社に支払う仲介手数料は、取得時に支払ったものは取得費に、譲渡時に支払ったものは譲渡費用に該当します。
ただし、宅地建物取引業の免許を持っていない者に支払った手数料は、事案によっては譲渡費用扱いされないこともあります。

・収入印紙
売買契約書に貼付する収入印紙も、譲渡時に貼付した分は譲渡所得に該当します。

・測量費用
不動産売買をするにあたって、その土地の面積を明確にするための測量費用は、譲渡費用に該当します。
ただし、その測量が譲渡のための測量ではない場合、例えば隣地との境界が曖昧なことから、確認のために行うのが目的の測量などは、譲渡費用に該当しません。

・建物の解体費用
不動産売買に伴い、その物件の建物部分を売主負担で解体する場合、こちらの費用も譲渡費用に当てはまります。
しかし、建物の解体が譲渡のときより相当前に行われた場合は、不動産売買に伴う解体と認められず、こちらの費用は譲渡費用にはなりません。

・違約金
不動産売買において、売買契約成立後にもっと良い条件を提示してきた買主が現れた場合、前の買主に対して違約金を支払うことがあります。
このとき、手付金の倍額を支払うケースが多いですが、実はこちらの金銭は譲渡費用に含むことができます。

・広告料
不動産の買主を探すために広告料を支払った場合、その費用は譲渡費用として認められます。
ただし、広告を出してから数年後など、その広告の存在に関係なく売却した場合などは、譲渡費用に含まれない可能性もあります。

ちなみに、旅費や交通費、弁護士費用などについては、ケースによって扱いが異なります。

不動産売却に伴い、旅費や交通費がかかった場合は、それが不動産売却に直接必要なものかを判断し、譲渡費用に該当するかどうかを決定します。

また、弁護士費用については、契約書の作成費用は譲渡費用に当てはまりますが、譲渡遺産を相続で取得したとき、遺産分割の際に争いになり、弁護士費用がかかった場合などは、譲渡費用に該当しません。

ただし、不動産売却に係る契約効力に関する紛争が起こった場合において、その契約が成立し、弁護士に報酬を支払ったとき、その弁護士費用は譲渡費用に含むことができます。

登記費用を抑えるには?

前述の通り、登記費用の中で譲渡費用扱いされるのは、建物滅失登記のみです。
そのため、譲渡費用に該当しないその他の登記費用については、できる限り金額を抑えなければいけません。

しかし、登記費用は税金であるため、金額がある程度決まっていて、どうしても費用を抑えるというのが難しい項目です。

どうしても税金を安く抑えたいという方は、税の軽減措置が取られている期間を狙いましょう。
また、登記全体にかかる費用を削減したいのであれば、手数料の金額がリーズナブルな司法書士事務所に対し、登記を依頼するのも一つの手です。

さらに、不動産売買の費用を抑えたい方は、購入にかかる登記以外の費用を抑えることを考えましょう。
例えば、リフォーム費用を抑えることや、物件を高く売ることなどの工夫であれば、通年行うことができます。

もちろん、不動産売却の場合、新たな物件の購入費用や、売却にかかる全体の予算を決めて動くことで、無駄な出費を抑えることにつながります。

まとめ

登記費用のすべてが譲渡費用扱いされない理由について解説しましたが、いかがだったでしょうか?
登記にはさまざまな種類がありますが、費用を譲渡費用扱いされるものは、売却に直接関係している登記のみとなります。
したがって、登記費用のすべてが譲渡費用扱いされると考えていると、計算が大きく狂うことになるので注意しましょう。
また、抵当権抹消登記が譲渡費用扱いされないことも覚えておいてください。

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